前々から言われていたことではあるが,トヨタが富士スピードウェイの経営から手を引いた。
F1参戦を目指していた前世紀末に同サーキットを買収し,巨額を投じて改修して,2007・ 2008両年にF1日本GPを誘致。
ただし,FIAの寝業師バーニー・エクレストンの策略によって,今年からホンダ系の鈴鹿サーキットと隔年開催となっていた。
理由は当然業績悪化である。
来年3月末の決算は,空前の赤字となった今年同様極めて厳しい者となる模様で,そうした業績の悪化のため,見返りの少ないサーキット運営から手を引くということのようだ。・・・と書くと,如何にもトヨタ車が売れなくなったように思われるが,自動車業界全体が極度の業績不振にあえいでいる。
GMがあの通りだし(昨日,北米でのトヨタとの合弁中止の発表があったばかりだ),ホンダだってインサイトが売れたとしても業績悪化を盛り返すには至らず,突如として昨年末にF1からの撤退を宣言し,設備をブラウンGPに譲ったことは記憶に新しい・・・。
そもそもモータースポーツなどとというものは,贅沢の所産である。
F1などその最たる例だろう。
本来,欧州貴族の道楽で始まった訳だから,無駄とエゴの塊なのである。
だから金があって速い者ほど良いマシンに乗るという不条理が成り立つわけで,それでも尚かつ幾多のドラマを生んできたわけである。
そうした欧州の文化に対して,果敢というか無謀にも殴り込んだのがホンダであり,やがて欧州の伝統をも凌駕していくことになる。
トヨタが欲したのは,そうしたホンダが作り上げてきたレーシングスピリットの具現化によるイメージ作りだったのだろう。
若者のホンダ,F1のホンダ,スポーツカーのホンダ,といったイメージを,おっさんのトヨタ,WRCとCARTで勝ててもF1で勝てないトヨタ,保守的で80点主義のトヨタというイメージを,F1参戦によって払拭したかったというのは絶対にあったと思う。
ホンダがF1から撤退し,かつてのイメージからがらりと変換して,コンパクトカーのホンダ,電気自動車のホンダと,イメージを変えつつある今,レーシングスピリットを求められる和製コンストラクターはトヨタしか無い。
私がたびたび話題にした例の「バジェットキャップ」が妥協点を見いだし,来季のF1参戦が現時点では無くなっていないものの,F1界は常に一寸先は闇であり,口だけの約束など何の効力も持たないのが常である。
昨年末のホンダのように,突如として撤退を表明したとしても何ら不思議ではない。
願わくは,レーシングスピリットを失うことなく,欧州のコンストラクターを破るまで参戦を続けて欲しいものである。
今やトヨタは,四輪モータースポーツファンの最後の拠りどころなのであるから・・・。
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