ろうげつ

花より男子&有閑倶楽部の二次小説ブログ。CP :あきつく、魅悠メイン。そういった類いが苦手な方はご退室願います。

沈め屋(花男CPナシ) 後篇

2020-03-23 10:33:40 | CPナシ(花男)
※この話は、2017/6/20にヤフーブログ「たゆたふ」、2019/4/6「たゆたふ弐」でアップしたものです。


浮気した彼氏に詰め寄ったところ、逆上され殺されてしまったという若い女性。
その女性が住んでいた部屋で、二ヶ月ほど暮らす事になったつくしであるが早速、初日から怪奇現象の洗礼を浴びる羽目になった。

まずは手始めにラップ音が部屋中に響き渡り、次に電気が突然消える。
そして日が経つにつれ、閉めたはずの扉や襖(ふすま)が自然と開いたり、洗面所の水がいきなり流れたり、人を引きずる様な音が聞こえてきたりと、不可解な出来事が続いた。

さすがのつくしも、これには薄気味悪いものを感じたが、おいそれと逃げ出す訳にもいかず、バイト代を手に入れる為、我慢して住み続けた。
そんな中、遂につくしは遭遇してしまう。
そう。
この部屋で殺された前の住人である、若い女性に。

「・・・うっ!」

あまりの息苦しさに目を覚ましたつくしは、信じられない光景を目の当たりにする。

恨みがましい瞳をこちらに向けながら、死ね死ねと連呼し、自分に馬乗りになって首をギュウギュウ絞め上げてくる女性の霊。
その目は狂気に満ち満ちており、普通の人間ならば悲鳴を上げ失神するところだろうが、生憎つくしは普通の人間・・・いや、精神状態ではなかった。

昼間、街中で偶然見かけた元彼とその相手女性の幸せそうな姿。
自分一人を不幸にし、何喰わぬ顔で日々を過ごす元彼に、言い知れぬ怒りを覚えた。

---許せない。絶対に。このヤロウ。ふざけんな。

ドロドロとした怒りのマグマを胸の内に納め、やり場の無い思いを持て余していたつくしは、霊に首を絞められた事により、何かが弾けた。

右手を握りしめ拳を作り、それを、


「つくしパーンチ!」


自分の首を絞め上げる霊の顔面に向け、思いきりグーパンチをお見舞いしたのだ。
当然ながら、意表を突かれた霊は、驚愕した面持ちでつくしを見つめる。
しかしつくしは全く意に介する事なく、怒りの丈を霊にぶつけた。


「何すんねんワレェ!苦しいやろがアホンダラ!」

『・・・』

「何でウチがアンタに首絞められなアカンねん。関係あらへんやんけ。恨むならワシやなく、アンタを裏切った男ちゃうんけ!?」

『・・・ハイ』

「こっちは親が借金作ってトンズラするは、勤務先が倒産するは、彼氏が浮気相手を妊娠させて結婚するはで、踏んだり蹴ったりや。恨みたいのはウチの方や!ボケ!カスゥ!」


そう言うや否や、枕をむんずと掴んだつくしは、それを霊にめがけ思いきり投げつけた。

余談ではあるが、何故つくしが関西弁を話すかというと、大学時代からの親友がコテコテの関西弁を口にし、それがうつったからである。
おまけに、浮気した元彼や倒産した会社の上司が関西出身で、常日頃から関西弁を使っていた為、自然とつくしも関西弁をマスターしてしまったのだ。
ちなみに、コテコテの関西弁を話す親友は、あきらの妻の座に君臨している。

さて、話を戻そう。

思いきり枕を投げつけられ『痛い』と呟く霊に、つくしはベッドから下り、仁王立ちしながら更にまくし立てた。

「殺されて悔しいのは分かるけど、恨む相手間違えんなや。浮気した彼と相手の女に取り憑きなはれ。ほんで、その二人を気が済むまで懲らしめたら、成仏しぃや。いつまでもコッチの世界にいたらアカン。ええな!?」

『・・・ハイ』

「分かったなら、サッサとここから去(い)ねや」

『ス、スミマセンデシタ』

あまりのつくしの剣幕に恐れをなした霊は、ブルブル震えながらこの部屋から去っていった。

牧野つくし、後厄。
職ナシ金ナシ男ナシの三拍子揃った崖っぷち。
この出来事をキッカケに、次々と事故物件に住む仕事が舞い込む様になり、伝説の女となる。

人呼んで「沈め屋」・・・そう、霊を「鎮める」のではなく、グーパンチで「沈める」という意味の「沈め屋」である。



〈あとがき〉

久々にコメディを書きたくなったので、こんな話を書いてみました。
書いていて、「霊って痛みを感じるのか?」と思いつつ、感じる事を前提に進めました。


〈あとがき2〉

この「ろうげつ」でも、沈め屋つくしチャンを書いていこうと思ってます。
コメディのつくしチャンは、やっぱりこういったパワフルな女じゃないとね(笑)




