竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

普天間基地問題と「抑止力」という圧力

2010年05月23日 | 政治


沖縄の声に耳を傾けない鳩山総理

鳩山総理は「普天間基地の県内移設」という日米合意を取り交し、今日5月23日に沖縄を訪問、仲井真沖縄県知事と稲嶺名護市長にこれを伝えた。これが鳩山総理がアメリカに約束し続けた「5月決着」だとすれば、あまりにお粗末。事態は沖縄県民にとってもアメリカにとっても一歩も前進していない。
辺野古をめぐる「住民合意」は稲嶺市長の当選で以前より確実に遠のいているし、以前は「推進」に傾いていた沖縄県知事やその周辺まで反対に固まった。そういう団結をつくり出した功労者は、選挙で「県外・国外移設」を叫び続けた鳩山総理自身だ。
さらに「沖縄の負担の肩代わり」を叫び、徳之島という新たなハードルをつくった。困難な問題は力を一点に集中して突破するのが鉄則と思うが、まったく逆の展開で、普天間基地の撤去は限りなく遠のいたと考えるべきである。
沖縄では先週の5月16日大雨の沖縄で普天間基地を取り囲む「人間の鎖」が実施された。激しい雨の中にもかかわらず、行動には1万7千人が参加した。これに先立つ4月25日には「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と、県内移設に反対し、国外・県外移設を求める県民大会」が開催され、9万人が参加した。徳之島でも4月18日に1万5千人が参加しての反対集会が開かれ、反対の声はますます大きく強くなっている。

なぜこんな迷走をしているのか。それは私が「新党乱立の中で普天間基地移設問題を考える」で書いたとおり、最初にアメリカに「ノー」を言わなかったため。せめて今からでも、その原点に立ち戻ることを期待したが、どうもハナからそんな考えは無いようだ。それどころか今ごろになって、「抑止力の観点から海外移設は難しい。勉強不足だった。」と言い出す始末だ。

米海兵隊と抑止力

海兵隊については5月10日の東京新聞で、「抑止力になってる?」と題して編集委員の半田さんが書かれている。在沖縄海兵隊の兵員定数は1万8千人で、すでにそのうち8千人のグアム移転が決まっている。残りは1万人かというとそうではない。沖縄に実際にいる海兵隊員は1万2千人程度で、8千人が引き上げると4千人程度しか残らない。4千人はどこにいるのかというとイラクとアフガニスタンである。今後も戦闘が続くとすれば、その程度の駐留が抑止力になるのかという問いである。

海兵隊が防衛のための軍隊ではなく攻撃のための軍隊であることはよく知られている。陸海空軍とは違う、突撃部隊としての特別の役割を与えられている。敵陣に最初に投入される部隊として、隊員は殺人マシーンとして教育される。人間としての意思が残り、動くものに引き金を引くという動きに躊躇があると命がなくなるという考えだ。殺人マシーンになって、戦地でかろうじて生き残って帰っても、その八割は日常社会に適応できず病気、自殺、ホームレスとなるという。そもそもそんな部隊が必要なのかアメリカの中でも議論となっている。

海兵隊を前提にすれば、むしろ現状の沖縄は出撃拠点としては非常に使い勝手が悪い。普天間基地には港がなく、要員は1時間のトッラク移動をして海に出なければならず、実弾も民家に囲まれた普天間では搭載できず嘉手納で搭載する。アメリカの本音は使い勝手の悪い普天間を早く捨てて、より機能的な基地に移りたいはず。それがグアムやサイパンで可能ならその方が良いはず。
辺野古移設案も、アメリカにとっては機能性の高い新基地建設計画以外の何者でもない。鳩山総理の言う「桟橋方式の短い滑走路」と「徳之島での実弾演習」では何のメリットもない。実は50年前の大村湾軍港計画がそのまま、従来の辺野古移設案には盛り込まれていた。V字型滑走路もその原案のものだ。

エコノミスト5月号では沖縄国際大学の佐藤学教授がやはり抑止力のことを取りあげている。そこで在沖縄海兵隊が朝鮮半島有事のための突撃部隊とする主張に対し、事実上4千人程度の兵員では有事には対応できないとしつつ、海兵隊がいるのに朝鮮半島有事が引き起こされるという主張は、そもそも海兵隊が「抑止力」にならないことを示していると書いている。

鳩山総理はいったい何を勉強したのか

「沖縄に負担の継続をお願いする」理由としては「海兵隊の抑止力」はあまりにお粗末な説明なのである。抑止力について不勉強だったとは、いったい何を勉強したのだろう。政府としての結論を出す前に、まず沖縄の声を何度でも聞きに行き、これまでの方針をつくって来たのではない人たちからじっくりと情報を入れるべきだったのではないか。
そのような根回しを本来行なうべきは官房長官である。しかし残念ながら、現政権の平野官房長官は鳩山総理よりもひどい。これまで平野氏が政策通であったという話しは聞いたことがない。何も知らない、何も勉強しないのに「決定」だけは出そうとする。今の徳之島への対応は、原発立地を画策する電力会社が地元議会や首長に対応する手法と一緒である。個別撃破で推進派をつくって行く。手みやげはふんだんに使える官房機密費がある。今年度は14億円強となっている。
鳩山総理は少なくとも「友愛精神は反対する人の心をお金で切り崩すことではない」と宣言すべきであろう。事実上は何の意味もない「5月決着」を問題にするのであれば、まずは官房長官に責任を取らせ、もう一度アメリカへの「仕切り直し」の通告からやり直すことであろう。それができないなら、自分の首を切るしかあるまい。


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1 コメント

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社民党は政権内で踏ん張るべき (竹村英明)
2010-05-26 08:09:37
マスコミ等の社民党への政権離脱誘導が激しくなっている。曰く「政権にしがみつくのか」、いわく「地方からの突き上げ」・・・。しかし、実際には、社民党が政権離脱した瞬間に「辺野古への強制」が固まる。だから、何が何でも離脱してはいけない。福島党首の沖縄訪問は、それはそれで良いが、もっと閣内で話をすべきだと思う。亀井大臣とはもっと共闘すべきだし、前原、原口などの若手大臣や、菅、仙石両大臣などなど、閣内での慎重派を増やすべき。辺野古は無理と言っている北沢防衛大臣とも会うべき。
元社民党の輿石参議院議員会長や高島副幹事長にも働きかけが功を奏しているようだが、さらに生方議員など「民主党内良識派」との密かな共闘ルートもつくるべき。
まだまだやれることはいっぱいあるし、それがやれるのは、いまは社民党しかない。こんなに存在感が増しているときはなく、頑張れば頑張るだけ成果もある。ゆめゆめ、政権からの安易な離脱はしないでほしい。
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