月刊美術編集部ブログ

アートにどっぷりとひたる毎日

台湾の木彫展

2010年08月27日 | 管理人兼水泳部員N
台湾に行った際、台北から少し足を伸ばして三義(サンイと読む)という町に行きました。以前このブログで紹介した国際木彫芸術節、つまり木彫のアートフェスティバルが当地の三義彫刻博物館で開催されていたからです。

台北から車に乗って高速道路を2時間くらい南に下がったあたり。日本でいうと東京から首都高と東名を使って御殿場まで来た、という距離感でしょうか。着いたところが台北とはうってかわって山間の田舎町の風情。いたるところに木彫りの彫刻が立っていて、さすが木彫の町という雰囲気でした。木彫店というのでしょうか、とにかく彫刻を売っている店がザッとみて200軒は並ぶメイン通りや、高台にある博物館の前にも20軒ほどのお店があって、いずれも2メートルはあろうかという巨大な仏像彫刻やいかにも工芸品といった感じの鳥や動物の彫刻が所狭しと並んで売っていました。

日本では木彫の町ってないのでちょっとイメージしにくいのですが、益子や多治見などのやきものの町の木彫版というと分かってもらえるでしょうか。もともとここはクスノキの産地だったようで、のちに木彫工芸が生まれたそうです。日本の統治時代に、日本人が大量に木彫を作らせては日本に持って帰って売っていたようです。戦後もアメリカからの注文で、主に鷲の木彫がここから輸出されていたとか。ワシって確か勝利の象徴か何かですよね。

町おこしというよりは、しっかりと町の産業として成り立っているところが日本の陶芸の町と似ています。また、ここを拠点に現代的な芸術作品を発表するアーティストも出てきているという点も似ていますね。

さて木彫博物館では國際木雕藝術節の一環としてコンクール「台湾國際木雕競賽」と展示のみの「木彫交流展」が開催されていました。前者は世界中から募った木彫作品を対象にした賞制度。後者は今年のゲスト国として選ばれた日本との交流展で、多摩美大、沖縄県立芸大、金沢美術工芸大の3校の学生と教授の作品、一方台湾からは台湾芸術大学と台湾市立大学という二大美大からの出品作品を一堂に集めた展示内容。コンクールの受賞者が日本の美大からの出品作だったりするので、結局両者はクロスオーバーした内容となっていました。ちなみにアート台北に日本のブースから出品されていた作家の作品もいくつか見られました。作品と展示内容について、詳しくは月刊美術の10月号で紹介する予定ですので、そちらをご覧下さい。


博物館のすぐ外では、特設ステージができていて、小学生くらいの歌手?がポップス系のノリノリの曲を歌っていました。しかもその歌の上手さとダンスパフォーマンスの上手さは間違いなくプロでした。きっと、こっちにも沖縄アクターズスクールみたいなアイドル養成校があるんでしょう。
ちなみに、このステージではいま人気のダンスグループ「Dance Flow」もパフォーマンスしたそうです。



木彫の町としてここは全国的に有名らしく、土日を中心に台湾全土から観光客が集まっていました。こんなことって日本では見られないので、ちょっとびっくりでしたね。日本だと仏像って、せいぜい仏具屋さんくらいしか見ないしそれを沢山のなかから選んで買おうって思わないんですが、台湾では普通の部屋の装飾品の一つとして購入されているようでした。台湾の家は大きいので、飾るスペースに困らないんでしょう。それどころか大きい彫刻を部屋に置くことはステータスシンボルなのかもしれませんね。日本はようやくフィギュアの影響によって彫刻作品にも人気が出てきましたから、その売り方は台湾に学ぶこともあるかもしれないですね。

で、せっかく来たので何か土産にと思って買ったのが、木でできた指圧棒の数々。これがなかなかのスグレモノでして、肩や背中にあてて、軽くこすっていくだけで凝りがほぐれていくのです。コリコリしなくても、サラサラなでるだけでいい感じ。ガイドしてくれた台湾人の一人は、ここで10センチ程度の木彫りの観音様を値切って3500台湾ドル、だいたい1万円くらいで購入してました。日本でも仏像って買ったことがないので、高いんだか安いんだか分からないのですが、この翌日、台北のホテルに帰ってたまたま土産物コーナーを見ていたら、ほとんどこれと同じものが2万円くらいの定価で売っていたので、やはり安い買い物だったんでしょう。

アート台北2010開幕中

2010年08月24日 | 管理人兼水泳部員N
台湾のアートフェア「アート台北」を取材しました。
会場はやたらと背の高い101ビルの隣のワールドトレードセンター。広大な見本市会場ですから、アートフェア東京に似た感じです。違うのは一つのブースが大きいことと通路もゆったりしていること。それに台湾のほか、中国・香港・日本・韓国といったアジアの主要国からの参加が目覚しいこと。実に110の参加のうち、53が外国勢。特に日本からは最多の22ギャラリーが出展。去年と一昨年に好結果を残した日本の画廊が他を誘うかたちでここまで参加が増えた模様。

プレビュー、つまり前夜祭では特設されたステージで関係者の挨拶もそこそこに、女子十二楽坊の台湾版でしょうか、アイドル系楽器演奏グループの演奏が鳴り響き、盛り上げをはかっていました。

地元の人に聞くと前回と比べると若干人の入りは少なく、静かな印象とのこと。たしかに、ステージから離れると人の流れはあまりなかったかも。金曜と日曜にも行ってみましたが、やはり全体に少なめのようでした。

それでも地元台湾のソカアートギャラリーが張暁剛の大作は早速売れてましたし、大阪のヨシアキ・イノウエギャラリーが放つ「完売作家」、北川宏人の彫刻もすぐに全作品売れてました。見ごたえという意味では、誠品画廊の蔡国強の巨大作品や、韓国のガナアートギャラリーが出品した草間弥生のミロのヴィーナスあたりが目立っていました。




春に開催されたホテル型のフェア「ヤングアート台北」のときにも思ったことですが、全体に若い作家を売り出そうという主催者と画廊の頑張りがよく見えました。そのひとつが「メイド・イン・台湾」と呼ばれる特設コーナーで、ビデオや写真も含めて新しい作家を紹介していましたし、なかには18人に1号サイズの作品を6点ずつ制作してもらって、それをズラリと並べたギャラリーもありました。若い才能を発掘したいというのは、いつの世の中でも大切なことだと改めて感じました。日本は、どうかな?


月刊美術9月号 発売しました

2010年08月23日 | 管理人兼水泳部員N
月刊美術2010年9月号が発売されました。

今回は巻頭特集よりも断然目立っているのが、日本画家の堀文子さんと聖路加国際病院理事長で現役医師の日野原重明さんの対談。実に二人合わせて190歳の対談です。二人とも決して歳を感じさせず、それどころか元気いっぱいのお話ぶりに収録の間はスタッフ一同感心しきってしまいました。是非誌面をご覧ください。

巻頭特集は「銀座、絵のある名店」と題し、鮨、割烹、洋食、喫茶、バーなど銀座の名店とアートの関わりを深く掘り下げています。

緊急特集「千住博から未来の作家たちへ」は、京都造形芸術大学の学長で自身も世界的なアーティストとして活躍する千住博氏が、若い才能たちに向けて発信する緊急メッセージ。日本から世界へと羽ばたく若き画家たちに託すその思いを伝えます。

このほか「今月の作家」のコーナーに日本画の松谷千夏子さんをクローズアップ。シンプルな線描と和紙が透けて見えるほど透明感のある色彩で女性を描いた作品をお楽しみいただけます。

全国の書店にてご購読ください。