沈め屋(花男CPナシ) 前篇

2020-03-23 10:22:00 | CPナシ(花男)
※この話は、2017/6/19にヤフーブログ「たゆたふ」、2019/4/6に「たゆたふ弐」でアップしたものです。


借金こさえた両親が蒸発、そして行き方知れず。
それに加え、結婚間近の彼氏が浮気し、その浮気相手が妊娠。そして、責任をとるカタチで彼氏は浮気相手と結婚。
私一人が取り残される。
その上、勤務先の会社が倒産し職を失う。

一体何なの!?
この不幸の嵐は。

高い金を払って厄祓いしたって言うのに、全くもって厄が祓われてないじゃないの。
この歳で再就職はキビシイのよ!?
トンズラした親の借金、職の無い私にどう返せって言うのよー!ふざけんなー!

と、己にふりかかった不幸を嘆きながら、ジョッキに入ったビールを豪快に呑むつくしに、向かい側の席に座るあきらは苦笑いを浮かべた。
無論、ここの飲み代はあきら持ちである。


「親の借金は私の貯金叩けば完済出来るけど、そうすると私の全財産パァよ。一文無しよ。どうしろって言うの」

「家賃払えなくなるな」

「そうなのよ~!職無し、宿無し、彼氏無しの無い無いづくしの身よ!?四十路近くにして、全て失った不幸な女なのよ。分かる!?」

「気の毒に」

「本当にそう思ってるなら、仕事紹介して!」

物凄い勢いで身を乗りだし、両手で自分の手を握りそう懇願してくるつくしに、あきらは顔をひきつらせながら「なくもない」と告げた。

「俺の呑み友達で変わったヤツがいるんだ」

「変わったヤツ?」

「ああ。どんな伝手があるのかは不明だが、一風変わった仕事を斡旋してるんだ」

そう切り出したあきらの話を、要約するとこうだ。

世間には俗に言う『事故物件』と呼ばれる家やマンションがある。
いわゆる自殺や他殺、そして孤独死のあった物件だ。

そういった部屋を次に貸し出す時、不動産屋は借り主にその旨を告げる必要がある。
だが、その様な物件は気味悪がられ、家賃を格安にしても敬遠されやすいというのが現状だ。
となると、いつまでも空室状態が続く事になり、不動産屋としても頭が痛い。

そこで、ソレに目をつけた仕事というのが、

「事故物件に住む!?」

と、いうものだ。


「死に触れた直後の部屋に、一~二ヶ月住むんだよ。一度でも住めば、次に部屋を貸す時に、事故物件だと言う義務はなるなるからな」

「ふ~ん。それって、家賃いくら?」

「事故物件に住むっていう仕事だから、家賃はタダ。おまけに、バイト代二十五万円もらえるぞ」

「本当!?」

「ああ」

「そういうバイトがあるって聞いた事はあるけど、都市伝説だと思ってたよ」

「で、どうするんだ?この仕事、受けるか?」

「もちろん!家賃タダでバイト代もらえるなんてサイコーじゃん」

そう鼻息荒く言ってのけるつくしに、あきらは分かったと言いながら、呑み友達に「人員確保」という内容のメールを送った。
すると即行で「明日にでもすぐ」といった返信が届き、その旨をつくしに伝えた。
当然ながら、つくしに異論はない。

「本当にありがと~!助かったよ」

「まぁ、本人が納得済みならいいんだけどな」

「仕事引き受けてこんな事を言うのもナンだけど、そのお友達、法に触れる様な事はしてないよね?」

「多分。本人曰く、法に触れない仕事を見つけるのが俺のポリシーだって言ってたからな。でも・・・」

「でも?」

「法に触れるスレスレの事はしてるかもな」

「え~!?」

ちょっと!
逮捕されたらどうすんのよ。犯罪者になっちゃうじゃん。
あ、でもそうなったら美作さんの力で何とかしてもらおう・・・と、ポジティブな事を口にするつくしの新しい生活が、始まろうとしていた。


後篇へ続く。


〈あとがき〉

この話はシリーズ化したいなぁと思い、こちらの「ろうげつ」にもアップしました。
Yahoo!ブログで書いていた「金さんシリーズ」みたいに続けばいいけど・・・。