フォトチャンネル「ぶらり紅葉の金沢兼六園」は一番下に移動しました。
10月24日(金)と25日(土)は、金沢市で地域・市民共同発電所全国フォーラムが開催されました。
2002年に最初に滋賀県で開催され、以後、横浜市、大阪市、京都市などで5回開催され、今回が第6回目となります。
昨年は京都の龍谷大学で開催され、ちょうど固定価格買取制度(FIT=フィットと読みます。)がはじまって、市民が作る小規模の共同発電所も電気の20年間定額買取によって事業採算性が十分に見えてきたという高揚の中での開催でした。
今年は、開催地域に石川県の金沢市が名乗りを上げ、金沢文化ホールでの開催になりました。
ただ、今年の状況は、FITの太陽光発電の買取価格が年々下がり、メガソーラーはさておき、市民が作る小規模共同発電所にとっては事業採算が取れなくなるようなラインになりそうなこと。さらに、例の再生可能エネルギー発電設備の「系統への接続保留問題」が起こったまっただ中での開催となりました。
おさらいですが、系統(けいとう)とは送電線網のことです。
よくわからない方は、10月16日の<再生可能エネルギーへの系統「接続拒否」を読む>をお読みください。
コミュニティーパワー3原則
今回の全国フォーラムの大きなテーマは、金沢市とのコラボということもあって、「自治体との連携」でした。
ただ単に、自治体が再生可能エネルギー普及に頑張る!というレベルの話ではなく、市民が行おうとする再生可能エネルギー事業と行政=自治体がどう連携するのかということです。
市民が行う事業というのは「コミュニティーパワー」という表現もあります。
ドイツ、デンマーク、スペインなどでは、再生可能エネルギーの事業に大きな原則を求めています。
一つは地域の住民がその事業に出資していること。
二つ目は地域の住民が事業に対する決定権を保証されていること。
三つ目は事業の利益が地域に還元されること。
コミュニティパワー3原則とも呼ばれます。
日本のFITでは、巨大企業が地方の土地を取得し、自分のお金を投資してメガソーラーを作るなんてことが当たり前にですが、この3原則に照らすなら、そんなことは認められません。
太陽も風も水も、もちろん地熱も森林や家畜糞尿などのバイオマス資源も、みんなその地域のものです。
ただ土地を取得したからといって、その地域資源を勝手に持ち出して、お金に替えて自分のふところに入れるなんてことはあってはならないのです。
それは、広大な土地を買いあさって、巨大な原子力発電所を建てて、大量の電気を売って、そのお金を自分のふところに入れるという構図とほとんど変わらないでしょう。
原子力は土地の収奪ですが、メガソーラーは太陽資源という土地に固有の資源まで収奪するのですから、よけい悪い!というべきかも知れません。
しかもそれが、今回の「系統接続保留」を引き起こしている、いちばん大きな原因でもあるわけですから、制度設計者は、真剣にこの3原則の適用を考えるべきです。
その制度設計者である、経産省の村上元新エネルギー対策課長(現在は内閣官房まち・ひと・しごと創生本部 内閣参事官)が講演を引き受け、この悪徳業者の設備認定を阻止できなかった・・、あるいはここで食い止めた・・という裏話を披露されたことも、ちょっと象徴的でした。
村上さんの話は、「バンカビリティ」と「リテラシー」に集約されるかなと思います。
「バンカビリティ」とは「さいころの目と同じ」ということ。
太陽光発電はだれが作っても、ほとんど変わらない。ダメなのが3%とすれば、それはまず一定。
やればやるほど、作れば作るほど、確率は3%に近づく。
だから太陽光発電は、作ったほうが「安定」的になるから、金融機関はお金を貸したくてしょうがない状態になった(このあたり、実態とはちょっと違う気もしますが。)
これが「バンカビリティ」。
それに比べて、とくにバイオマスは、みんな「我こそが」と違う方法でやるために、いつまでたっても「バンカビリティ」ができない。
だから金融機関は危なくて手が出せない・・。
「リテラシー」とは「理解力」とでも翻訳すれば良いでしょうか?
