県警足助署によると、逮捕されたのは世帯主のアルバイト松井芳治容疑者(65)。出火直後に自ら近所の住民に消防への通報を依頼し、乗用車で外出したとみられ、岡崎市の印鑑店にいるところを警察官が取り押さえた。

 その際、松井容疑者は店内でタオルを巻いた包丁を手に持ち、もう1本は新聞にくるんで腰に差していた。車も近くの駐車場で見つかった。

 一緒に暮らす80代の義母、60代の妻、30代の娘と連絡が取れていないことから、県警は死亡したのはこの3人とみて、同容疑者から事情を聴いている。

 松井容疑者をめぐっては、県外に住む息子が4月、「両親が詐欺被害に遭ったようだ」と足助署に電話で連絡。今月上旬には本人が豊田署を訪れ、「妻が8000万円をだまし取られたようだ」と相談していた。

 火災現場は山に囲まれ、民家が点在している地域。近所の住人らによると、松井容疑者は以前、自動車関連の工場に勤務し、四十数年前に婿養子となった。今年4月からは地区の組長を務め、地域住民に市の広報や回覧板を配るなどしていたという。

 知人男性(67)は「松井さんは真面目な方。きのう昼に自宅で会ったが特段変わった様子はなかった。包丁を持っていたと聞いてびっくりしている」と話した。