カメラ大好きおばあちゃん

極々近場を一人気ままにウロウロし、目に留まった光景を投稿しています。

「 目が輝く時 」  ( 診療内科医 海原 純子 )

2017年05月20日 | その他
2016.7.2 付 毎日新聞 1年近く前の記事ですが‥

診察室で日々受診者の話を聴いていますが、楽しくて元気な話というのはまずないし、明るく溌剌とした表情を見ることもほとんどない。でもじっくりお話をきいていると、ある瞬間、その方の目に明るく美しい輝きがともることに気がつくことがある。
それは、 その方が興味のあるものについて語る時だったり、飼っているペットの話をするときだったり、 大事にしている人の話や旅の話をする時だったり、 作った料理が美味しかった話の時だったりと、さまざまである。
どんなにつらくて厳しい暮らしの中でも、 どんなに落ち込んだ毎日の中でも、 お話をされているうちに一瞬目に光が戻って活き活きと輝く。 そんな時、「あっ、なんてきれいなんだろう」と、心から思う。年齢も顔の造作も関係なく、この目の輝きこそが人の美しさなのだ。
しかし、目が輝くような要素が生活の中にあるにもかかわらず、それに気がつかなかったり、そんなことしても得にならない、 役にたたない、と考えてないがしろにしながら生活していると、いつか心の活気が失われる。そのうち日々は色あせてしまうのである。
だから、 目の輝きをたよりにして、その方の生活と心が活気をとり戻すお手伝いをするのが医療なのだと考えている。目の輝きは、その人の人生の方向を示す光でもある。
どんなに表情を作っても、化粧しても、言葉をつくしても、そこにその人の心や真実がなければ目が輝くことはない。スポーツやライブ演奏や観劇の楽しみは、パフォーマンスみせる選手やアーティストの目の輝きをみることで喜びが増し、 エネルギーをわけてもらえることにあるように思う。
年をとるにつれ、化粧ではごまかせない老いがやってくる。年齢を超越した輝きを作り出すには、結果ではなくそのプロセス、 つまりやっていることに集中し、 楽しめることを生活にとり入れることなのかもしれない。同様に、 心に活気をとり戻すには、目の輝く瞬間を少しずつ増やしていくことが大事なのだ。
さて、講演会や演説身近なところでは面接や商品説明などで、 さまざまな主張や売り込みをきく時、私は話し手の目の輝きをみることにしている。どのくらい目が輝くかで、真実がみえてくるからだ。


楽しめることを生活にとり入れ、目が輝く瞬間を少しずつ増やしていくことが大事だという。そのためには幾つになってもアンテナを張り巡らし、好奇心旺盛なことが大切だと思います。