ろうげつ

花より男子&有閑倶楽部の二次小説ブログ。CP :あきつく、魅悠メイン。そういった類いが苦手な方はご退室願います。

相合傘(あきつく)

2020-08-08 11:53:23 | 短篇(花より男子)
雨の降る日は嫌いだった。
だって、辛くて悲しくて苦しかった出来事を、思い出してしまうから。
でも、今は───

「今日は、鎌倉にあるレストランに行ってみないか?」

「鎌倉のレストラン?」

「ああ。雨の日に来店して食事をすると、10%割引になるんだってよ」

「わぁ!」

「つくし、好きだよな?割引」

「もちろん大好き!」

「よし!じゃ、行くか」

「うん!ありがとう、あきらさん」

いつだって貴方が傍にいるから。
だから私は、雨が降っていても平気。
憂鬱な気持ちにはならないの。
それに、貴方に告白された日も、初デートの日も、初お泊まりの日も、全て雨の日だったでしょ。
だから私は、雨が降っていても大丈夫。

そう言えば、告白された日はしとしと雨が降っていたっけ。
相合傘をしながら帰路に着く途中、さりげなく『好きだ』と言われたのを、昨日の事のように覚えている。

初デートの日は、これまた雨が降っていた。
相合傘をしながら博物館に行き、貴方の博識ぶりに驚かされたのを、今でも覚えている。

初お泊まりの日も、当然の如く雨が降っていた。
相合傘をしながら竹林に囲まれた高級旅館を訪れ、湯上りした貴方の色気に胸を高鳴らせた事を、鮮明に覚えている。


「ニヤニヤしてどうした?」

「へっ?べ、別にニヤニヤなんて・・・」

「思い出し笑いか?スケベだなぁ、つくしは」

「ちょっ!?スケベって何よ!?」

「違うのか?」

「あきらさんと一緒にしないでよ」

「それは残念。つくしもスケベなら、あ~んな事やこ~んな事も試せるのになぁ。ベッドの中で」

「あきらさん!」

「あははは」


雨の日の嫌な思い出を、貴方が塗り替えてくれた。
だから私は、雨の日が嫌いじゃない。
むしろ、雨の日が好きになった。


「食事の後、行きたい店が湘南にあるんだけど、寄り道していいか?」

「うん。私は構わないけど」

「よかった。つくしと一緒に訪れないと、意味がないからな」

「意味がない?」

「ああ。本人不在で指輪なんて買えないだろ?」

「・・・えっ?指輪って」

「ペアリングだよ。取り敢えず今は、それで我慢だな」

「我慢?」

「結婚指輪は、俺の抱えてる仕事が落ち着いてから買いに行こう」

「結婚指輪!?」

「何を驚いてんだ?」

「だ、だって・・・何の前触れもなく急に・・・それに、その・・・」

「プロポーズもされてないのに、それをすっ飛ばして結婚指輪だなんて~ってか?」

「ゔっ!」

「図星か。何だ、つくしはロマンティックなプロポーズを夢見てたのか。そういうのは苦手だと思ってたよ。まだまだ勉強不足だな、俺は」

「ち、違───」

「じゃ、つくしの退社時間に合わせて、真っ赤な薔薇の花束を持って勤務先まで迎えに行くよ。で、退社する人達の前でプロポーズするか!?」

「げっ!」

「それとも、夜景の綺麗なホテルのラウンジで、カクテルの中に結婚指輪を入れてプロポーズするか!?」

「どっちもイヤぁ~!」

「ぷっ!」

「あ、私をからかったのね!?あきらさんのバカ!もう知らない」

「悪い悪い。今日の食事はご馳走するから、機嫌直してくれよ」

「・・・デザートは?」

「そりゃ勿論、ご馳走してもらいます。つくしちゃんっていう甘いデザートを」

「ばっ、バカー!意味が違うっての!」

「あははは」


今ではもう、雨が降っても悲しくない。
苦しくも辛くもない。
だって、いつでも貴方が寄り添ってくれるから。
笑顔と元気と、生きる活力を与えてくれるから。

だから私は、貴方との思い出が沢山詰まった雨の日が大好き。


〈あとがき〉

何を血迷ったか、急に「ベタな恋愛話を書きたい」と思ってしまい、この様な話を書いてしまいました。
突発的に書いた話なので、駄作も駄作です。
ま、突発的に書かなくても、駄作だらけですけどね・・・(泣)