第三十首
ありあけの つれなく見えし 別れより
暁ばかり 憂きものはなし
壬生忠岑
(生没年不詳) 官位は低かったが、『古今集』撰者に任ぜられ、歌人として活躍した。三十六歌仙の一人。
部位 恋 出典 古今集
主題
よそよそしい態度を見せた女性への恨み言
歌意
明け方の月が冷ややかに、そっけなく空に残っていたように、あなたが冷たく見えたあの別れ以来、夜明けほどつらく思えるものはありません。
つれなく見えし よそよそしく。そ知らぬ顔に。月のことと見る説と、女のことと見る説が古くからある。 別れ きぬぎぬの別れ。男が女のもとに通ってゆき、共寝した翌朝の別れ。
この歌の解釈はいろろあるが、あかぬ別れに泣き別れた明け方の空に、そ知らぬ顔して、無情にもかかっている月が、と解して、定家は、まことに優艶この上もない風情を感じとっていたのでは・・・・。
家集に『忠岑集』があり、『古今集』に三十五首。『後撰集』以下に四十七首入集。