le temps et l'espace

「時間と空間」の意。私に訪れてくれた時間と空間のひとつひとつを大切に、心に正直に徒然と残していきたいなと思います。

イスラムの怒り

2011年08月24日 | BOOK

●イスラムの怒り 内藤 正典 著

近頃、「これから世界を相手にグローバルに経済活動をする上でイスラム教への理解は不可欠だ」と言った発言が目に付いていた。アメリカ・ヨーロッパ経済の失速は自明、中東・アラブ諸国の台頭は著しい。のは誰でも知っている。が、アメリカ経済が発展する途中に「キリスト教への理解が重要だ」という発言はほとんど目にした事がない。となれば、イスラム教ってどんな宗教??と知りたくなるのは必至である。

イスラム教って何となく禁欲的で過激的なイメージを、勝手に持ってしまっている。と思って本書に出会ったものだからタイトルだけ見て「やっぱり!!」。だってわざわざタイトルに「怒り」だもの。。でも、読んでみて分かった。今私が抱いているようなイスラム教への「イメージ」は、その昔、ヨーロッパが物事を自分たちに有利なように進めるために解釈されたものだということに。

イスラム的道徳は「困ったときは助け合う」であり、「一滴の水は分け合う」なのである。そして、すべてが「神(アッラー)のご意志」なのだ。そして、来世をとてもとても信じている。みんな天国に行きたい。だから、家族の誰かが亡くなったら(とりわけ家族を大切にするので)、その悲しみ様は尋常ではないのだが、少し落ち着くと「ま、神のご意志で命が尽き、来世で楽しく暮らすのだからいいではないか」と拍手でも起きそうな雰囲気に一変するのだそうな。それに、イスラムではお酒はタブーだが、それでも隠れて飲む人がいる。そんな人に「酒なんか飲んで天国に行けるの?」と聞くと「酒は飲んでいても善行も積んでいるから行ける」と言い張るらしい。日本人からすれば「なんと都合のいい人間・・・」となりそうだが、それとこれとは別みたい。あ、そう。結構、楽観的で寛容な宗教だ。そうは言っても、イスラム教徒の一部はテロも起こすし、2006年には人気サッカー選手だったジダンが相手チームの選手に頭突きを喰らわせて退場となった。

やっぱり怒っている・・・

では、彼らは何をされると瞬間湯沸かし器のように突如としてメラメラとした怒りを抱き、それをコントロールできずに暴走させてしまうのか。私たちが何をすると彼らの逆鱗に触れるのか。著書によれば、こうである。

1.弱い者いじめ(とくに、女性・こども・高齢者)

2.聖典コーラン、預言者ムハンマド、神を侮辱、嘲弄、揶揄、不適切なかたちで使用する

3.イスラムに由来する価値観や生活習慣を「遅れている」と侮辱する

この3つをしないように心がければ、突然頭突きをされるようなことはないようだ。と言って、これは人として当然な心がけであろう。1.は良いとして、2.、3.も、人はそれぞれ違う価値観を持っていてそれは優劣はない。その価値観が信仰に関するものであればなおさら他宗教の人間が善悪や優劣を持ち出せる範疇のものではない。日本とて、信仰の自由を謳っているくらいなのだから・・・。

弱い者いじめは、こんなエピソードが紹介されている。

西洋医学を学んで母国で医者をしているトルコ人。びっくりするほどの血糖値でげっそりしている患者を前に、欧米人や日本人は「あなたはこういう不摂生をしたからこうなりました。これからも今の状態を続けるとこうなります。」と原因と結果をこれでもかと説明し、その後の危機感を募らせる。でも、そのトルコ人は「甘い(いい)男からは糖が出るのさ」とニヤリと笑うのだそうだ。弱者を前にして因果関係を説くことは非人間的だとして・・・。んん?その「弱っている者=弱い者」の解釈はどうだろうか。ちょっとこじつけっぽくて微笑ましい。でも、彼らは本気でそう判断するのだ。

本書を読んでいて、心に留まった一説があった。

信仰を持っている人は、ある意味で、ラクに人生を生きてゆくことが出来る。困ったときには、神様に丸投げすることも出来るし、現実的には、宗教指導者の判断を仰ぐことも出来る。信仰をもたないと、何事も自分の頭と理性で処理しなければならない。頼れる神様を失ってしまうと、生きていくことの辛さを味わうことになる。

