竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

徳島、四万十川、そして地域エネルギー

2016年08月13日 | 地域エネルギー
いま、四万十市に来ています。
実は8月4日、ついに年金をもらう歳になりました。
誕生祝いメッセージを本当にたくさんの方々からいただきました。
多すぎて、二日がかりでもついに全員には返信ができなくて、遅まきながら、このブログ上にて御礼申し上げます。

その8月4日には、長野県飯田市のおひさまにおりました。8月6日は71年目のヒロシマでしたが仕事で動けず、8月9日のナガサキの日には、徳島へと飛びました。年金をもらう歳だというのに、なぜかとても忙しい。
一番の原因は昨年設立した「イージーパワー株式会社」です。金融機関から融資を受けるということは、求められることを、どんなときでもクリアしなければならないのだということを、今更ながらに実感しています。
ただ、片方でそれをやりながら、片方で新しいことにも突っ込むというアクロバットを、おそらく自分は今やっているのだろうな・・と感じています。その一つが徳島でした。

徳島地域エネルギーに教わったこと

徳島来訪の目的は、徳島地域エネルギーが直輸入代理店として広げようとしている「木質チップボイラー」の研修を受けることでした。オーストリア製の「ETA」というメーカーの製品で、ペレットボイラー、薪ボイラー、乾燥チップボイラー、生チップボイラーとあります。
おすすめは乾燥チップボイラーです。含水率30%以下、できれば10%台がベスト。生木も半年ぐらい天日(雨ざらし)乾燥で、そのぐらいにはなるということです。薪は人が張り付く必要があり(人件費負担が大きい)、生チップはある程度の規模がないとダメということで、全自動の乾燥チップかペレット。そしてコスト的には乾燥チップとなります。
日本の木質バイオマスの問題は山ほどあり、それは別の機会に書きたいと思いますが、このボイラーは電気を作らないということ。熱に徹するわけです。それでも十分に(電気のみより)エネルギー効率が良いからです。

日本の木は欧州と違ってガラス質のクリンカが多く、海外輸入(あるいは技術輸入)のバイオマスボイラーや木質ガス発電は軒並み失敗を重ねてきました。このボイラーは800〜900℃で燃焼をコントロールするのでクリンカも燃えてしまうと言うことです。
しかも、この温度より上だとNOxが出るし、下だとダイオキシンが出ます。見事に自動で温度管理をし、灰の掻き出しまでやってくれるというものです。実際に着火実習?をしましたが、指一本で3秒でした。あとはなにもしなくて良いのです。

そんなすごいバイオマスを徳島地域エネルギーが見つけ、先んじて代理店になったのは、その道の達人を仲間に引き込んだから。この方は、元県職員でその仕事を辞めて徳島地域エネルギーに転職されたそうです。実は小水力発電の達人や、電気のことなら任せろという元四電職員など、すごいメンバーが揃っています。そして次代を担う、その地域出身の若者。うーむ、申し分ないです。
そんな徳島地域エネルギーを引っ張っているのが豊岡さんという女性です。2011年に思い立って、すでに18メガに達する発電所を作っています。太陽光だけでなく小水力も、そしていまバイオマス熱利用、その先には風力発電も狙っています。
そのスピード感がすごい。徳島訪問のもう一つの理由は、その極意を学ぶことでもありました。

極意はすごかったです。
以下、自分勝手にまとめると・・。
1)合意形成なんかやらない!
正確に言うと、合意形成から始めるのではなく合意形成できる案件を作ること。
2)とにかく結果を出す!
だから結果が出やすいことからやる。結果が出れば、人も自治体もついてくる。
実例を示せば、みんなが真似する。
3)地域の半分以上を巻き込むようにならないと、地域を変えられない。
つまりは合意形成じゃなく、多数派形成であるということ。
4)力は借りてくる
なんでも自分でやろうとしない。企業とでも協働する。
だから「身の丈から」なんていうのもやめよう。

でも豊岡さんが常に見ているのは「地域」です。
国の政策を変えよう・・ではなく、再生可能エネルギーは地域の問題解決になるという信念。
地域から結果を見せれば、政府の考え方も変わる・・と。
いやはや、目からウロコの連続でした。

そして日本最後の清流、四万十川に

豊岡さんの話に触発され、やる気満々で、だがしかし身体は四万十川漫遊の旅へ。このあたりがちょっとアンバランスで眠れなくて夜中にブログを書いています。フェイスブックで少し飛ばしたのでご覧になった方もあると思いますが、徳島から高知県四万十町の窪川へ。四万十川への入り口のような街です。ここから予土線を走るトロッコ電車(しまんトロッコ)に乗りに来たのです。
窪川も「しまんトロッコ」の終点の江川崎(えがわざき)も、日本で最も暑いところ。江川崎は41℃という、日本の最高気温記録を持っている駅です。そんなところで、川のほとりを歩いていたら熱中症で倒れるに違いないと、トロッコ電車を選びました。
これは正解でした。がしかし、かなりの部分がトンネルで景色が見えません。線路の周りの草木がかなり大きくなっていて、あーっと良いところで、景色が草木に隠れるということもしばしばです。でも、私の初めての四万十川体験を「満喫」という表現できるものにしてくれました。