再生可能エネルギーの地域エネルギー事業を担うものは、それなりの専門性、事業化としての自覚が問われるよということです。
その点が甘すぎる・・ので、悪徳業者や資産収奪の大企業にやすやすと資源を持ち出されるんじゃないのとという指摘です。
これは市民電力の担い手にも耳の痛い話です。
その地域の「コミュニティパワー」の担い手のリテラシーが低いから、自治体からも金融機関からも信用されず、結果大企業に有利な状況を作っているのかも知れません。
再生可能エネルギー事業と地域活性化
金沢での全国フォーラムで、もう一つ目立ったのが「地域再生」です。
基調講演の和田武先生の話には、再生可能エネルギー事業によって、地域の経済そのものを活性化させたいろいろな地域の話が出てきました。
たしか「パワーツーザピープル」という映画にも出てきた、ドイツのローデンス村やフリードリッヒ・ビルヘルム・リューベック村などの話は、まあ海外ならあり得るか・・という感じで聞いていたのですが、日本でも北海道の寿都町(すっつちょう)や高知県梼原町(ゆすはらちょう)のように、再生可能エネルギー事業を軸に町を活性化させ、人口減少を上昇に転じたり、赤字だった財政を黒字に転じたりする自治体が日本でも実際にあるという事実です。
今回メインステージのパネルディスカッションと、2日目の第3分科会にご登場いただいた、岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)地区の取り組みも、まさに人口復活の実例でした。
もともと「環境のため」ではなく「廃校寸前の小学校」を存続させるためのあの手この手の一つが、たまたま水力発電だったのです。
特産品開発や空家提供、青空学校やカフェなどの中に、マイクロ水力というのもありました。
そもそも、地元の人から出てきたというより、よそ者が押し掛けて提案していたものばかりで、最初地元は冷ややかだったとか。
しかし、マイクロ水力が動き出し、人が見に来る・・みたいなところから、地元の人も「やればできるんではないかな」となってきたそうです。
そこで、さらに大きな発電事業を行うために「専門農協」を作りました。
正式には「石徹白農業用水農業協同組合」というようです。土地改良事業として、農業用水の改修管理・水力発電所の建設をやります。
岐阜県も郡上市も応援してくれることになり、二つの小水力発電、合計で170kWができます。
いまは子どもも増え、学校は存続し、移住者も入りはじめ、まさに人口増加に転じてきたそうです。
この石徹白のもう一つの特徴は、ほとんどを自前でやるということでした。
発電所づくりから、電線の管理まで、すべて住民の中に、その力を持った人材がいるのだとか。
市民の電力小売会社と配電網奪還
最後にもう一つ、私が担当した第3分科会のテーマは「地産地消による電力小売供給」でした。
電力システム改革が日本でもいちおう進められており、2015年には系統=送電線網の広域運用、2016年には電力小売の全面自由化がはじまります。
それを睨むなら、2016年には地域で発電した電気を地域で使うということが、名実ともに実現する可能性があります。
それを見越して、市民側でどんなことができるのか情報共有をというのが、この分科会の目的でした。
最初に私の方で、いまの日本の電力供給の問題点と現在進められている「電力システム改革」の内容をかいつまんで説明しました。
続いて、足温ネットの山崎さんから、日本で唯一、地域の協同組合による電力供給ができている屋久島の事例を紹介してもらいました。
もともと水が豊富で、水力発電だけで島の電気をまかなえる環境があることに加え、屋久島電工という会社が、自社の生産のために58,500kWの水力発電所をつくり、その電気を島民に供給するという契約があるために、九州電力から独立した「ローカルグリッド」ができ上がっています。
電気事業法によって、屋久島電工が直接電力供給をすることはできませんので、電気利用組合等の三つの協同組合ができ、屋久島電工からは電気事業法17条の「特定供給」に基づいて、三つの協同組合に電力供給、協同組合側は「共同受電」という方法で、電気を受けて集落側の各家庭に配電しています。
