編集部では現在、3月号を制作中。
3月号といえば恒例の版画特集ですね。「版画NOW」という以前の特集タイトルの方がおなじみかもしれません。今年はちょっと趣向を変えていますので、是非ご期待ください。
さて今日はそんな特集の取材の一環でカナダ大使館に行ってきました。東京に数多くある各国大使館のなかでも、ギャラリーを併設しているのはここだけだそうです。
目的は展覧会「旅する版画:イヌイットの版画のはじまりと日本」。
カナダ極北地方にケープドーセットという村がありまして、そこでは日本の版画技法が脈々と伝えられているというのです。
説明によると、1957年に当時政府の職員だったジェームズ・ヒューストンが、イヌイットが収入を得るための手段になることを期待して、この地の人々に版画制作の方法を紹介。翌年、彼は版画技術についてより深く知るために自ら日本に行き、世界的な版画の名匠・平塚運一のもとで3ヶ月間学びました。1959年に北極地方に帰ると、彼は版画制作を始めたばかりのケープドーセットの人々に日本で集めたたくさんの版画を見せ、習得した技術を伝えました。
それ以来今日まで、イヌイットの版画家は、自分たちの歴史と文化を記録するための手段として版画制作を続け、現在では彼らの作品は国際的に高く評価され、商業面でも大きな成功を収めているそうです。
朝早く出かけたのはいいのですが、開場は午前9時。近くの赤坂ガーデンというインテリジェンスビルの一階のタリーズコーヒーで小一時間つぶして、それから会場へ。大使館というのはどこでも高い塀で囲まれて、しかも入口が分かりにくいのが常ですが、カナダ大使館はちょっと違ってまして、展覧会の看板がデカデカと掲示されて、かなりオープンマインドな感じでした。守衛さんに一声かけて、奥のエスカレーターを上ります。振り返ると赤坂御所の鬱蒼とした森が望めます。建物に入って、今度はエレベーターを地下二階へ。この地下のスペースがなかなかのものでして、天井は高いし光はほどほどだし、いい感じ。
ギャラリーに入ると、キャプションなしで作品だけがきれいに並んでいました。
ポスターにもなった北極グマの版画やペンギン、カマクラのようなあのイヌイットの家(名前を聞いたんですが、忘れてしまいました)など、身近な題材が素朴ながらユーモラスに描かれていました。平塚運一の民芸調の単色の絵柄から、さまざまな技法へと挑戦していったイヌイット版画家たちの変遷も分かります。
最後になって、キャプションがなかった理由が判明。入口に作品説明の冊子が4種類あって、それを見ながら鑑賞するシステムだったのです。日本語、英語、フランス語、そしてイヌイット語。果たしてここに何人のイヌイットの方が来られるのか、あとで考えると疑問だったのですが、とにかく多くの人に見てもらおう、楽しんでもらおうという気持ちが随所に現れていました。商業ギャラリーではないにもかかわらず、お役所仕事でないところが素晴らしい。もし在日本各国大使館好感度選手権というのがあったら、間違いなくチャンピオンはカナダ大使館ですね。
さて面白かったのは、北方カナダでは木が貴重なため、木版ではなく石刻の石版だということ。道具もトナカイの角で作ったナイフ、アザラシの皮を巻いた彫刻刀など身近なものを工夫して使っていまして、その実物もありました。ただし紙だけは、日本の和紙が最適だそうで、今回来日した二人の版画家さんも、四国の紙漉きの里を訪れたそうです。日本の紙って、世界最高水準なんですよ。それは欧米と比べても、韓国や中国といったアジア諸国と比べても、断然優れた紙を作っているのです。
そうそう、この会場は入場無料で誰でも入れるので、みなさん是非行ってみてください。青山一丁目駅から、赤坂御所を左手に見ながら赤坂方向に向かうと右手に見えてきます。大使館って普段なかなか入る機会がないから、オススメです。
ところで日本の版画、特に木版画は世界トップクラス。実際、最近は若くてフレッシュな作家さんもたくさん出てきていまして、特に女性版画家の活躍が目覚しいですね。版画コンクールの受賞者をみても、女性たちが活躍してます。韓国や中国から日本の技術を学びに来ているのも、やっぱり女性が多いしとってもいい仕事をしています。今度の3月号でもフレッシュな顔ぶれとなりそう。
で、みなさんを勝手に「版ガール」と命名しました。今日から彼女たちは「版ガール」となりましたので、ここに明記しておきます。
世間では、登山やトレッキングをする「山ガール」、海好きの「海ガール」、釣り好きの「釣りガール」が流行っているそうですね。農業をするのが「ノギャル」、船に乗って漁にでるのが「ウギャル」(ウは海と魚らしい)。というわけで、「版ガール」とは版画の作り手となっている若い女の子の総称です。年齢は一応、35歳までとしておきましょうか。異論があったら、ご意見ください。
「旅する版画:イヌイットの版画のはじまりと日本」
WEBはこちら
会期 1月21日(金) ~ 3月15日(火)
会場 カナダ大使館 高円宮記念ギャラリー
時間 平日:午前9時~午後5時半/水曜日:午前9時~午後8時
(土、日、2月11日(金)は休館)
(東京都港区赤坂7-3-38 地下鉄「青山1丁目」駅より徒歩5分)
