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「ああしんど」

2020年06月12日 07時34分09秒 | 文学・詩・短歌・五七五

「ああしんど」

池田蕉園

 

 よっぽど古いお話なんで御座いますよ。

私の祖父の子供の時分に居りました、

「三」という猫なんで御座います。

三毛だったんで御座いますって。


 何でも、あの、その祖父の話に、

おばあさんがお嫁に来る時に―

―祖父のお母さんなんで御座いましょうねえ――

泉州堺から連れて来た猫なんで御座いますって。


 随分永く――家に十八年も居たんで御座いますよ。

大きくなっておりましたそうです。

もう、耳なんか、厚ぼったく、

五分ぐらいになっていたそうで御座いますよ。

もう年を老ってしまっておりましたから、

まるで御隠居様のようになっていたんで御座ございましょうね。


 冬、炬燵の上にまあるくなって、寐ていたんで御座いますって。

 そして、伸をしまして、にゅっと高くなって、

「ああしんど」と言ったんだそうで御座いますよ。


屹度(きっと)、曾祖母(おおばあ)さんは、

炬燵へ煖(あた)って、眼鏡を懸けて、本でも見ていたんで御座いましょうね。

 で、吃驚(びつくり)致しまして、この猫は屹度化けると思ったんです。

それから、捨てようと思いましたけれども、幾ら捨てても帰って来るんで御座いますって。

でも大人しくて、何にも悪い事はあるんじゃありませんけれども、

私の祖父は、「口を利くから、怖くって怖くって、仕方がなかった。」って言っておりましたよ。

 

 祖父は私共の知っておりました時分でも、猫は大嫌いなんで御座ございます。

私共が所好(すき)で飼っておりましても、

「猫は化けるからな」と言ってるんで御座います。

 で、祖父は、猫をあんまり可愛がっちゃ、

可(い)けない可(い)けないって言っておりましたけれど、

その後の猫は化けるまで居た事は御座いません。

 


底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房 
   2007(平成19)年7月10日第1刷発行
底本の親本:「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂
   1911(明治44)年12月
初出:「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂
   1911(明治44)年12月
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年9月26日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/池田蕉園#/media/ファイル:Post_card_by_Ikeda_Shōen_03.jpg

 

猫ではありませんが きまぐれな はな

ちょっと こちらを動かして見たく思っています ので

興味のある方は どうぞお越しくださいませ

 

ではでは コロナには 十分お気を付けになって

あとは 残りの人生 毎日を楽しく過ごしていきましょう

 

と 思っています。

が 同時進行する元気があるかも・・・・

73才 まだまだ 好きなことには時間を忘れますのでございます。



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