Justice! 社会正義の実現!所得充実政策!ワクチンより検査を積極的に推奨! / 薬剤師・元参議院議員・消防団
ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ
エゾシカが学校給食に! 6月8日
2005年7月に世界自然遺産に登録された知床が、今、大量発生するエゾ鹿に頭を痛めている。今月3日には、「知床科学委員会エゾシカワーキンググループ」の会合が開かれ、エゾ鹿の捕獲による密度捜査実験を行う「エゾシカ保護管理計画」の素案を了承した。今後環境省は、同委員会や地元住民への説明会を開き、2007年1月までに「保護管理計画」を策定し、2007年度から5年間にわたり計画を実行していく予定だ。
地元では、この大量発生するエゾ鹿を、BSE問題に揺れる牛肉の代用肉として、全国に発信し売り出そうとしているが、この程なんと釧路市教委で、エゾ鹿肉の学校給食への導入が決定した。第一弾として、コッペパンにタレ付きシカ肉とピーマンをはさんだ「焼肉ドック」が、今年10月お目見えする。その他に、カレー・ハンバーグ・酢豚ならぬ酢鹿が、給食のメニューとして検討されているそうだ。「肉が柔らかく牛肉のよう」「臭みがなく食べやすい」とは、試作に携わる栄養士の弁だ。釧路市教委は、調査捕鯨で取れたクジラの肉を献立に導入するなど、ユニークな食材を学校給食に導入することで知られている。
学校給食という形で、エゾ鹿が食肉として正式に導入されるにあたり、気になるのはやはり、狂鹿病(CWD)に対するリスクマネジメントだ。北海道庁の発表によると、独立行政法人「農業・生産系産業研究機構動物衛生研究所プリオン病研究センター」がウェスタンブロット法により検査した結果、検体全てにおいてBSEは陰性であったということだ。検査は、捕獲したエゾ鹿の延髄閂部で、平成15年度は127検体・平成16年度は11検体について行われた。これは即ち、食肉用に加工されるエゾ鹿については、牛のように全頭検査が実施されているわけではないことを示すものだ。
牛肉について日本の要請にまったく耳を傾けようとしない米国だが、実は米国では、BSEよりもCWDのほうが、より大きな社会問題として取り上げられている。BSE感染リスクが100万人に1人とされる米国で、なんと26名もの鹿ハンターがヤコブ病に感染したとの報告があるからだ。米国でのCWDに関する研究は熱心で、本年1月の「Science」誌にも次のような研究発表がなされている。「CWDに感染した鹿の骨格筋(通常、食肉にされる部分)に異常プリオンが存在する可能性があり、CWDのヒトへの伝播は定かではないが、CWD感染地域の鹿肉を食するハンターには感染のリスクがある」(農業情報研究所の資料による)。
CWDは、1970年に米国コロラド州で確認されて以降、米国・カナダで急速に拡大している。しかもCWDは、BSEよりも広範な組織に異常プリオンが分布する可能性が疑われており、米国でも、CWD感染鹿を、絶対に食してはならない旨の勧告がなされているのだ。しかし、現在までのところ、CWDがヒトに感染するか否かの科学的解明はなされておらず、それが食肉用に加工される鹿の全頭検査実施の妨げになっていることも、紛れもない事実なのだ。
翻ってエゾ鹿のリスクマネジメントを考える時、全体のほんの僅かの検体を検査しただけで、エゾ鹿がCWDフリーであると断定することは、到底できるものではない。特に日本では、その大半が北海道に集中して、既に27頭のBSE感染牛が発見されている事実を考慮すると、エゾ鹿のCWDリスクを払拭することは、とてもできないのだ。食品安全委員会プリオン専門調査会において、米国でのCWD感染鹿の肉骨粉が牛の飼料に混入するリスクについての検討はなされているが、CWDに関する独自調査がなされるはずもなく、CWDに対する同委員会の公式見解はいまだに発表されていないのが現状なのだ。
このような状況の中で、大量発生するエゾ鹿を学校給食に導入することは、果たして適切と言えるだろうか。少なくとも、学校給食用に加工されるエゾ鹿の全頭検査は、実施されなければならないはずだ。米国でも、CWDは野生の鹿に蔓延しているのだ。そして最も重要なことは、釧路市に対して、CWDのリスクマネジメントを、政府が適切に助言・勧告することだ。相手が米国ではないのだから、政府は十分にその指導力を発揮できるはずなのだから。
→CWD感染鹿の画像(BSE&食と感染症 つぶやきブログより)