涙で毒出し 2月18日

今日は患者さんから衝撃的な話を聴かされた。親友が、突然、失踪したというのだ。新幹線が停まる駅前に車が乗り捨ててあったので、「新幹線に乗って東に向かったんだろう、ソイツの知り合いは東にしか居ないはずだから」。そんな、極めてあやふやな推測のもと、その患者さんは親友が行きそうな土地を数日間探し周ったという。失踪した人は80歳に手が届く年齢なのだが、警察に捜索を依頼したくても、その費用たるや聴いて驚くような金額で、為す術がないということだ。心配で夜も眠れず、ここ数日、朝の収縮期血圧(上)が200近く。曰く「命がけじゃあ」。本当に・・・。

警察に捜索を依頼すると、相当額の費用がかかるそうだ。ちょっと信じられない金額だったのだが、本当なのだろうか。失踪者の年齢を考えると、安否が確認されるまでは警察の任務としてもらいたいものだが・・・。とにかく、1日も早く無事に帰還していただかないと、この患者さんがまいってしまう。心配だ。

「涙で毒出し」、耳慣れない新しい研究が進む。
笑いがストレスを解消し、体内の毒素を排出削減することは、近年、常識となっている。リウマチの患者さんを対象とした実験では、落語で大いに笑った直後、炎症を悪化させる「インターロイキン6」という体内物質や、「コルチゾール」と呼ばれるストレスホルモンの数値が、明らかに低下することが実証されている。

しかし、リウマチの患者さんの中には笑えないほど症状の重い方もいらっしゃり、研究者は、「笑い」ではなく「泣き」の感情発露による効果を分析した。その結果、「心を揺さぶられた際の涙」には、ストレスホルモン「コルチゾール」が多く含まれていることを発見。泣けば泣くほど、ストレスは解消されるということだ。泣いている時は、悲しみや喜びに没頭している。「没頭」することは、思考を一時停止し、脳のこわ張りをほぐす。その結果、新たな局面の打開につながるのだと、研究者は分析している。

新しい世紀に入り、次々と地球を不幸が襲い、薬剤師という仕事がらもあって、心から笑うことの少ない最近の私。そんな私は、「泣き」のストレス解消については、実は既に習得している。毒を出した翌朝は、シャキッと背筋を伸ばして上を向いて歩いている。切ないけれど、そんな朝は間違いなく上を向いている。何もかも思い通りにいき、幸せの絶頂を味わうことができたら、ラッキー。でも、その場合、踏み台にした人々の存在を、決して忘れてはならない。大概は、思い通りにいかず悲しくて切ない時を刻むのが、人生なのだと、私は思う。でも、その場合、精神は強く鍛えられ、いつか必ず心に鎧をまとう日がやってくる。そして、そうなったら、人間、恐いものなしなのだ。
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