「神様に丸投げ」という表現が面白いが、これは親鸞のいう「南無阿弥陀仏」と同じであると思う。つまり、自分ではどうにもできないところにすべてを委ねるのだ。どうにもできないもの(人)が神である。親鸞を学び始めて、自分なりにその教えを日々の生活に人生に、どう活かせばよいのかを考えているときに、「自分の力ではどうにもならない。自分(人間)は非力だ」というところから始めれば、ずいぶんと気を楽にして生きられるのではないかと思い至った。現代は、信仰を持つ人が少なく、みんな自分で何とかしなくてはいけないと思い込んでいるから、うつ病が増えたり、やたらと癒しを求める人が増えたのだと思う。「えいっ」と丸投げできる対象がいつも自分の心にあれば、悩むこともない。常に癒されているからわざわざお金を払って癒された気になりに行く必要もないのかもしれない。


民衆が語る貧困大国アメリカ

2011年08月14日 | BOOK

●民衆が語る貧困大国 アメリカ スティーヴン・ピムペア 著

人を見た目で判断してはいけないように、本を値段で判断してはいけませんが・・・この本は3800円いたします。出しているのは「明石書店」。と言っても「魚ん棚」ではなく、外神田にある「東京の」出版社です。では、さっそく「東京の」出版社が出している「3800円の」本を読み進めましょう。

世界一といわれる国、アメリカのほころびが噴出している今、この本を手に取れたことを幸運に思います。この本は9章で構成されています。

生きのびる  ねぐら  食べる  働く  愛する  尊敬  逃亡  降伏  抵抗

タイトルどおり民衆が赤裸々に語っています。 例えば「食べる」であれば、「○曜日の朝は○時からどこどこの裏口から何メートルのところに息を潜めている者が多くいる。その前夜はパーティがあって「豪華な残飯」にありつけるのをみんな知っているからだ。」という具合に。他にも「教室でぐったりしている少女に声をかけると「大丈夫。おなかが空いているだけだから」と答えた。家でなにか食べてくるように、と言うと「今日はお姉ちゃんが食べる日だから」と返ってきた。」なんていうのもありました。

サブタイトルに「福祉小国」のフレーズがあるのですが、読んでいくうちに決して福祉が整っていないのではなくて、福祉を受ける者に対する社会の扱い方が辛辣だというところに問題があるのではと思うようになりました。福祉を受ける者は常に劣等扱いされ、嫌がらせを受け、人権は与えられません。それをみせれば無料になるというフードチケットを店頭で見せると大声で罵られるか、屈辱以外のなにものでもないような視線を向けられるか・・・。安い日給で厳しい任務に耐え、空腹に耐え、やっと子どもに新しい服を買ってやれた・・・そんな努力も調査員は踏みにじり、「服が買えるなら、福祉手当の支給は打ち切りね」と言い放って帰ってしまう、そんな国のようなのです。女性は言います、「手当は明日の生活には役立つ。でも、本当に欲しいのは「仕事」なのだ」と。

日本でも生活保護受給者には多少の偏見はあることとは思いますが、社会からあからさまに否定されることはないと思います。「かっこ悪いから」と言って受給を進めても拒む人はいても「社会から劣等扱いされ、自由や人間の尊厳を奪われるから」と答える人はいないのではないでしょうか。もちろん、手当で贅沢していては打ち切られるでしょうが、先述の「母親心」への理解はあるように思います。

さらに思い進めると、アメリカという国は、そうして国のバランスを取っている「小さな国」なのではないかということです。日本で言う「」のような。社会が貧民を作り出して、厳しい環境におくことで、そうでない人々の均衡が保たれる、そしてその自覚がない、そんな国ではないかと思います。なぜ、そんな風な均衡の保ち方をするのか・・・各々の中に潜在している「ネガティブ」の投影とみればどうでしょうか。排除したいネガティブを持ち続けるのが辛くて、それに立ち向かうのではなくて、他人に具体的な形をもって投影して、それを痛めつけることで自らのポジティブを護る・・・ちょっと突飛でしょうかね。


ズッキーニの黒こしょう和え

2011年08月08日 | 今日のごはん

ズッキーニは、炒めて食べることが多いのですが、何か他の料理方法はないかなと考えて・・・。思いつかず、生で食べてみました。

ズッキーニを適当な大きさに切って、塩と黒こしょう、オリーブオイルで和えます。以上。

このレシピは、カレーと同じ「二日目が美味しい」レシピです。初日も、しばし時間をおいて味を馴染ませたつもりだったのですが・・・青臭いホームランメロンのようで、単なる「うり」でした。。二日目になると味がすっかり馴染んでよいバランスへ。でも、水分が出るかなと思って、塩・黒こしょうを控えめにしたので基本の「うり路線」の払拭には至りませんでした。水分が出すぎる心配はなさそうなので、次回はもう少し濃い味にしてメリハリをつけたいと思います。