これができるということは、他の地域でも、再生可能エネルギー発電所が、地域の「協同組合」に特定供給し、共同受電のかたちで、地域内の各戸に配電をすることができるはずだということです。
これは、今でもできるはずのことですが、電力の全面自由化になれば、「特定供給」も「共同受電」も実は不要になります。
再生可能エネルギー発電所が「新電力」になる、もしくは地域の人たちが共同で、協同組合のような形で「新電力」をつくる、そこから直接に各戸へ配電をできることになります。
このもっとも近いところにいるのが「石徹白」です。
石徹白で建設中の事業用小水力発電所がすべて動き出す頃には、住民による「石徹白電力」ができて、電力小売供給を開始できるかも知れません。
石徹白も、十分にそれを意識して進めているということでした。
すでに1年前に、パルシステムの集配センターなどの高圧受電契約施設を対象に、電力小売を開始した「うなかみの大地」からは、100%再生可能エネルギー電気の需要はあっても、供給側が圧倒的に足りないという話がされました。
30分同時同量とか、厳しい制約はあるが、需要の動きは比較的想定が可能で、問題は供給側を以下に安定的に確保できるかで、小水力やバイオマスの発電所がもっと必要ということでした。
九州電力が送電放棄した屋久島でも、北陸電力管内だが山越えで管理が大変な石徹白でも、各戸への配電網の管理は地域の人がやっているそうです。
屋久島はすでにそうですが、石徹白では、配電網を買い取ってしまったほうがお互い(電力会社も住民も)に楽。
それを実現したら、大きな実績になりますし、いまドイツで起こっている「配電網をとりもどそう」という住民の運動に、まさに日本が追いついたということになります。
FITから3年経って、気がついたらドイツの最先端と並んでいた・・なんてすごいことですね。
発電原価に輸送コストの「距離原価」
第3分科会の議論の中では、いろいろ有意義な提案、問題提起が出されていましたが、その中の一つ「距離原価」という考え方にスポットを当ててみます。
冒頭で書きましたように、コミュニティ3原則を前提にしてスタートしなかった日本のFITでは、メガソーラー適地が大企業の草刈り場となり、おそらく実現可能な適地はすでに海外資本を含む大企業に押さえられている可能性があります。
もちろんその半分も実際には稼働までにいたっておらず、今回の「系統接続保留」でストップをかけられているところも多いのです。
これは良い機会なので、稼働を認めるにあたって、地域への利益還元を条件とするいくつかの施策を入れてみてはいかがでしょうか。
まず完全な「よそ者ソーラー」。そんなものの中には地域から反対運動を起こされているものもあります。
少なくとも利益の50%以上は地域に戻すこと・・というのはどうでしょうか?
実際に環境破壊をしたり、経済的損害を出しているものは、その弁済なり建設中止なりが当然ですが、まあ建設は認められるが、100%の資源収奪は許しがたいという場合は、まず地域への還元です。
さらに地域では、住民による電気利用協同組合を設立し、メガソーラーから生み出された電気は、基本的に地域供給しか認めないことにするというのはどうでしょう。
住民による電気利用協同組合は「新電力」登録し、基本的にFIT価格で電気を引き取り、地域住民に供給した後、たとえば九州電力に売電します。
九州電力には「余り」しか出て行かないので、いきなり大量の電気の供給先を見つける必要がなくなります。
ただし、メガソーラー側は、買取代金の決済を、住民の新電力が小売代金を受け取るまで猶予する必要があります。
「よそ者ソーラー」の場合、「距離原価」を徴収することにしましょうという意見も出ました。
「距離原価」の考え方が、まだはっきりと理解できていないのですが、電気を発電した場所と消費した場所が遠ければ遠いほど、送電コストをかけていることになるので、その応分の負担をすべきというのが基本的考え方のように思えます。
しかし、それ自身は、よく考えると「託送料金」そのものです。
今でも、複数の電力会社管内を通過して電気をやり取りすると、それなりに高くなるので距離による原価を取られているようにも思えます。
一方で、これを激しく厳密にすると、北海道や九州の電気を大需要地で使おうとするインセンティブを低くすることになり、逆効果です。
とすると「距離原価」の真の意味は?
