第四十九首
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みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え
昼は消えつつ 物をこそ思へ
大中臣能宣
(921-991) 伊勢神宮祭主。伊勢大輔の祖父。有名な歌人で、円融・花山両天皇から歌集の献上を度々命じられた。三十六歌仙の一人。
部位 恋 出典 詞花集
主題
夜も昼も思い悩む恋心の苦しみ
歌意
宮中の門を守る衛士がたくかがり火のように、夜は燃え、昼になると消えるように、私の恋心も夜は熱い思いで身を焦がし、昼は魂が消えそうになるほど思い悩むのだ。
衛士のたく暗闇の中にもえる火と心にもえる恋心との比喩は、誰しも連想をよぶことであったらしい。実方は、ある女から、「音にきくこやすべらきのみかきもり」といいかけられてすぐさま「いとども恋に夜は燃えねど」と返している。
定家も、「暮るる夜は衛士のたく火をそれと見よ室の八島も都ならねば」
などの歌をよみ、衛士のたく火の美しさを愛していたのであった。
しかし、この大中臣能宣の作というのには疑問があり、能宣作とする誤伝が『詞花集』にとりあげられてしまったものであろうということです。
家集に『能宣集』。『拾位集』以下に百二十四首入集。