忘憂之物

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“イッツ・ショータイム”…「ひとつのワードが抜きとられたことが騒動のきっかけ」

2013年05月28日 | 過去記事



“イッツ・ショータイム”…「ひとつのワードが抜きとられたことが騒動のきっかけ」

<「今回は私の一つのワード(言葉)が抜きとられて報じられたのが騒動のきっかけです」。日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長はゆっくりと一言一言をかみしめるように話し、慰安婦制度をめぐる発言の正当性をアピールした。27日午後、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見が始まり、海外メディアとの“直接対決”の火ぶたが切って落とされた。

 「イッツ・ショータイム」。記者会見の冒頭、外国人司会者からこう切り出された橋下氏は緊張がほぐれたのか、笑みを浮かべた。

 橋下氏は立ち上がり、マイクを前に自己紹介。「日本語がわからない人は(事前に配った)英文をしっかり読んでください」と注意を促した。

 橋下氏は質疑応答に先立ち、慰安婦制度をめぐる発言の真意などを約30分かけて説明。

 会場からは拍手が送られたが、同席した維新の桜内文城衆院議員は司会者が橋下氏の発言を紹介する際に「セックススレイブ(性奴隷)」という単語を使ったことに言及し、「アンフェア(不公平)ではないか」と指摘した。

 この日は、米国や英国、韓国などの特派員らをはじめ、300人を超える記者が来場。

 会見会場には約200人しか入れず、多くの記者は別室のモニターで会見の様子を見た>







今をときめく大阪市長よりずいぶん前、米軍司令官相手ではなく、米国大統領本人に「米軍の性犯罪はなんとかならんのか」と言った元総理がいた。森喜朗だ。2000年の第26回主要国首脳会議、いわゆる「沖縄サミット」でクリントン本人に言った。

当然、モラルが高い米兵はそんなことしない、と言って怒るのかと思いきや、その際、クリントンは「本当に申し訳ない」と謝罪してびっくりさせた。言った本人もびっくりしたかもしれないが、続けて「恥ずべきこと」「苦痛だ」も付け加えたから、琉球新報や沖縄タイムスもびっくりして悪口を書き損ねた。毎日新聞記者の高畑昭男だけが頑張って、あの「Who are you ?」をつくった。あの辺の新聞屋は自国のトップやリーダーを馬鹿にするのが生き甲斐だから仕方がない。

それにしてもあの米国大統領が、他国、それも日本の沖縄で「悪いこと」を認めて謝った。アメリカ人はジョン・ダワーの頃よりマトモになったのか、と錯覚しそうになったモノだ。

その2年前の醜聞だったモニカ・ルインスキーとの「不適切な関係」。クリントンはこの所為で弾劾裁判にかけられた。これはアンドリュー・ジョンソン大統領以来の「快挙」だった。それがそれほど効いたのか、と勘違いしそうになるが、あのときクリントンは「申し訳ない」ではなく、アフガニスタンやスーダンに爆撃した。それから、いまは安全保障の問題がある。だから自分じゃなく、騒いだマスコミや煽られた国民に対して「人心を立て直さねばならない」と言って開き直った。アメリカ民主党も所詮は民主党だった。

「ごめんなさい」はこのずっと後だったが、たぶん、沖縄では謝罪文を書いたフォーリー大使が気を利かせた。サミット後の会談では、日本の森総理から沖縄米軍の性犯罪を咎められる、ここで「不適切」どころか「性犯罪」をして、うっかり本音の「だからどした」をやれば大変なことになる。ましてや「じゃあ、性風俗を活用します。だから思いやり予算とはべつに、思い“ヤル”予算とかください」というわけもなかったから、管直人の恥晒しみたいに「会談の場で紙をそのまま読む」ことにした。これはクリントンの「建前ですよ」というメッセージだった。

あれから13年。べつに米兵が沖縄県民の女性をレイプするのを止めたとか、そういう事実はない。要するに建前で謝罪して本音で放っておく。理想を語って現実はあきらめる。普通はこういう流れになる。つまり、決して本音は公に発言するものではない。「本音で語りましょう」という相手ほど建前で武装しているモノだ。

また、本音を晒す場合、それは大袈裟ではなく「真剣勝負」にもなる。会社の上司と「本音トーク」をする。でもそれはお互いに「いつもよりも過激な愚痴を言います」という建前だ。「言葉を選んであなたのこともちょっぴり批判します」という意味になる。

本当に心の底の本音から「おまえみたいな無能は見たことない。死ねばいいのに」と言い合えば建設的な会話になるはずもないからだ。自宅や居酒屋で「本人がいないとき」に語っている言葉こそが「本音」といえるが、間違ってもそれをそのまま公開する、あるいは相手に伝えるわけにはいかないだろう。これもある意味では「本音」なのだ。

