よんたまな日々

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「汽笛が殺意を誘うとき」

2007年08月27日 | 読書
東京に遊びに来て2日目。今日は、うちの奥さんが以前から観たいと言っていた芝居、劇団フーダニットの「汽笛が殺意を誘うとき」を観に行きました。
若竹七海の書き下ろし脚本による、ミステリーものの芝居です。
タワーホール船堀という、貸しホールの小劇場で行われたこの公演ですが、客席は80席程度という本当に小規模なホールで行われたので、演じている俳優さんと視線が合ってしまいそうな距離感で、観ているほうもどきどきしました。

芝居は、昭和17年、日本とロサンジェルスを結ぶ豪華客船「櫻花丸」が舞台。成り上がりの富豪井沢忠信が、昔女中に産ませて見捨てた娘明子との再会を果たし、ともにアメリカ旅行へと向かうが、その船中で出会った泉源寺夫妻や、同行の秘書園部、女中の磯村など、様々な人々の思惑が交錯する中、昭和11年の処女航行の際に起きた不幸な事件の新たな真実が明かされる。

みたいな話です。(やや不正確)
ミステリー物の芝居を観るのは初めてなのですが、小説と違って、目の前で繰り広げられているシーンから、何を拾い出すかは自分の五感なので、そこが予想外に難しかったです。
俳優のちょっとしたしぐさが事件の伏線になっていたりするのですが、それが拾えてなかったり、逆に芝居の途中で劇場に入ってきた人や、後ろで突然泣き出した赤ん坊は芝居の一部ではないのに、そちらを拾ってしまったり。

だから、最後の推理シーンで、全てのわっかが閉じた時、見落としていた情報の多さに愕然としました。推理シーンが終わった後、劇中のキーワードやキーとなったしぐさを再現してくれますが、「うわ!そんなの見ていなかったよ。」というのばかりで、なかなか悔しい思いをしました。
逆にキーでも何でもない場面を思い入れを込めて見ていたりして、しっかりミスリードされたというか、自滅したというか。

小説では味わえないミステリーの新たな楽しさが堪能できました。ちなみに、これ、年末のミステリーチャンネルで放送されるかもしれないとのことなので、楽しみにしています。生では見逃した内容をもう一度チェックできる数少ないチャンスですから。

芝居が終わった後、全ての俳優さんが、ホール出口に集まって、観客を見送ってくれるのですが、劇中の衣装メイクそのままなので、劇と現実の狭間が揺らいで、クラクラしました。
ボーイ長役の人が、ご贔屓の常連さんに、すごく丁寧な物腰で挨拶しているのを見ると、この人はボーイ長じゃなくて、単なる俳優さんなんだと、一生懸命自分に言い聞かせる必要があったり、悪役の人をここで怖がる必要はないんだと気持ちを整理する必要があったり。

一年くらい前にエキスポランドのお化け屋敷(本陣殺人事件)に遊びに行った時に、人形じゃなくて、人が演じるお化けが怖がらせてくれるという趣向があって、家の中(を模したセット)を歩いていると、その自分の歩いている同じ部屋の同じ空間の中で、狂った巫女さん(を演じる女優)とか、犯人の村長や坊さん(を演じる俳優)に驚かされた(というか、予想外の場所から現れて本当に追いかけてくる)ことを思い出しました。

Virtual にも、安全なvirtual と危険なvirtual があって、本当の人間が演じているvirtual を同時に同一空間で見ることで、その演じている人と自分の関係性が問われてしまう危険性というものを考えさせられました。


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