普天間基地移設問題は選挙中の公約(公言と言っても良いが)に反して、従来案とほとんど変わらない(それに徳之島までつけた)政府案にまとめてしまった鳩山総理に対して、最後まで合意しなかった福島消費者少子化担当大臣を罷免して連立政権のドラマが終了した。
社民党の大臣を罷免すれば連立が崩壊することは明らかだったろうに、鳩山総理はいとも簡単に罷免を決めた。オバマ大統領への「トラストミー」にはじまって、「辺野古の海を埋め立てることは自然への冒涜」と語り、突如「徳之島」を持出し、そして今回の軽々しい罷免。鳩山総理は、どうもそのあとに起こることがほとんど想像できない人間のようだ。
この支持率低迷の中で、少なくとも社民党勢力のまだ強い東北や九州、そして微妙な関西などで民主党も社民党も参院選は苦労することになるだろう。
外敵からの脅威はどこに存在するか
さて鳩山さんが「勉強不足だった」と語り、連立を壊してまでこだわった「抑止力」とは、その抑止力を必要とする国家の防衛とは何なんだろう。今回は大きなテーマを考えてみたい。
防衛というからには「敵」が要る。「居る」ではなく「要る」と書いたところがポイントである。目の前に攻撃してくる国があれば、それにどうするかは議論の余地はあまりない。誰も攻撃して来ないが、攻撃してくるかも知れない国があると考えるから「防衛」する力を養ったり、他国の力を借りた「抑止力」も必要になる。
日本に取って当面の敵は誰。おそらく、言うまでもなく「北朝鮮」だろう。経済力は日本の何十分の1、軍事力でも自衛隊の装備には遠く及ばず、国民は経済政策の失敗や冷害などなどで疲弊しきっている国が、日本の最大の仮想「敵」。
現実はと言うと北朝鮮経済(人々の暮らし)はかなりの部分を日本に依拠していると言われる。パチンコをはじめとする在日の人たちの産業、帰国政策で北朝鮮へ移住した(実際はそこで生まれた人ではないケースがほとんどという)人々への送金、松茸に象徴される交易などなど、民間資金とは言え北朝鮮経済を支えている。
その日本を攻撃し民間資金を断つことは自滅行為にも思える。日本人拉致はとんでもない行為だが、それと日本経済を壊滅させる攻撃とは考えていないだろう。軍事というよりはチュチェ思想の宣伝工作活動で、オウム真理教が自己の正統性を信じるあまりに他者の大量殺戮にも無頓着になった感覚に似ている。
日本を大量破棄兵器などで軍事的な攻撃をして経済を崩壊させると最も困る国、それが北朝鮮ではないかとも思える。それが軍事における「仮想敵」だとすると防衛戦略そのものが誤ったものにならないだろうか?
世界で最も軍事的脅威となる国
これは言うまでもなくアメリカである。その次にロシア、中国だろうか。日本は70年ほど前にアメリカに戦争を仕掛け、原爆,東京大空襲、沖縄戦、南方戦線での玉砕など、まさに壊滅的な破壊を経験した国である。アメリカが怖いというトラウマが政策の中にDNAとして存在していることは否定できない。
日米講和条約で敗者となって占領軍を受け入れ、日米安保で占領状態を日常化し、沖縄返還協定で占領軍の経費全面負担を約束した。アメリカの圧倒的優位な軍事力の前に、「密約」までして従属と屈服を貫いて来た。それは相当にフラストレーションを溜め続ける行為でもある。
70年前の日米開戦も、いわば日本の先生のような大国への「追いつめられた爆発」だった。アジアにおける軍事拠点をつくるためのアメリカの計画的な「追いつめ」であったかもしれないが、当時の政府はそれに乗せられた。いま「ノー」と言えない日本も、同盟国だ盟友だと持ち上げられながら、中国中心のアメリカ外交の中で、日本の存在は軽いものになりつつある。こんなに貢献して来たのに・・、というアメリカに対する国民意識の爆発がむしろ怖い。
中国はどうか。こちらは今でも日本に気を許してはいない。いつまた軍事的な脅威となり、大陸への侵略を開始するかもわからないと。しかし日本経済も、今やアメリカ以上に中国市場に依存している。中国が成長することが日本にも成果をもたらす。かつての中国需要は日本人が中国を支配し、そこでの産業をつくり出すことで産み出されていたが、今は中国人自身の手で産み出されている。この点が大きな違いだ。
