よんたまな日々

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またまたホームレスの話

2005年04月22日 | 読書
以前、僕のブログで、風樹茂のホームレス入門を紹介したのですが、本当にホームレスになった人の話がコミックで出版されましたので紹介します。

本屋に平積みされているので、知っている人も多いでしょうけど。

ところで、漫画家「吾妻ひでお」をご存知ですか?
僕は、少年チャンピオンにエッチな不条理漫画を連載している時にリアルタイムで読んでいました。その頃僕は小学生だったと思いますが、うちの店で漫画や雑誌を売っていて、店番の合間に陳列棚から引っ張り出して熱心に読んでいたそれらの雑誌の中に少年チャンピオンもありました。でも、代表作って何?って聞かれると困ってしまうのですが。
とり・みきも結構好きな漫画家なのですが、吾妻ひでおの影響を受けているそうですね。吾妻ひでおよりは、とり・みきのほうが好きだけど、そう言われると確かに似ています。

その吾妻ひでお本人が、ホームレスになる話、ホームレスになりかけたところを拾われて配管工になる話、アル中で入院し、治療を受ける話の三作が入ってます。
ホームレスになったきっかけというのが、連載漫画でもう最終回だと思っていたのに、もう一回分連載があり、嫌になって逃げ出したというのが、妙な説得力があります。
最初は一週間くらい友人宅に泊めてもらっていたのが、居心地が悪くなって逃げ出し、自殺しようとして失敗してホームレスになります。
軽いタッチで描いてあるので、笑って読めますが、実際にホームレスになる人たちも、多分同じように、どこかで何かから逃げたことが原因でしょう。傍から見ればささいなことであっても、追い詰められると耐えられずに逃げたくなる....という気持ちは、とてもよくわかります。
つーか、僕自身、仕事でそういう場面に追い込まれたことは何度もありますし。
吾妻ひでおは、何の準備もせずに逃げたので、テントもなく、ゴミの中から拾った腐りかけの毛布で寝て、他のホームレスの食料を盗んで生き抜くというきつい目にあっています。
風樹茂の上野公園のホームレスは、昼間仕事があり、テントも持っていて、夜は酒盛りする余裕もあるので、吾妻ひでおが金持ちホームレスと呼んでいたのが面白かったです。ホームレスになっても、社会があり、階層があるようです。

相当悲惨な話のはずですが、コメディタッチで飄々と描いてあるので、笑いながら読めてしまいます。自分自身の悲惨な体験を、こういう風にかける技術とスタンスについて、後書きとしてつけられた対談の中で、とり・みきが絶賛しています。
僕が小学生の頃から漫画連載していたので、もう超ベテランの漫画家だと思いますが、世の中にはすごい人がいるものですね。

さて、ホームレスつながりで、もう一作。

関なおみの『時間の止まった家 「要介護」の現場から」』です。
ホームレスは、定まった家も仕事もない人達ですが、家があれば何とかなるのかという問いかけと受け取ったのが本書です。
ここで紹介されている人達は、ほとんどが自分の家は持っているものの、様々な要因で、自分の家を社会的に適切に維持できず、保健福祉センターが介入した事例について、保健福祉センターに勤務する女医が、自分の視点から書いた本です。
ゴミ屋敷や猫屋敷と呼ばれる家に住んでいる人達や、幻の同居人と戦う人などが紹介されています。
最も悲惨だと感じたのが、寿司屋のおやじさんが、高齢で一人暮らしが困難になっているのに、妻には先立たれ、息子は精神障害のため、面倒を見てもらえず、かつての店の座敷に布団を敷いて寝込んでいて、碌な食事も摂れず、屎尿垂れ流しで、暖房もない部屋で寝ていたところを、近所の人からの連絡で保護されるという話。
これを読むと、たとえ住む家があっても、生きていくことが困難になってしまう要因はいくらでもあるものだと痛感しました。
武田鉄矢が言うとくさいですが、本当に人は一人では生きていけないのですね.....。

しかし、最後の事例で、このレポートを書いている女医が、自分をその一例として、書き加えるのは、やや露悪的ではありませんか?
吾妻ひでおがこんなに売れるのも、世の中には逃げ出したい人がいっぱいいるからでしょう。
武田鉄矢の歌にもありますが、生きていくには戦わないといけないのですが、人にダメージを与えることが辛くない人なんていませんからね。
誰も傷つけずに生きられる幸運な人なんて、本当にいるのかな...。
もし、自分がそうだと思っている人がいたとしても、その人は単に鈍感なだけじゃないのでしょうか。

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