OGUMA    日々軌 小熊廣美の日々新

規格外の書家を自認している遊墨民は、書は「諸」であるという覚悟で日々生きている。

気楽に綴らせていただきます。

爪色の雨

2013年11月21日 | 日記
中学を出て、初めての仕事だったのか、最年少の紙芝居の描き手だったようだ。
私が知ったのは喫茶店のマスターとしてであった。

パイプをくわえ、時に着物を着流し、時にはアロハで、よく知らない人は、危ない世界の人にも思われた。モンブランの青の太字で原稿や手紙もみな書いていた。浅草の芸人から役者や作家まで交友もひろかった。

地元に生の演劇を、と鑑賞会をつくり、全国の組織に入らず、独自の嗅覚で鑑賞会を育てた。
私は喫茶店の客から鑑賞会のスタッフの一人となっていた。鑑賞会とは鑑賞するのだが、鑑賞会スタッフはイベント屋にほかならない。そのノウハウは身体で覚えさせてもらった。越前に水上勉さんを訪ねたこともあったが、二十代の私は多くのことをこの方とその周りの方々から学んだ。

破天荒な人生であったので75歳は短いともいえない。夏に亡くなり、先日、偲ぶ会が行われた。西舘好子さんらもかけつけてくれたが、その日のメインは、最後に演劇にしたかったという「万城目 正」をうたうコンサートだった。

私は万城目正なんていう人は知らないと思ったら、懐メロではあるが、今の方も知っている歌がいっぱいだった。「悲しき口笛」、愛染かつらでおなじみの「旅の夜風」、先日逝った島倉千代子さんの「この世に花」、サトウハチロー作詞の「リンゴの唄」…。

その方は、「サトウハチローの世界」という歌と芝居のイベントも成功させたが、サトウハチローが好きであったようで、風貌も晩年似せた感じがある。

「だから夕方はさみしいのだ」「爪色の雨」もサトウハチローの作詞で、その方が好きな歌だったようで、万城目正とサトウハチローを歌うであった。おまけに♪いのちみじかし…♪と「ゴンドラの唄」は、唄った川口京子さんのその方へ送るレクイエムだったのだろう。

昨日は横浜めぐり。横浜美術館では大観の人間性に触れられた思いがした展示であったが、大観が生涯愛飲した酒が「酔心」というのが一番のびっくりで、買ってその日の最後、みんなで飲んだ。美味い!
山本きもの工房で黒の山着を受け取り、談笑。

最後は酒好きな方々と久々に一献。
でも一番印象に残った美味かもんは、土鍋で炊いたご飯。

佐賀県小城産のお米を選んで炊いてもらった。

数学の教師から、メキシコ、アルゼンチンなどで現地の教師などに数学の教授法など講義し、造形作家から和紙造形の仕事なども積極的にやられ、今年亡くなった遠矢浩子さんの故郷産のお米である。

美味しさのなかにきりっとした感じは、遠矢さんゆずりであった。
私の地元市井の御大は、ごった煮でいいダシが利いている感じかな。

お二人の共通点は、反権威。
最近話題の日展を頂点とした芸術界の構造疲弊はそう簡単に変われないかもしれない。ただ、市井にいてみんなの心にホッと残る生き方も、まんざらじゃない。

そんな感性は残しておいた方がいいだろう。



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