ゲルマン及びアングロフリークを自認する私ですが,時々こうしてラテンものに浮気したりします・・・。
今年の夏の終わりから秋口にかけて,俄ドビュッシーフリークとなりましたし,ラヴェルは元々好んで聴きました。
フランスロマン派の走り(というか近代管弦楽法の生みの親)とも言うべきベルリオーズの幻想交響曲なんて,アブノーマル極まりないプログラミングが,もろ私のストライクゾーンだし,バイロン「チャイルド・ハロルド」に霊感を受けたという「イタリアのハロルド」なんてのも分熱い音像が堪りません・・・。
でもって,今宵はフォーレ(1845-1924)です。
この季節,宗教的カタルシスと敬虔なカトリシズムが顕著な「レクイエム」を聴くことが多いのですが(ラシーヌの雅歌とかパヴァーヌとかも・・・),今日は敢えて小品を聴きたいと思います。
組曲「ドリー」op.56。
1898年,名ピアニストアルフレッド・コルトー(と,エドゥアルト・リスラー)によって初演されたピアノ連弾用組曲です。
妻のマリーを通して知り合ったエマ・バルダック(後のドビュッシー夫人)の娘エレーヌの誕生祝いに作曲された何とも愛らしい佳品です。
ドリー(Dolly)とはエレーヌの愛称だそうですが,その名の示すとおりお人形のように可愛らしい・・・とでも訳せばよいのでしょうか・・・。
組曲は,以下の6つの短い楽章から成ります。
1.子守歌
揺りかごのように上降するアルペジオに乗り,穏やかで優しい旋律がたっぷりと歌われます。既にして,エスプリと抒情に満ちた世界へトリップ・・・。
2.ミ・ア・ウ
猫の鳴き声のような題名で,実際子猫が飛び跳ねているようなワルツですが,エレーヌが兄のラウルを呼んだ幼児語を題名にしたそうですが,出版社の間違いで,猫の鳴き声のようになってしまったらしいです・・・。
3.ドリーの庭
自作のヴァイオリンソナタの終曲の旋律を転用した部分がある穏やかな曲想。巧みな転調がが顕著。
4.子猫のワルツ
原題はKitty-valseですが,これも出版社の間違いだそうで,フォーレが当初示したのはKetty Valseとのことです。ケティとは,上記ラウルの飼い犬の名だそうです。
5.優しさ
変ニ長調という珍しい調性で書かれた曲。題名の割に落ち着かない印象を与えるのは,その調性と転調のせいでしょうか・・・。
6.スペインの踊り
華やかな終曲。快速なピアノ版とゴージャスなオケ版は好対照・・・。
原曲であるピアノ連弾の演奏は,ロベール&ギャビーのカサドゥシュ夫妻による59年の録音を貼っておきます。
この時代の録音は,何とも古雅にしてエレガントです・・・。
ボストンsoの指揮者(後任が名指揮者ピエール・モントゥ)を務めたアンリ・ラボー(1873-1949)によるオケ版は,なかなか良い動画が無いので,取り敢えず下記のものを貼ります(CD棚には小澤~ボストンsoのDG版のみがありました)。
木管の音色とピッチ(ホルンもやっちゃっている),そしてテンポ感に注文がつきますが,全容を知る上では問題ないでしょう。
殆ど別の曲のように聞こえるのは私だけでしょうか・・・。
実は,若い頃から何度か演奏する機会を持ちながら,結局演奏しないまま,今に至っています。
あまり知られた曲ではないということで,演奏会の曲目選定で,ついつい刎ねられてしまうのと,フランス音楽特有の色彩感やアトモスフィアを表現する難しさが原因ですが,私なんぞには最も似合わない曲想であろうことは,述べるまでもありません・・・て,述べましたけど・・・(笑)。
・・・ということで,ぜひ冒頭の「子守歌」から,典雅な世界を覗いてみることをお薦めします・・・。
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