少しだけご紹介しましょう。
窪川を出発したトロッコ電車は、しばし緑の田園地帯の中をゆったりと流れています。このあたりの水が良いからか、米が美味しく、「にいだ米」というブランド米になっているとか。



そのようなことをガイドさんが二人乗っていて、解説してくれます。解説があることで、その景色が記憶として残る気がします。
このガイドさんたちとは、帰りの電車では一般乗客として乗り合わせ、いろいろと地域のことを教えていただくことができました。
ガイドさんたちはJRの方ではなく、予土線を守る地域協議会(正式名称を忘れました。)から派遣されていて、4名が交代で勤めているそうです。



四万十川は岩が多いことが特長です。四国山地の山が岩盤で、その岩が少しづつ崩れ石となり、砂となって流れ下ることで、川の中州や海岸線の砂浜が形成されています。
しかし土石流を防ぐという名目の砂防ダムが、この岩石の流入を阻んで、少しずつ四万十川の水質を変えてきているようです。
四万十川にはダムがないと聞いていましたが、前方にダムらしきものが見えてきました。
支流の家地川に造られた取水堰です。地域の人は、これがないと水が足りなくなるのだとか。可動式で、ヘドロとかは溜まっていないそうですが、魚の遡上は阻んでいます。
四万十川には、別の支流である梼原川にれっきとしたダム、津賀ダムがあります。これは発電用です。
こちらは山の奥なのでトロッコ電車からは見えません。



洪水、蛇行、そして沈下橋

四万十川は、普段は穏やかですが、大雨が降ると一気に水かさが増し、荒れる川になるようです。
荒れる川は、岩を運び陸を削り、天然の川として特長的な激しい蛇行を作り出しました。岩も転がるほどですから、波の橋では流されてしまいます。




そこで人々は、洪水になれば水底に沈む、しかし頑丈な沈下橋を考案しました。四万十川にはいくつもの沈下橋があります。その無機質な、じっと佇む岩のような感じが、清流四万十川にはよくマッチするのだと思います。
同時に、この沈下橋は人々の生活道路でもあります。欄干のないこの橋を、自動車も行き来します。
子供たちの遊び場でもあります。橋から飛び込んで泳ぐこともできるのです。

幾つかの沈下橋の写真を紹介しましょう。





名称は、あてずっぽうですが、上から穴吹の沈下橋、第一三島橋、半家の沈下橋、中半家の沈下橋です。
ちなみに半家は「はげ」と読みます。半の点二つを下に下げると「平」に似てきます。半家は「平家」だったのです。平家の落武者たちが、身を隠しながらも、その存在にこだわった証なのかもしれない・・と、これもガイドさんの説明です。四万十川と平家の落人とのつながりも深いのですね。

四万十川とメガソーラー

さて、「しまんトロッコ」の最終駅「江川崎」に着いて、戻りの電車を待つ1時間の間、近くのお店で休みつつ、何気なく新聞を読んでいたら、この四万十川にメガソーラーという記事がありました。
(高知新聞、https://www.kochinews.co.jp/article/41472/

三里の沈下橋と佐田の沈下橋のちょうど真ん中。3メガワットの規模で、東京の事業者が計画し、住民の反対にあって止まっていたもの。それを千葉の事業者が買い取って進めるというものです。
ここは、観光客が最も訪れるような、四万十川の重要ポイントです。その景観を台無しにするようなメガソーラーは、再生可能エネルギーを推進している私でも反対です。
まわりを植栽して隠すから良いんだと事業者は言っているようですが、ドローンで上から見たら台無しになるような景観はダメでしょう。
今や人間の目線は、横だけではないのです。
しかもメガソーラーを洪水から守るためのかさ上げ工事によって、逆に周辺地域への洪水を引き起こす恐れもあるとか。
そもそも、再エネ法の改正で、制度が来年の4月1日からガラリと変わります。そうなると住民の反対があるようなところでのメガソーラー建設はできません。
それを見越しての、駆け込み建設だとすれば、経産省は今の時点で警告を発するべきでしょう。4月1日以降でも、新認定制度の条件は満たさねばならないのだから、そもそも認定取消に該当するでしょう。
地域には害しかなく、発電の売り上げは千葉の業者が持っていくというのでは、そもそも合意形成案件とはなり得ません。千葉の事業者も、これに投じたお金は結局は無駄となるでしょう。豊岡さんの方法とはまったく正反対の「みんなを不幸にするプロジェクト」です。

というところで、そろそろ時間。
つぎは、その三里の沈下橋と佐田の沈下橋周辺の状況を、しっかりお見せしましょう。


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