日本との領土問題を抱えるのは、この中国のほかに韓国、台湾、ロシアがある。ほとんど資源争奪の舞台とはなりそうにない北方領土は、その帰属問題よりも交流の方が課題のように見える。かつて日本人が住んでいたところに、今はロシア人が住んでいる。パレスチナのガザ地区のような状況が日本にもあるのだ。すでに人々の生活は成立しているのだから、土地や財産を返せ返さぬの問題ではないだろう。双方の人が交流し、いつでも実家に帰るように迎えられる環境の整備ではないだろうか。
韓国は日本より北朝鮮との緊張が大きい。ここ数年の太陽政策に対し李ミョンバク政権がスタンスを変えたことから緊張が高まっている。今回の哨戒船沈没事件も真偽のほどは不明だが、再び朝鮮戦争勃発かというくらいに一触即発状態にある。いま開戦となったとして、北朝鮮にどれほどの戦闘能力があるとも思えないが、最初に飛び道具のノドンなりが韓国に飛んでくることはあり得るだろう。その危険をおかしても、一気に北朝鮮を併合しようと考えているのか、鳩山総理と同じように「あとのことを考えない」パフォーマンスなのか。
ちなみに南北朝鮮が開戦しても、米海兵隊がイラクとアフガニスタンから兵力を引いて北朝鮮に投入することは難しい。沖縄に残る4000人では(それだけでもすごい人数だが)突撃はできないのだそうだ。そうするとかなり熾烈な長期戦になり、せっかく安定して上り調子の韓国経済はどうなるのだろう。他国の軍事部門にものを売って稼いでるときは良いが、自分が当事者になると戦費支出がかさむばかりだ。
台湾も主要な敵は中国だ。強大な大国となった中国と戦争するという選択はもうないだろう。独自性、存在感を失わないように、独立国としてどうやって生き延びていけるかを探っているだろう。詳しいデータは知らないが、もしかしたら発展する中国経済の後ろ盾は台湾華僑勢力なのかもしれない。
こうして見てみると、向こうから日本を敵視し戦争を仕掛けてメリットのある国が存在するのかという疑問が大きくなるばかりである。
以下、続く
次回以降の予告見出し
日米安保の存在意味(対アジアの観点から)
国土防衛の観点と自衛隊の兵力
憲法第9条の果たす役割
日本外交に欠けているもの
などなど、外交政策崩壊の今、日本の防衛を根本から考えてみたい。
社民党の大臣を罷免すれば連立が崩壊することは明らかだったろうに、鳩山総理はいとも簡単に罷免を決めた。オバマ大統領への「トラストミー」にはじまって、「辺野古の海を埋め立てることは自然への冒涜」と語り、突如「徳之島」を持出し、そして今回の軽々しい罷免。鳩山総理は、どうもそのあとに起こることがほとんど想像できない人間のようだ。
この支持率低迷の中で、少なくとも社民党勢力のまだ強い東北や九州、そして微妙な関西などで民主党も社民党も参院選は苦労することになるだろう。
外敵からの脅威はどこに存在するか
さて鳩山さんが「勉強不足だった」と語り、連立を壊してまでこだわった「抑止力」とは、その抑止力を必要とする国家の防衛とは何なんだろう。今回は大きなテーマを考えてみたい。
防衛というからには「敵」が要る。「居る」ではなく「要る」と書いたところがポイントである。目の前に攻撃してくる国があれば、それにどうするかは議論の余地はあまりない。誰も攻撃して来ないが、攻撃してくるかも知れない国があると考えるから「防衛」する力を養ったり、他国の力を借りた「抑止力」も必要になる。
日本に取って当面の敵は誰。おそらく、言うまでもなく「北朝鮮」だろう。経済力は日本の何十分の1、軍事力でも自衛隊の装備には遠く及ばず、国民は経済政策の失敗や冷害などなどで疲弊しきっている国が、日本の最大の仮想「敵」。
現実はと言うと北朝鮮経済(人々の暮らし)はかなりの部分を日本に依拠していると言われる。パチンコをはじめとする在日の人たちの産業、帰国政策で北朝鮮へ移住した(実際はそこで生まれた人ではないケースがほとんどという)人々への送金、松茸に象徴される交易などなど、民間資金とは言え北朝鮮経済を支えている。
その日本を攻撃し民間資金を断つことは自滅行為にも思える。日本人拉致はとんでもない行為だが、それと日本経済を壊滅させる攻撃とは考えていないだろう。軍事というよりはチュチェ思想の宣伝工作活動で、オウム真理教が自己の正統性を信じるあまりに他者の大量殺戮にも無頓着になった感覚に似ている。
日本を大量破棄兵器などで軍事的な攻撃をして経済を崩壊させると最も困る国、それが北朝鮮ではないかとも思える。それが軍事における「仮想敵」だとすると防衛戦略そのものが誤ったものにならないだろうか?
