舞台狭しと、跳ね回る来寝麻呂姉妹、さこひめは思い余って吉野の彼方にまでと羽ばたいてしまった。
お囃子隊の連弾も弾けまくっている。
観客は騒然と成っていた。というより、半狂乱になって酩酊状態です。
新門の若頭も、唯々呆然と眺めるのみ。
「なんじゃこれは。種も仕掛けも分からねえ?!」
種も仕掛けも有る筈など無いのです。来寝麻呂兄妹は本物の化け狐だし、さこひめは素戔嗚尊の妹で、神様の成れの果てだったのですから。
狂乱の続く中、緞帳が下りてきました。
アンコールをせがむ手拍子が沸き上がっています。
来寝麻呂が客席後方からヒューッとばかりに緞帳の真ん中やや下手に着地。
やんやの喝采!
来寝麻呂は恭しく客席に向かって礼を捧げた後、左側に両手をだしてヒラヒラとさせると、妹がスーッと現れた。
来寝麻呂姉妹は少し間を開けて、両手を下から上に突き上げてヒラヒラ。
二人の間に、翼を羽ばたかせたさこひめが優雅に着地して、翼を大きく羽ばたかせて客席に送った。
満面に笑みを浮かべた三人が手を繋いで反転宙返りすると、その姿はかき消えていた。
舞台裏では、あの娘が振袖姿に着替えていた。
お軽が、長い髪を頭の上に束ねて行く。しなやかで儚いまでに美しい項を見せる為です。
側で小雪が佇んで溜息を付いています。
「若く見えるって良いね、得だよね」
舞台袖で河太郎が口上む述べています。
「初音の鼓手のは、今の天皇陛下の始祖、桓武天皇の御代に造られたというから、千年以上も前の事になる」
ゆっくりと上がる緞帳。
「これからお贈りする出し物は、それから更に千年以上が起源のお話。まずは、ご覧成されませーッ!」
舞台に拡がる吉野の風景。
今度は哀しいまでに紅に燃える紅葉が連なっていた。
「おや? だーれもいないじゃ無いか」
二本のスポットライトが上下左右に動き回って主役を捜し回るが、誰も見つける事が出来なかった。
「駄目だねこりぁー。仕方が無い、皆おいらに手を貸しておくれ」
お軽に小雪、さこひめや鎌鼬まで河太郎の後ろに並んだ。
「さあ、皆一緒に、声を併せて、一ィ、二ィ、三!」
観客も一体となって、
「あいちゃーん!」
「アーイーッ!」
舞台中央に現れるあいちゃん、はにかんで俯いています。
客席の太郎と花子が声を合わせて、
「あいちゃーん!」
嬉しそうに微笑むあいちゃん、凜として顔を上げ、少し首を伸ばして美しい項を見せながら客席を見回しました。
2016年12月10日 Gorou
お囃子隊の連弾も弾けまくっている。
観客は騒然と成っていた。というより、半狂乱になって酩酊状態です。
新門の若頭も、唯々呆然と眺めるのみ。
「なんじゃこれは。種も仕掛けも分からねえ?!」
種も仕掛けも有る筈など無いのです。来寝麻呂兄妹は本物の化け狐だし、さこひめは素戔嗚尊の妹で、神様の成れの果てだったのですから。
狂乱の続く中、緞帳が下りてきました。
アンコールをせがむ手拍子が沸き上がっています。
来寝麻呂が客席後方からヒューッとばかりに緞帳の真ん中やや下手に着地。
やんやの喝采!
来寝麻呂は恭しく客席に向かって礼を捧げた後、左側に両手をだしてヒラヒラとさせると、妹がスーッと現れた。
来寝麻呂姉妹は少し間を開けて、両手を下から上に突き上げてヒラヒラ。
二人の間に、翼を羽ばたかせたさこひめが優雅に着地して、翼を大きく羽ばたかせて客席に送った。
満面に笑みを浮かべた三人が手を繋いで反転宙返りすると、その姿はかき消えていた。
舞台裏では、あの娘が振袖姿に着替えていた。
お軽が、長い髪を頭の上に束ねて行く。しなやかで儚いまでに美しい項を見せる為です。
側で小雪が佇んで溜息を付いています。
「若く見えるって良いね、得だよね」
舞台袖で河太郎が口上む述べています。
「初音の鼓手のは、今の天皇陛下の始祖、桓武天皇の御代に造られたというから、千年以上も前の事になる」
ゆっくりと上がる緞帳。
「これからお贈りする出し物は、それから更に千年以上が起源のお話。まずは、ご覧成されませーッ!」
舞台に拡がる吉野の風景。
今度は哀しいまでに紅に燃える紅葉が連なっていた。
「おや? だーれもいないじゃ無いか」
二本のスポットライトが上下左右に動き回って主役を捜し回るが、誰も見つける事が出来なかった。
「駄目だねこりぁー。仕方が無い、皆おいらに手を貸しておくれ」
お軽に小雪、さこひめや鎌鼬まで河太郎の後ろに並んだ。
「さあ、皆一緒に、声を併せて、一ィ、二ィ、三!」
観客も一体となって、
「あいちゃーん!」
「アーイーッ!」
舞台中央に現れるあいちゃん、はにかんで俯いています。
客席の太郎と花子が声を合わせて、
「あいちゃーん!」
嬉しそうに微笑むあいちゃん、凜として顔を上げ、少し首を伸ばして美しい項を見せながら客席を見回しました。
2016年12月10日 Gorou
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