発電所の位置と発電事業者の本社の距離。
地域の住民が主体になって事業を立ち上げた場合はゼロ。
東京の事業者が九州で発電所を造るときには、距離×「距離原価」と計算します。
これは新電力が払って、電気の需要者側に負担をさせるものであってはならないはずで、遠くまでやってきて資源を収奪する事業者に対するペナルティとしての正確を持たせるべきです。
厳密に何かの根拠数字から算出されるというよりは、地方協力税のような意味で1kWhあたり1円というのではどうでしょう。
1メガなら100万円程度でささやかですが、30メガとかになると3000万円と豪華な額になります。
これで地域の街おこし事業や、人材育成費用などの原資にしてはいかがでしょうか。
この「地域・市民共同発電所全国フォーラムには二日間に延べで350人が参加、最後の締めの挨拶は山野之義市長ご本人でした。
トップが再生可能エネルギー事業を応援というのは、市民側にとっては心強い限りです。
この全国フォーラムの地元実行委員会を担ってくださった、「合同会社 金沢市民発電所」、「NPO市民環境プロジェクト」の皆さんにも、おおきな感謝とますますの発展を期待したいと思います。
金沢市民発電所
http://kanazawa-cps.com
市民環境プロジェクト
http://homepage3.nifty.com/shiminkankyopj/project.html
来年の開催場所は決まっていませんが、必ずどこかの自治体が手を上げて誘致開催されるものと思います。
25日に、金沢市企業局所有の小水力発電を見に行きましたが、残念ながら取水口を子供たちが見学ということで、「安全のため」水が止めてあり、ごうごうとまわる水車を見ることはできませんでした。
申しわけに「解説パネル」の写真を載せておきます。
ぶらり紅葉の金沢兼六園
10月24日(金)と25日(土)は、金沢市で地域・市民共同発電所全国フォーラムが開催されました。
2002年に最初に滋賀県で開催され、以後、横浜市、大阪市、京都市などで5回開催され、今回が第6回目となります。
昨年は京都の龍谷大学で開催され、ちょうど固定価格買取制度(FIT=フィットと読みます。)がはじまって、市民が作る小規模の共同発電所も電気の20年間定額買取によって事業採算性が十分に見えてきたという高揚の中での開催でした。
今年は、開催地域に石川県の金沢市が名乗りを上げ、金沢文化ホールでの開催になりました。
ただ、今年の状況は、FITの太陽光発電の買取価格が年々下がり、メガソーラーはさておき、市民が作る小規模共同発電所にとっては事業採算が取れなくなるようなラインになりそうなこと。さらに、例の再生可能エネルギー発電設備の「系統への接続保留問題」が起こったまっただ中での開催となりました。
おさらいですが、系統(けいとう)とは送電線網のことです。
よくわからない方は、10月16日の<再生可能エネルギーへの系統「接続拒否」を読む>をお読みください。
コミュニティーパワー3原則
今回の全国フォーラムの大きなテーマは、金沢市とのコラボということもあって、「自治体との連携」でした。
ただ単に、自治体が再生可能エネルギー普及に頑張る!というレベルの話ではなく、市民が行おうとする再生可能エネルギー事業と行政=自治体がどう連携するのかということです。
市民が行う事業というのは「コミュニティーパワー」という表現もあります。
ドイツ、デンマーク、スペインなどでは、再生可能エネルギーの事業に大きな原則を求めています。
一つは地域の住民がその事業に出資していること。
二つ目は地域の住民が事業に対する決定権を保証されていること。
三つ目は事業の利益が地域に還元されること。
コミュニティパワー3原則とも呼ばれます。
日本のFITでは、巨大企業が地方の土地を取得し、自分のお金を投資してメガソーラーを作るなんてことが当たり前にですが、この3原則に照らすなら、そんなことは認められません。
太陽も風も水も、もちろん地熱も森林や家畜糞尿などのバイオマス資源も、みんなその地域のものです。
ただ土地を取得したからといって、その地域資源を勝手に持ち出して、お金に替えて自分のふところに入れるなんてことはあってはならないのです。
