(引用文)
一に一を加えて二になる。 これは算術である。 しかし、ヴェクトルの数学では、1に1を加える場合に、その和として、0から2までの間の任意な値を得ることができる。 美術展覧会の審査には審査員の採点数を加算して採否を決めたりする。 あれは算術のほかに数学はないと思っている人たちのすることとしか思われない。 (大正十年十月、渋柿)
(大正十年十月号掲載文を読んで)
算術だの、数学だのと寅彦が言い出した真意は知らないが、
寅彦が美術の価値を数学で決められると思うなら愚かな事。
即ち、美術の価値を判らないで、商品価値で量る者がいる。
.