また、なんでもいいが、例えば交通事故。これも「仕方ないよ」が本音としてある。運が悪かった、も本音だろうが、それで「自動車を無くしましょう」とはならない。「悲惨な交通事故をなくしましょう」「交通事故ゼロを目指して」という建前でお茶を濁すのが普通になる。本音では「そういうこともあるよな」が否定できないからだ。

鳩山由紀夫が「地球のためには人間がいなくなるのがいい」と言って馬鹿にされた。どこでも本音を出してしまう阿呆な典型だろう。しかし、だ。これに理論的に、あるいは倫理的に反論できるだろうか。地球環境を言うだけなら、人間なんぞいないほうが良いに決まっている。いや、最悪のところいてもよろしいが、文明を築くな、が正解だ。

他の野生動物のようにジャングルやサバンナで狩りをし、海に潜って魚貝を獲り、20代を過ぎるころには半分くらい死んで、40代は数えるほどもいない、というのが理想だ。つまり、鳩山由紀夫は阿呆だが、間違ったことを言ったわけではない。ただ、その本音を人間相手に言うから馬鹿だとされた。山の中でリスとか毛虫に言うべきだった。大いに賛同を得られたことだと思う。

橋下市長が間違ったのは順番だ。先ず、米軍司令官に「本音」をやった。当然、相手は建前で来る。司令官も「アメリカではそんなことはしない」としか言いようもない。アメリカの売春など、大阪市長が威張って摘まみ上げなくても、世界からすれば周知の事実だ。アラン・J・パクラが監督で映画「コールガール」もあった。それでも映画館で主演のジェーン・フォンダを観ながら「違法じゃないか!」と騒ぐ観客はいない。どこでもみんな「建前」で生活しているのだ。

私の知り合いにでもたくさんいる。カナダから売春宿を下ってサンフランシスコまで行った兄ちゃんも知ってる。年配者からは「キーセン旅行」の話は阿呆ほど聞いた。フィリピンで10名の売春婦を買い込み、ハーレムと化したジャグジーで記念写真を撮ったツワモノもいる。その中に二人、男が混じってた、というのがオチだ。

台湾にもあった。台北の夜、私が飲んでいたクラブは「セット料金」だった。隣の個室に移動できるシステムだ。すっきりした顔のアンちゃんが、セクシードレスをひらひらさせた、うら若き乙女と一緒に何度か出てきた。こんなの日本でもコリアンタウンに行けばなんぼでもある。

また、3件目で連れ出した台湾の女の子と一緒に何件か飲み、タクシー代を渡して帰らせようとすると、私の部屋まで来るというから断った。アレもまさか、無料で添い寝したいだけ、でもあるまいが、そのときにおける私の「建前」はチップに多少の色をつけ、日本人の男性は紳士だから、と送り出すことだった。台湾女子は目をウルウルさせたモノだ、建前で。まあ、私はバンチョッパリだから、建前というか「日本人男性」の部分は嘘だが、本音を言えば「同室者がいた」からだった。心の底から連れて帰りたかった。どうだ、みっともないだろう。

つまり、大阪市長は本音を言って騒ぎになり、慌てて「建前」を構築した。だからしょうもないことも付け加えねばならなくなった。それなら主張は阿呆臭くなる。要すれば「日本だけ悪いんじゃない。世界の国も同じじゃないか」だ。あんたもやったでしょ?と言っている。小学生のチンコロじゃあるまいし、これで勝てるわけない。何の用意もなく、何の覚悟もなく、中途半端に喧嘩をするな、という理由だ。

それに本音から建前への逆行には矛盾が発生する。大阪市長も「女性蔑視のつもりはなかった」と何度も発言しているが、この記者会見による「建前」にて本当に女性蔑視をしていることになった。大阪市長は<すなわち女性蔑視である等の報道が続いたことは、痛恨の極みであります>と言ったが、本当は<女性蔑視である等の報道が続いたこと>自体は女性蔑視でもなんでもなかった。凄まじいまでの「女性蔑視発言」は例えば、このすぐあとの<以上の私の理念に照らせば、第二次世界大戦前から大戦中にかけて、日本兵が「慰安婦」を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙(じゅうりん)する、決して許されないものであることはいうまでもありません>になる。

これは酷い。左巻きのアホンダラは祝杯の用意をした方がいい。戦争で兵隊が慰安所を利用すること自体が<女性の尊厳と人権を蹂躙><決して許されないもの>なら、もうなにもできない。兵隊に慰安は必要ないから、もう、黙って死ねと言われている。戦争で犠牲になった、というだけなら兵士はほとんどが男性だ。戦争は男性の尊厳と人権だけではなく、直接的に生命と自由を奪う可能性がある。それならすべての紛争地域で「兵隊さんの尊厳と人権を守れ」とやらねばならなくなる。そんなことは社民党でも言わない。