それは、広大な土地を買いあさって、巨大な原子力発電所を建てて、大量の電気を売って、そのお金を自分のふところに入れるという構図とほとんど変わらないでしょう。
原子力は土地の収奪ですが、メガソーラーは太陽資源という土地に固有の資源まで収奪するのですから、よけい悪い!というべきかも知れません。
しかもそれが、今回の「系統接続保留」を引き起こしている、いちばん大きな原因でもあるわけですから、制度設計者は、真剣にこの3原則の適用を考えるべきです。
その制度設計者である、経産省の村上元新エネルギー対策課長(現在は内閣官房まち・ひと・しごと創生本部 内閣参事官)が講演を引き受け、この悪徳業者の設備認定を阻止できなかった・・、あるいはここで食い止めた・・という裏話を披露されたことも、ちょっと象徴的でした。
村上さんの話は、「バンカビリティ」と「リテラシー」に集約されるかなと思います。
「バンカビリティ」とは「さいころの目と同じ」ということ。
太陽光発電はだれが作っても、ほとんど変わらない。ダメなのが3%とすれば、それはまず一定。
やればやるほど、作れば作るほど、確率は3%に近づく。
だから太陽光発電は、作ったほうが「安定」的になるから、金融機関はお金を貸したくてしょうがない状態になった(このあたり、実態とはちょっと違う気もしますが。)
これが「バンカビリティ」。
それに比べて、とくにバイオマスは、みんな「我こそが」と違う方法でやるために、いつまでたっても「バンカビリティ」ができない。
だから金融機関は危なくて手が出せない・・。
「リテラシー」とは「理解力」とでも翻訳すれば良いでしょうか?
再生可能エネルギーの地域エネルギー事業を担うものは、それなりの専門性、事業化としての自覚が問われるよということです。
その点が甘すぎる・・ので、悪徳業者や資産収奪の大企業にやすやすと資源を持ち出されるんじゃないのとという指摘です。
これは市民電力の担い手にも耳の痛い話です。
その地域の「コミュニティパワー」の担い手のリテラシーが低いから、自治体からも金融機関からも信用されず、結果大企業に有利な状況を作っているのかも知れません。
再生可能エネルギー事業と地域活性化
金沢での全国フォーラムで、もう一つ目立ったのが「地域再生」です。
基調講演の和田武先生の話には、再生可能エネルギー事業によって、地域の経済そのものを活性化させたいろいろな地域の話が出てきました。
たしか「パワーツーザピープル」という映画にも出てきた、ドイツのローデンス村やフリードリッヒ・ビルヘルム・リューベック村などの話は、まあ海外ならあり得るか・・という感じで聞いていたのですが、日本でも北海道の寿都町(すっつちょう)や高知県梼原町(ゆすはらちょう)のように、再生可能エネルギー事業を軸に町を活性化させ、人口減少を上昇に転じたり、赤字だった財政を黒字に転じたりする自治体が日本でも実際にあるという事実です。
今回メインステージのパネルディスカッションと、2日目の第3分科会にご登場いただいた、岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)地区の取り組みも、まさに人口復活の実例でした。
もともと「環境のため」ではなく「廃校寸前の小学校」を存続させるためのあの手この手の一つが、たまたま水力発電だったのです。
特産品開発や空家提供、青空学校やカフェなどの中に、マイクロ水力というのもありました。
そもそも、地元の人から出てきたというより、よそ者が押し掛けて提案していたものばかりで、最初地元は冷ややかだったとか。
しかし、マイクロ水力が動き出し、人が見に来る・・みたいなところから、地元の人も「やればできるんではないかな」となってきたそうです。
そこで、さらに大きな発電事業を行うために「専門農協」を作りました。
正式には「石徹白農業用水農業協同組合」というようです。土地改良事業として、農業用水の改修管理・水力発電所の建設をやります。
岐阜県も郡上市も応援してくれることになり、二つの小水力発電、合計で170kWができます。
いまは子どもも増え、学校は存続し、移住者も入りはじめ、まさに人口増加に転じてきたそうです。
この石徹白のもう一つの特徴は、ほとんどを自前でやるということでした。
発電所づくりから、電線の管理まで、すべて住民の中に、その力を持った人材がいるのだとか。
