第六首
かささぎの 渡せる橋に おく霜の
白きを見れば 夜ぞふけにける
中納言家持
大伴家持 (718?-785)、父は旅人。三十六歌仙の一人。
部立 四季(冬) 出典 新古今集
主題
宮中の冬の霜の夜更けの幻想的な美しさ
歌意
かささぎが翼を並べて架けたといわれる天の川の橋。それにたとえられる宮中の橋に真っ白な霜が降りて、その白の深さを見るにつけても、夜もいっそう更けてきたことよ。
七月七日のたなばたの夜、かささぎという鳥が、天の川に翼をひろげて橋を作り、織女星を渡したという伝説上の橋ですが、宮中を天上に見立てて宮殿の階段をもいうようになったとのこと。
父の死後、衰えつつあった大伴氏の首長として種々困難に遭遇し、政治的には不遇に終った。『万葉集』中もっとも歌数多く、短歌三百九十二、長歌四十五、蓮歌一、詩一首を残し、『万葉集』の編纂にも関係した。