リッツ線というものをご存じだろうか。
細いエナメル線(ポリウレタン塗装した銅線)を数本束ね、同じ方向に捩ったものなのです。
高周波電流が銅線を流れると、表皮効果といって、銅線の表面ばかりを流れるようになります。 これは抵抗値を増やし熱を発生させたりして効率を落とす結果につながります。
それを避けるために、細い銅線を何本か捩って表皮にばかり電流が流れないようにするよう工夫したものがリッツ線です。 捩った 1本の銅線としてみた場合、電流が表面でも中央部でも流れることで、特に電流で磁界を励起しようというスーパーラドアンテナにはうってつけなのです。
さて、皮膜された銅線、例えばLanケーブル、の中身はどうなっているのでしょうか。
Lanケーブルから4対のツイスト線(2本づつより合わせた線)を取り出し、その1対のケーブル被膜をカッターで削いでみました。 端の方だけですけど。
すると、上記写真のように端から見て右周りに銅線が捩られているのが分かります。 つまり、Lanケーブルのツイスト線は、皮膜の内部は撚りのかかった銅線、つまり、リッツ線なのです。 ただし、Lanケーブルには単線(1本の太めの銅線)のものと撚り線(何本かの細い銅線を撚ったもの)とがあります。 ここでいうLanケーブルとは、撚り線の物を指しています。
内部の撚り線は、1本φ0.08㎜の細線が7本撚りあわされていました。 全体で0.5㎜くらいになるかと思います。
これに被膜が被っていて2本、互いに撚りあわされてツイスト線になっています。 ツイスト線も右回りに撚りあわされています。(糸撚りの原理に従えばツイスト線は左回りに撚るべきなのだが・・・)
この撚りを、皮膜内部で更に捩って、撚りの強いリッツ線に変化させる方法をお教えします。 あるいは撚りのない銅線に撚りをかける方法にもなります。
まず、ツイスト線をばらして1本を取り出します。 (2本同時でもできるのかも・・・)
そして下の写真のように、細い丸棒に右端から見て右巻きに巻いていきます。 丸棒の方をくるくる巻くようにすればうまく巻けます。
次に、巻き線の端を持って丸棒の先端方向に引っ張り出します。 この時に巻いた線が緩まないように左手の指で押さえておきます。 全体が引っ張り出されたら、撚りが戻らぬように注意して、両端を持って両側にピンっと引っ張れば、内部の銅線には右撚りがかかっています。
同様にして、もう1本のツイスト線にも撚りをかけます。
そして1対のツイスト線を右巻きにより合わせます。 他のツイスト線を継ぎ足す場合を考えてツイスト線の巻き方に合わせています。 これで撚りの強いツイスト線(リッツ線のより合わせ強化)が完成します。
2本の被膜線で上記を行うと出来上がりのツイスト線は右巻きのより合わせになります。 おそらくLanケーブルはこの方法で撚りをかけているものと思われます。 一般のロープや絹糸のより合わせとは原理が異なります。
Lanケーブルではなく、細い銅線を何本か束にして、同様の方法でリッツ線を作ることができます。
撚りのかかり方は、使う丸棒の円周長当たり1回の撚りがかかりますので、強めの撚りを掛けたければ、より細い丸棒を使う、あるいは、同じ工程を何度か行う、ことで撚りを強くすることが出来ます。 左捻じりにしたければ丸棒に左巻にして同様に行えば良い訳です。
長いリッツ線が欲しい場合には、一定長づつ分けて上記を行えば長いものも作れますが、丸棒に巻いている間に撚りをかけた部分が逆回転して撚りが戻ることがありますので、それを克服すればどんなに長いものでも作れます。 撚りあがった部分を駒に巻いて丸棒に固定してしまってから残りの部分を丸棒に巻く、というように・・・