市民の電力小売会社と配電網奪還
最後にもう一つ、私が担当した第3分科会のテーマは「地産地消による電力小売供給」でした。
電力システム改革が日本でもいちおう進められており、2015年には系統=送電線網の広域運用、2016年には電力小売の全面自由化がはじまります。
それを睨むなら、2016年には地域で発電した電気を地域で使うということが、名実ともに実現する可能性があります。
それを見越して、市民側でどんなことができるのか情報共有をというのが、この分科会の目的でした。
最初に私の方で、いまの日本の電力供給の問題点と現在進められている「電力システム改革」の内容をかいつまんで説明しました。
続いて、足温ネットの山崎さんから、日本で唯一、地域の協同組合による電力供給ができている屋久島の事例を紹介してもらいました。
もともと水が豊富で、水力発電だけで島の電気をまかなえる環境があることに加え、屋久島電工という会社が、自社の生産のために58,500kWの水力発電所をつくり、その電気を島民に供給するという契約があるために、九州電力から独立した「ローカルグリッド」ができ上がっています。
電気事業法によって、屋久島電工が直接電力供給をすることはできませんので、電気利用組合等の三つの協同組合ができ、屋久島電工からは電気事業法17条の「特定供給」に基づいて、三つの協同組合に電力供給、協同組合側は「共同受電」という方法で、電気を受けて集落側の各家庭に配電しています。
これができるということは、他の地域でも、再生可能エネルギー発電所が、地域の「協同組合」に特定供給し、共同受電のかたちで、地域内の各戸に配電をすることができるはずだということです。
これは、今でもできるはずのことですが、電力の全面自由化になれば、「特定供給」も「共同受電」も実は不要になります。
再生可能エネルギー発電所が「新電力」になる、もしくは地域の人たちが共同で、協同組合のような形で「新電力」をつくる、そこから直接に各戸へ配電をできることになります。
このもっとも近いところにいるのが「石徹白」です。
石徹白で建設中の事業用小水力発電所がすべて動き出す頃には、住民による「石徹白電力」ができて、電力小売供給を開始できるかも知れません。
石徹白も、十分にそれを意識して進めているということでした。
すでに1年前に、パルシステムの集配センターなどの高圧受電契約施設を対象に、電力小売を開始した「うなかみの大地」からは、100%再生可能エネルギー電気の需要はあっても、供給側が圧倒的に足りないという話がされました。
30分同時同量とか、厳しい制約はあるが、需要の動きは比較的想定が可能で、問題は供給側を以下に安定的に確保できるかで、小水力やバイオマスの発電所がもっと必要ということでした。
九州電力が送電放棄した屋久島でも、北陸電力管内だが山越えで管理が大変な石徹白でも、各戸への配電網の管理は地域の人がやっているそうです。
屋久島はすでにそうですが、石徹白では、配電網を買い取ってしまったほうがお互い(電力会社も住民も)に楽。
それを実現したら、大きな実績になりますし、いまドイツで起こっている「配電網をとりもどそう」という住民の運動に、まさに日本が追いついたということになります。
FITから3年経って、気がついたらドイツの最先端と並んでいた・・なんてすごいことですね。
発電原価に輸送コストの「距離原価」
第3分科会の議論の中では、いろいろ有意義な提案、問題提起が出されていましたが、その中の一つ「距離原価」という考え方にスポットを当ててみます。
冒頭で書きましたように、コミュニティ3原則を前提にしてスタートしなかった日本のFITでは、メガソーラー適地が大企業の草刈り場となり、おそらく実現可能な適地はすでに海外資本を含む大企業に押さえられている可能性があります。
もちろんその半分も実際には稼働までにいたっておらず、今回の「系統接続保留」でストップをかけられているところも多いのです。
これは良い機会なので、稼働を認めるにあたって、地域への利益還元を条件とするいくつかの施策を入れてみてはいかがでしょうか。
まず完全な「よそ者ソーラー」。そんなものの中には地域から反対運動を起こされているものもあります。
少なくとも利益の50%以上は地域に戻すこと・・というのはどうでしょうか?