3月号といえば恒例の版画特集ですね。「版画NOW」という以前の特集タイトルの方がおなじみかもしれません。今年はちょっと趣向を変えていますので、是非ご期待ください。
さて今日はそんな特集の取材の一環でカナダ大使館に行ってきました。東京に数多くある各国大使館のなかでも、ギャラリーを併設しているのはここだけだそうです。
目的は展覧会「旅する版画:イヌイットの版画のはじまりと日本」。
カナダ極北地方にケープドーセットという村がありまして、そこでは日本の版画技法が脈々と伝えられているというのです。
説明によると、1957年に当時政府の職員だったジェームズ・ヒューストンが、イヌイットが収入を得るための手段になることを期待して、この地の人々に版画制作の方法を紹介。翌年、彼は版画技術についてより深く知るために自ら日本に行き、世界的な版画の名匠・平塚運一のもとで3ヶ月間学びました。1959年に北極地方に帰ると、彼は版画制作を始めたばかりのケープドーセットの人々に日本で集めたたくさんの版画を見せ、習得した技術を伝えました。
それ以来今日まで、イヌイットの版画家は、自分たちの歴史と文化を記録するための手段として版画制作を続け、現在では彼らの作品は国際的に高く評価され、商業面でも大きな成功を収めているそうです。
朝早く出かけたのはいいのですが、開場は午前9時。近くの赤坂ガーデンというインテリジェンスビルの一階のタリーズコーヒーで小一時間つぶして、それから会場へ。大使館というのはどこでも高い塀で囲まれて、しかも入口が分かりにくいのが常ですが、カナダ大使館はちょっと違ってまして、展覧会の看板がデカデカと掲示されて、かなりオープンマインドな感じでした。守衛さんに一声かけて、奥のエスカレーターを上ります。振り返ると赤坂御所の鬱蒼とした森が望めます。建物に入って、今度はエレベーターを地下二階へ。この地下のスペースがなかなかのものでして、天井は高いし光はほどほどだし、いい感じ。
ギャラリーに入ると、キャプションなしで作品だけがきれいに並んでいました。
ポスターにもなった北極グマの版画やペンギン、カマクラのようなあのイヌイットの家(名前を聞いたんですが、忘れてしまいました)など、身近な題材が素朴ながらユーモラスに描かれていました。平塚運一の民芸調の単色の絵柄から、さまざまな技法へと挑戦していったイヌイット版画家たちの変遷も分かります。
最後になって、キャプションがなかった理由が判明。入口に作品説明の冊子が4種類あって、それを見ながら鑑賞するシステムだったのです。日本語、英語、フランス語、そしてイヌイット語。果たしてここに何人のイヌイットの方が来られるのか、あとで考えると疑問だったのですが、とにかく多くの人に見てもらおう、楽しんでもらおうという気持ちが随所に現れていました。商業ギャラリーではないにもかかわらず、お役所仕事でないところが素晴らしい。もし在日本各国大使館好感度選手権というのがあったら、間違いなくチャンピオンはカナダ大使館ですね。
さて面白かったのは、北方カナダでは木が貴重なため、木版ではなく石刻の石版だということ。道具もトナカイの角で作ったナイフ、アザラシの皮を巻いた彫刻刀など身近なものを工夫して使っていまして、その実物もありました。ただし紙だけは、日本の和紙が最適だそうで、今回来日した二人の版画家さんも、四国の紙漉きの里を訪れたそうです。日本の紙って、世界最高水準なんですよ。それは欧米と比べても、韓国や中国といったアジア諸国と比べても、断然優れた紙を作っているのです。
そうそう、この会場は入場無料で誰でも入れるので、みなさん是非行ってみてください。青山一丁目駅から、赤坂御所を左手に見ながら赤坂方向に向かうと右手に見えてきます。大使館って普段なかなか入る機会がないから、オススメです。
ところで日本の版画、特に木版画は世界トップクラス。実際、最近は若くてフレッシュな作家さんもたくさん出てきていまして、特に女性版画家の活躍が目覚しいですね。版画コンクールの受賞者をみても、女性たちが活躍してます。韓国や中国から日本の技術を学びに来ているのも、やっぱり女性が多いしとってもいい仕事をしています。今度の3月号でもフレッシュな顔ぶれとなりそう。
で、みなさんを勝手に「版ガール」と命名しました。今日から彼女たちは「版ガール」となりましたので、ここに明記しておきます。
世間では、登山やトレッキングをする「山ガール」、海好きの「海ガール」、釣り好きの「釣りガール」が流行っているそうですね。農業をするのが「ノギャル」、船に乗って漁にでるのが「ウギャル」(ウは海と魚らしい)。というわけで、「版ガール」とは版画の作り手となっている若い女の子の総称です。年齢は一応、35歳までとしておきましょうか。異論があったら、ご意見ください。
「旅する版画:イヌイットの版画のはじまりと日本」
WEBはこちら
会期 1月21日(金) ~ 3月15日(火)
会場 カナダ大使館 高円宮記念ギャラリー
時間 平日:午前9時~午後5時半/水曜日:午前9時~午後8時
(土、日、2月11日(金)は休館)
(東京都港区赤坂7-3-38 地下鉄「青山1丁目」駅より徒歩5分)