ー希望の継承者サーシアー
宇宙戦艦ヤマト2202外伝
第七話
海底洞窟内をダイブして行くFS型宙雷艇。
縦穴を百メートル程、ダイブしたところで繋がる横穴を五十メートル程進んだ。
今度はダイブした縦穴とは別の縦穴を浮上した。
七十メートル程で、浮上すると広大に開けた宮殿の大広間を思わせるような空間が姿を現した。
調査団のFS型宙雷艇に横付けするように接岸、近衛兵団長を先頭に二人の近衛兵が上陸、その後にアベルト、そして残りの近衛兵が上陸した。
「総統。此方です。」
調査団団長はアベルトの姿を確認すると同時に右手を肩の高さに水平に上げ、肘から先を九十度に曲げ、手の掌をアベルトに見せるように素早く上げた。
アベルトの返礼を確認し、素早く上げた手を下ろした。
「コツコツ。」と足音が響き渡る。
大広間のような空間の中央付近を少し過ぎたところで、調査団団長が足を止めた。
「総統。これを観て下さい。」
調査団団長が手を伸ばす先には蒼白く光を放つ波動コアが、ポツンと台座に置かれていた。
アベルトが一本踏み出すと、その蒼白く光を放つ波動コアの前に、空間ホログラムが浮かび上がった。
「よく参られた。旅の者よ。」
その言葉を耳にすると同時にアベルトは、片膝を床に付き、右手を胸に当て、頭(こうべ)を垂れた。
「女神アクエリアスよ。突然の訪問を御許し下さい。」
「私はアベルト・デスラー。」
「デスラーとやら、顔を上げなさい。」
「ソナタら人間が、この地を訪れたという事で、デスラー、あなたの訪ねた理由は解ります。」
「あなた方の母星が水没する日が近いのですね。」
「そして、このアケーリアスの軌道を変える方法が見つからない。」
「軌道を変える事が叶わぬなら、新天地を教えて欲しい。」
「そうですね!?」
アベルトは無言のまま、女神アクエリアスを見詰めた。
「デスラーよ。あなた方の住む星が、このアケーリアスと出会うのは、本来なら八十年以上未来のはずでした。」
「ですが、何者かによって、人工的に空間を跳躍させられしまったのです。」
「歴史は変えられても、運命は変える事が出来ない。と云う事ですかな!?」
「そうです。」
「ですが、これは不本意な出来事。」
「あなた方に新天地と成るかも知れない場所を教えて差し上げましょう。」
そう云うと女神アクエリアスは瞳を閉じ、自身の前にもう一つ空間ホログラムを映し出した。
「……ジレルか?」
アベルトの心に浮かんだ言葉。
「そうです。かつてあなた方に迫害され、母星を失った種族。」
「あなた方に共存共栄の意思がお有りなら、それを示す事で受け入れられる事でしょう。」
「このシャンブロウならあなた方に必要な大気を有しています。」
「正確には、大気を変えてくれるでしょう。シャンブロウにはそれが可能。」
「……。」
「どうしました?」
アベルトは少し沈黙した後、女神アクエリアスの提案を受け入れた。
「ジレルの民と逢おう。」
「そうですか。では、路先案内人を紹介しましょう。」
「総統。お久しぶりですね。」
路先案内人として紹介された人物、それはかつてガミラスに、いや、アベルトに忠誠を誓って不幸にしてこの世を去ったミーゼラ・セレステラであった__。
「お前は!」
「止めろ!銃を下ろせ!」
「女神アクエリアスよ。私は幻覚を観ているのかな?」
「いいえ。幻覚などでは、ありません。」
「この広大な宇宙をすがる想いで彷徨う魂を復元したのです。魂の波動がエレメント化するまでの間だけの生体です。」
こうしてジレルの聖地シャンブロウを目指す事と成ったデスラーたち。
だが、この時を待っていたかのように、惑星アクエリアスの上空にワープアウトして来る暗黒星団帝国艦隊の姿があった__。
◆◆◆◆
【FS型宙雷艇】
分類戦闘艇
全長:33m
乗員:8名
武装
33mm四連装レーザー機関砲×1(艇体上部)
133mm単装陽電子カノン砲×1(艇首下面)
両袖下部に大型魚雷(または対艦ミサイル)を2基懸架可能。
基本設計の優秀さから、艇体下面に砲塔を増設した重武装型、魚雷発射管を除去して陽電子ビーム砲を搭載した陽電子砲艇、魚雷搭載数を削減して人員輸送用の空間(空間機甲猟兵一個分隊・約6名分)を確保した強襲特務型のほか、航宙機雷敷設型、掃宙艇など、さまざま派生型が生産されている。
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つづく。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち》の二次創作です。
一部、公式より引用。
また、プレイステーションゲーム版設定資料より引用。
使用している画像はイメージです。また一部、拾い画を使用しています。