かくれんぼの雑記帳

前向きに生きるためのエンディングノートとして、日々の喜怒哀楽や驚き、感動、考えたことを記録します。

小説:尾崎世界観「母影(おもかげ)」

2021-01-16 13:31:15 | 
まだ単行本になっていない、尾崎世界観さんの「母影」を、
図書館で月刊誌を借りて読了した。

文章が拙い私では、この小説のすごさを伝えることができないが、
いったい、どういう思考からこのような瑞々しい文章が生み出されるのか。

主人公は子どもで、母との繊細な関係を描いている。
様々な色や光や影や、主人公の心の機微が文章から伝わってくる文体。
「そして父になる」的な、誰もが驚く特別なイベントが起こるわけではないところが
本物の余裕を感じさせる。

文章でそういうことまでを読者に伝えることができる「作家」
という職業はなんてすばらしいのだろうか。

尾崎さんの私小説なのだろうか。あまり知らないので、自分の知っている
ことから推測して、一部には作者の子どもの頃の経験が反映されているんだろう、
と想像できる部分(電車に乗って都心に行くシーンなど)もある。

長編ではない微妙な長さなので、芥川賞の選考ではそこも含めて
どういう評価をされるのか。
もうすぐ発表だが、とても楽しみだ。



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