第四十一首
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひ初めしか
壬生忠見
(生没年不詳) 忠岑の子。数々の歌合の作者として活躍したが、官位は低かった。三十六歌仙の一人。
部位 恋 出典 拾遺集
主題
ひそかな恋が人の噂になってしまったことへの当惑
歌意
私が恋をしてしまったという浮き名が、こんなにも早く世間に広まってしまった。誰にも知られないよう自分の心の中だけで、ひそかにあの人を思いはじめたのに。
この歌は、第四十番の兼盛の歌と甲乙つけがたく『天徳歌合』で敗れてしまいましたが、後世には忠見の歌の方を評価する声も多いようです。
まだき 早くも。まだその時に達しないのに。
ところで、定家は、兼盛の歌とともに『二四代集』には選んでいるが、いずれも『近代秀歌』以下の秀歌撰にはなく、『百人一首』に並んでとっているのは、歌話的興味にひかれたものと思うのである。
忠見は、歌の数奇人として、その歌話が『袋草紙』などに伝えられている。三十六歌仙の一。
『拾遺』十四首、その他勅撰集に二十二首入集。