実際に環境破壊をしたり、経済的損害を出しているものは、その弁済なり建設中止なりが当然ですが、まあ建設は認められるが、100%の資源収奪は許しがたいという場合は、まず地域への還元です。
さらに地域では、住民による電気利用協同組合を設立し、メガソーラーから生み出された電気は、基本的に地域供給しか認めないことにするというのはどうでしょう。
住民による電気利用協同組合は「新電力」登録し、基本的にFIT価格で電気を引き取り、地域住民に供給した後、たとえば九州電力に売電します。
九州電力には「余り」しか出て行かないので、いきなり大量の電気の供給先を見つける必要がなくなります。
ただし、メガソーラー側は、買取代金の決済を、住民の新電力が小売代金を受け取るまで猶予する必要があります。
「よそ者ソーラー」の場合、「距離原価」を徴収することにしましょうという意見も出ました。
「距離原価」の考え方が、まだはっきりと理解できていないのですが、電気を発電した場所と消費した場所が遠ければ遠いほど、送電コストをかけていることになるので、その応分の負担をすべきというのが基本的考え方のように思えます。
しかし、それ自身は、よく考えると「託送料金」そのものです。
今でも、複数の電力会社管内を通過して電気をやり取りすると、それなりに高くなるので距離による原価を取られているようにも思えます。
一方で、これを激しく厳密にすると、北海道や九州の電気を大需要地で使おうとするインセンティブを低くすることになり、逆効果です。
とすると「距離原価」の真の意味は?
発電所の位置と発電事業者の本社の距離。
地域の住民が主体になって事業を立ち上げた場合はゼロ。
東京の事業者が九州で発電所を造るときには、距離×「距離原価」と計算します。
これは新電力が払って、電気の需要者側に負担をさせるものであってはならないはずで、遠くまでやってきて資源を収奪する事業者に対するペナルティとしての正確を持たせるべきです。
厳密に何かの根拠数字から算出されるというよりは、地方協力税のような意味で1kWhあたり1円というのではどうでしょう。
1メガなら100万円程度でささやかですが、30メガとかになると3000万円と豪華な額になります。
これで地域の街おこし事業や、人材育成費用などの原資にしてはいかがでしょうか。
この「地域・市民共同発電所全国フォーラムには二日間に延べで350人が参加、最後の締めの挨拶は山野之義市長ご本人でした。
トップが再生可能エネルギー事業を応援というのは、市民側にとっては心強い限りです。
この全国フォーラムの地元実行委員会を担ってくださった、「合同会社 金沢市民発電所」、「NPO市民環境プロジェクト」の皆さんにも、おおきな感謝とますますの発展を期待したいと思います。
金沢市民発電所
http://kanazawa-cps.com
市民環境プロジェクト
http://homepage3.nifty.com/shiminkankyopj/project.html
来年の開催場所は決まっていませんが、必ずどこかの自治体が手を上げて誘致開催されるものと思います。
25日に、金沢市企業局所有の小水力発電を見に行きましたが、残念ながら取水口を子供たちが見学ということで、「安全のため」水が止めてあり、ごうごうとまわる水車を見ることはできませんでした。
申しわけに「解説パネル」の写真を載せておきます。
ぶらり紅葉の金沢兼六園
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます