朱禪-brog

自己観照や心象風景、読書の感想
を書いてます。たまに映画も。

焼き鳥屋

2021-08-27 05:29:18 | 雑記
肉屋、魚屋、八百屋、乾物屋、金物屋、
履物屋、かしわ屋(鶏屋)、塩干屋などなど
生活に密着していた
屋という号を持った個人店は本当に
少なくなりました。

いまやこれらの物に加えて、身の回りの物も含めた殆ど一式がスーパーでまかなえます。

その事に異論はありませんが
「〇〇屋」という響きは親近感が湧くん
ですね(笑)

寿司屋の育ちだったからかな?

そして 「焼き鳥屋」と言えば?
もう15年ぐらい行ってないです。



龍(たつ)

京浜東北線は品川駅を過ぎた
あと2駅で大森に着く
時計の針は午後5時半過ぎだった
(ん、一杯飲んで行こうか)と
頭に考えが走る

発作的に大井町で降りる
(さて…どうする)
東急線沿いのアーケードを西に歩く
ふと左を見ると大きな白提灯に
黒字で「龍」と書かれた店が目に止まる。

焼き鳥屋のようだ。

(こんばんは。いいですか?)

「いらっしゃい。どこでも座って。」

逆L字のカウンターで定員は10名と
いったところか。
お客さんはまだいない。
奥の席にチンと座る。

親爺の名前は知らない
ただこれ以降親しみを込めて「親爺
で通したい

ビールをキュッと空け
しばらく放心状態になっていると
「お客さん、はい、お通し。」

見ると「うざく」だった。

「いや、なにね、今日の昼メシに
作ったんですよ、よかったらどうぞ」

変わった親爺やなと思う

(うまい)

(皮とやげんとぼんじりください。
あ、塩でお願いします)

親爺はおもむろに換気扇のスイッチを入れる。
直径が50cmはあろう店のサイズに
そぐわない巨大な羽根が唸りをあげる。

大人の顔三人分はある大団扇で
(先端はハサミで切込みを入れている)
バサバサと扇ぎ、炭をいこらす。

「脂っけのあるものですんで、ちょいと炭を強めにするんで、、、」

(なんで炭を強めにするんですか?)

「へぇ、簡単に言うと炭が脂で死ぬんですよ、脂に負けねぇくらい、いこらした方が表面はカリッとして、中身のうまさが逃げやしません」

(なるほど)
楽しみだ。

焼き台には網はなく
鉄製の渡しが二本ある。

親爺の背中を見ながら、作り手を
観察する。
逆L字の奥に座るのは作り手の手元や
所作が見えるので、個人的に好む場所だ。

親爺の動きには無駄がなく
ねじり鉢巻に作務衣と雪駄が渋い。

「あいよ、お待ち」

うまい…塩加減が抜群で
脂がベタベタせず、カリッとしてるが
固すぎない。
噛めば肉(皮)の甘みが口一杯に広がる。
鶏の臭みも全くなく
いままで食べてきた焼き鳥は
なんだったのだろう。。。

これをきっかけに
親爺の店に通うことになる。

龍の親爺を思い出したので
次回も続きを書こうと思います。

ここまで読んで頂きどうもありがとう
ございます。

今日が良い一日となりますように🌸

朱禪記す