さらに市長は恐るべき発言をしている。

<性の対象として女性を利用する行為そのものが女性の尊厳を蹂躙する行為です>


これほどの建前論があるか。大阪市長は人類に、それも男性に限り「聖人君子」になれというか。そしてなにより戦時慰安所にて従事していたすべての女性だけではなく、現在の風俗営業店で働く女性を総じて貶める発言だと言わざるを得ない。

性風俗で働く女性はすべて「尊厳が蹂躙されている」のか。戦後もそうだ。女手一つ、残された細腕で子供らを養うため、性風俗で働いて子育てをした母親らは「尊厳が蹂躙された」のか。それをその子らに言ってみよ。そうして育ててもらった子らに対し、キミたちの母親は<性の対象として女性を利用する行為>で働いていた、だけどそれは<女性の尊厳を蹂躙する行為>だった、として申し訳なかった、と謝罪してみよ。たぶん、ブッ飛ばされるだろう。

「尊厳」とは辞書を引くと「尊くおごそかで侵しがたい」とある。個別具体的な諸事情があり、それから「生きていくため」に性風俗の業界で働くことは<尊厳を蹂躙>されない。こう言うと、じゃあ、お前の嫁さんや娘を性風俗で働かせてみよ、という阿呆がいる。元売春婦のハルモニらも大阪市長に「娘を慰安婦にできるのか」みたいなイチャモンをやっていたが、これもまったくバカバカしい。

母親が性風俗で働いて自分らを育ててくれた、とする。こんなの日本中に「いまでも」ごろごろ落ちている。そして自分らも成長して仕事に就けるようになった。収入を得ることができる。それでもまだ、母親を性風俗に放り込んでおく子供がいるか。きっと救いあげるだろう。お母ちゃん、もう止めていいよ、大丈夫だよ、と子らは言うだろう。なぜか。


それはその母親にこそ「尊厳(尊くおごそかで侵しがたい)」を見るからだ。


「尊厳」とはそんなことで蹂躙されない。もし、万が一、自分の娘や妻が一時期、よんどころない事情から働いていたとする。それを「どうにかしてやれる」ようになった自分が知ったとき、その娘や妻に「キミは尊厳を蹂躙されたね」と言うか。もう「尊厳がないな」と突き放すのか。それこそが女性蔑視、人権侵害、職業差別、尊厳蹂躙だろうが。


言わなくてもいい当たり前の本音を言うと、現在、性風俗で働く女性の過半は好きでやってるわけじゃない。だからこそ高収入、学歴不問、日払い可能、安心できる送迎あり、急な欠勤OK、安全衛生における管理充実、寮は高級マンションで家賃無料、臨時ボーナスあり、入店祝い金あり、無利息の貸付OK(御相談下さい)に秘密厳守、お菓子食べ放題(笑)と好条件が溢れるのだ。

また、働いている女性が「遣り甲斐を感じる」とか「面白くなった」というのは別のところの話だ。それはもう「プロ」としての自我すら目覚めているレベル。それを男は「女神」と呼んで崇め奉る。巷の安モンが言う「尊厳」の先に彼女らはいる。人権だ差別だ言う下界の馬鹿どもを今日も笑って許して下さる。祈りなさい。


マッカーサーが厚木基地に降り立ってから10日間、神奈川県だけで1300件以上の強姦事件が発生した。これはマッカーサーが一人でやったのではなく、連れてきた米兵が好き放題した。仕方なく日本政府は「戦後に」慰安婦を公募。スローガンは「日本女性の防波堤たれ!」だった。いわゆる「RAA」だが「尊厳」とはこういうことを言う。また、これが出来ると一日の平均強姦数は330件から40件に減った。「性的コントロール」が不能な米軍相手はそれほど大変だった。

いま、日本軍慰安婦を「Sex Slave」とするアメリカは当時、この「RAA」(Recreation and Amusement Association・レクリエーション及び娯楽協会)を散々利用した。当時の日本人は、このバカげたアメリカの建前に本音で我慢して付き合った。こんなところにも「尊厳」はみつけることができる。大阪市長はちゃんと探せ。