世界で最も軍事的脅威となる国
これは言うまでもなくアメリカである。その次にロシア、中国だろうか。日本は70年ほど前にアメリカに戦争を仕掛け、原爆,東京大空襲、沖縄戦、南方戦線での玉砕など、まさに壊滅的な破壊を経験した国である。アメリカが怖いというトラウマが政策の中にDNAとして存在していることは否定できない。
日米講和条約で敗者となって占領軍を受け入れ、日米安保で占領状態を日常化し、沖縄返還協定で占領軍の経費全面負担を約束した。アメリカの圧倒的優位な軍事力の前に、「密約」までして従属と屈服を貫いて来た。それは相当にフラストレーションを溜め続ける行為でもある。
70年前の日米開戦も、いわば日本の先生のような大国への「追いつめられた爆発」だった。アジアにおける軍事拠点をつくるためのアメリカの計画的な「追いつめ」であったかもしれないが、当時の政府はそれに乗せられた。いま「ノー」と言えない日本も、同盟国だ盟友だと持ち上げられながら、中国中心のアメリカ外交の中で、日本の存在は軽いものになりつつある。こんなに貢献して来たのに・・、というアメリカに対する国民意識の爆発がむしろ怖い。
中国はどうか。こちらは今でも日本に気を許してはいない。いつまた軍事的な脅威となり、大陸への侵略を開始するかもわからないと。しかし日本経済も、今やアメリカ以上に中国市場に依存している。中国が成長することが日本にも成果をもたらす。かつての中国需要は日本人が中国を支配し、そこでの産業をつくり出すことで産み出されていたが、今は中国人自身の手で産み出されている。この点が大きな違いだ。
日本との領土問題を抱えるのは、この中国のほかに韓国、台湾、ロシアがある。ほとんど資源争奪の舞台とはなりそうにない北方領土は、その帰属問題よりも交流の方が課題のように見える。かつて日本人が住んでいたところに、今はロシア人が住んでいる。パレスチナのガザ地区のような状況が日本にもあるのだ。すでに人々の生活は成立しているのだから、土地や財産を返せ返さぬの問題ではないだろう。双方の人が交流し、いつでも実家に帰るように迎えられる環境の整備ではないだろうか。
韓国は日本より北朝鮮との緊張が大きい。ここ数年の太陽政策に対し李ミョンバク政権がスタンスを変えたことから緊張が高まっている。今回の哨戒船沈没事件も真偽のほどは不明だが、再び朝鮮戦争勃発かというくらいに一触即発状態にある。いま開戦となったとして、北朝鮮にどれほどの戦闘能力があるとも思えないが、最初に飛び道具のノドンなりが韓国に飛んでくることはあり得るだろう。その危険をおかしても、一気に北朝鮮を併合しようと考えているのか、鳩山総理と同じように「あとのことを考えない」パフォーマンスなのか。
ちなみに南北朝鮮が開戦しても、米海兵隊がイラクとアフガニスタンから兵力を引いて北朝鮮に投入することは難しい。沖縄に残る4000人では(それだけでもすごい人数だが)突撃はできないのだそうだ。そうするとかなり熾烈な長期戦になり、せっかく安定して上り調子の韓国経済はどうなるのだろう。他国の軍事部門にものを売って稼いでるときは良いが、自分が当事者になると戦費支出がかさむばかりだ。
台湾も主要な敵は中国だ。強大な大国となった中国と戦争するという選択はもうないだろう。独自性、存在感を失わないように、独立国としてどうやって生き延びていけるかを探っているだろう。詳しいデータは知らないが、もしかしたら発展する中国経済の後ろ盾は台湾華僑勢力なのかもしれない。
こうして見てみると、向こうから日本を敵視し戦争を仕掛けてメリットのある国が存在するのかという疑問が大きくなるばかりである。
以下、続く
次回以降の予告見出し
日米安保の存在意味(対アジアの観点から)
国土防衛の観点と自衛隊の兵力
憲法第9条の果たす役割
日本外交に欠けているもの
などなど、外交政策崩壊の今、日本の防衛を根本から考えてみたい。
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