また、尊厳が蹂躙されている場合とは、例えばベトナム戦争で慰安所を「ディズニーランド」と呼び、朝鮮戦争ではソウル城北区下月谷洞88番地一帯を「テキサス村」として買春することを言う。また、この「テキサス村」の呼称がいい。1835年頃、米国入植者らはメキシコが「奴隷制度に反対」が気に入らなくて「テキサス革命」を起こした。他国内で反乱を起こし、それで勝手に「テキサス共和国」として独立させた。このあと「リメンバーアラモ」でメキシコを潰してしまう。そういう皮肉が含意されるネーミングで、他国の土地に売春地域をつくる。

それを知ってか知らずか、韓国軍は慰安婦をドラム缶に詰め「第5種補給品」として運んだ。「女性の尊厳」とか「道徳的にどうか」もヘチマもない。「性奴隷」ですらない。だって「補給品」だ。「軍の関与」でもない。韓国軍は直営だった。普通の感覚で「尊厳を蹂躙」を言うならこっちになる。





大阪市長の大記者会見。盛況だったようだが、冒頭から外国人記者に「イッツショータイム!」とおちょくられ、それからやっぱり「飛田新地」を言われた。あれほど「本音の話をしなくちゃ」を言った同じ口で<「『料理組合』の顧問弁護士。料理組合自体は違法でもない>と答える。あれほど「日本の政治家はダメ、建前論ばっかり」と日本の政治家全員を馬鹿にし、保守(を気取る)政治家をして「びびってる」と茶化した御本人様が<料理組合自体は違法でもない>しか言わない。そりゃ<記者席は失笑の声がもれた>になる。

本当ならこんなことは公然と問われない。誰でも知ってるからだ。誰でも知ってることを問われる、それも公然と答えられるはずもないことを問われる、というのはオノレの矛盾を放置するからである。自分の都合で本音と建前を切り分け、いままで他者を攻撃し続けてきたからである。「飛田新地」について公然と問われ「2階で本番行為が行われていますが、あれは歴史と文化なんです」と言えるわけがない。とはいえ「え?そうなんですか?」と言えば人格を疑われる。本当に知らなかった、料理屋だと思っていた、と本気で言うなら知性を疑われる。こんなことはわかっていても言う必要がない歴然たる事実である。しかしながら、これを公然と問われるようなことを大阪市長はやっていたし、やったのだ。

そのとばっちりで過去、問題視されなかった「当時は合法だった」も騒がれるようになった。ラグビーで言うなら保守陣営は十数年かけて敵陣まで押し込んでいた。敵のディフェンスも消耗し、安倍政権も再度復活してトライ寸前だった。そこで阿呆がボールを取って抜け出し走りだした。目立ちたいだけだった阿呆は、敵の猛攻に呆気なく潰された。味方は慌ててディフェンスするが、かなりの距離を戻されてまた、自陣ゴール前で苦戦する。

いまさら敵チームの数の多さ、狡猾さ、ルール無用に憮然としながら、味方チームに「びびってる」とか「ずるい」とか罵る。敵の数が15人じゃない、おかしい、フェアじゃない、とか誰でも知ってることで口を尖らせる。大騒ぎして外国の記者の集め、何度も何度も「日本は悪かった」の言質を差し出す。そのあとの「でも世界の国も悪かった」など、どこの世界のメディアや政治家が認めるのか。

韓国の政治家が頭を強く打ち、その発作で「韓国もベトナムで酷いことをした。日本以上に悪い国だ」と言ったら転落死する。支那共産党の幹部が「尖閣諸島はどう考えても日本固有の領土」と公然と発したら揚子江に浮かぶ。それが世界の「本音」である。

アメリカは人権意識の高い国が建前なら、フェア精神の高い国も建前だと、政治家になるなら知っておいてもらわねば困る。そのアメリカの壮大な建前のひとつが東京裁判であり、その茶番の中ですら慰安所というシステムは問題視されなかった。無論、国際法違反の「強制売淫事件」の有罪判決は「b級戦犯裁判」でいくつかあった。だが、本当に日本軍が「20世紀最大の人権侵害」と言われる「従軍慰安婦の強制連行」があれば「人道に反する罪」として戦勝国が放置するはずがない。慰安所などあの反日根性丸出しの李承晩ですら言わなかった。本音も建前もへっちゃくれもない、それほどの当たり前だった。

なのに橋下市長は全世界に発する記者会見で<さらに合法であれば道徳的には問題がないというようにも誤解をされました。合法であっても、女性の尊厳を貶(おとし)める可能性もあり、その点については予防しなければならないことはもちろんのことです>と言った。日本でも連日、テレビ新聞が嬉々として報じている。

左から攻め込むアホンダラはオフェンスがずいぶん楽になった。浅いところの戦略も広がっただろう。日本は鳩山由紀夫や菅直人で「無能な味方は強敵より怖い」を思い知った。今度はヒーロー気取り、スター気取りのスタンドプレーヤーの口達者に悩まされる。





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