木を見る西洋人 森を見る東洋人

2011年07月30日 | BOOK

●木を見る西洋人 森を見る東洋人 リチャード・E・ニスベット 著

自分が常々、半無意識的に興味を抱いていることについての本を読み、ふむふむと新たな思考の「皺」を刺激されたのち、私はどうやらその後ろにあと一冊(か何冊か?!)「数珠」を繋げたいと思う性格らしい・・・。と回りくどい言い方をしてしまった。先日読んだ「ポジティブ病の国、アメリカ」。確かにそういう表現をすれば日本人は「ネガティブ病」かもしれない。どうして、そんな違いが生まれるのか・・・。そんな疑問を読後にちょこっと抱いていたら、本屋さんでこのタイトルを目にした。「本は本を呼ぶ」んだねぇ・・・。

文化の違いはずぅっと昔から脈々と培われ、受け継がれてきたものなので、「ここのポイントでこうだから今の違いがある!」とは言えない。筆者は、古代ギリシアと古代中国まで遡っている。

当時のギリシア人は他に類を見ない強烈な「個人の主体性の観念」を持っていたと言う。つまり、自分の人生を自分で選択したままに生きるという考え方で、それは現代人よりも明確であったと言う。ギリシア人の幸福の定義は、制約から解き放たれた人生を謳歌することだったと言うから、相当なものだ。そして、ギリシア人のもうひとつの特徴は「世の中に対する好奇心の強さ」であった。自分たちが生きる世界の本質に思いをめぐらし、根本原理を探究することは、ギリシア人の楽しみの源だった。「school」はもちろん学校と言う意味だが、その語源はギリシア語で「余暇」を表す「schoe(スコレー)」だそうだ。ギリシア人にとっての余暇は、知識を追い求める自由だった。・・・絶句。

これに対し、古代中国における主体性に対応する概念は「調和」だった。例はたくさん書いてあって紹介しきれないが、例えば中国人は単旋律の音楽を好んだ。歌い手たちは全員同じメロディーを歌い、楽器は揃って同じ旋律を奏でた。ギリシア人は楽器や声がみな別のパートを担当するような交響楽を生み出したことからも、両者の違いが明らかだろう。

この後は、色々な角度から西洋人と東洋人に課題を与え、その実験結果の違いを記述している。それをつらつらと読んでいると・・・寝てしまった!!実験結果って耳で聞いて視覚で実感すると面白いのだけれど、文字で追うと脱落してしまうのは私だけかしら・・・。

そんな中でも面白いと思う「違い」があった。

①「個人主義」「相互独立」的な西洋人は、子育て中、子どもに対して自分自身で選択するように促す。「今すぐベッドに行く?それとも先にお菓子を食べてからにしたい?」というふうに。「相互強調」的な東洋人は、子どものための選択を親が行なう。昨今は就職先も親が行なったり・・・。あ、それは日本だけか。

②物事の認知についても違いがある。西洋人は「個人」の集まりで成り立っているため「個ー集合」で認知し、東洋人は「協調」を重んじたため「部分ー全体」で認知する。だから、「にわとり・牛・草」が一枚の紙に書かれていて、それをカテゴリングせよと課題を与えると西洋人は「にわとりと牛が仲間だ」と答え、東洋人は「牛と草が仲間だ」と答える。私はもちろん「牛と草」派だ。「にわとりと牛」と言われて一瞬「??」「あ、動物つながり!あ~、そう考えるか!」という感じである。

③西洋人は「個人」を重視するため、そのバックボーンとして「信念を正当化する原理」を追い求めた。だから、極力矛盾を避けようとする。東洋人は「調和」を重視するため、折衷的な解決や包括的な主張を好み、一見矛盾するふたつの議論を両方とも是認しようとする。だから、「相反する感情の同居」はない。喜んでいるか、悲しんでいるか、怒っているか、怯えているか、どれか「ひとつ」なのだ。これに対し、東洋人はその「同居」が起こり得る。「うれし泣き」「泣き笑い」は日本ではよくあることだが、西洋人にとっては理解できないという。「優勝したのになんで泣くの?」といった具合である。

さて、この本。結論がいささか単純すぎた・・・「どちらが良い悪いもない。われわれが目指すべきは両者の融合である」・・・いや、そりゃそれが出来ればいっちばん良いでしょうよ。個々人レベルで、文化レベルで、国家レベルで、違いを求めて融合させてゆくには、どんな方法があるのか、こんなに多くの実験レポートがあるならそこまでツッコんでほしいと切に思った。「あの人とこの人、性格が正反対。足して二で割れば良いのに」と言っているのと同じ。それが出来ない中で、上手に二人を生かしていくにはどうするか、読者としてはそこのところのヒントが欲しかったな。。


しらたきのたらこまぶし風

2011年07月28日 | 今日のごはん

 

あまり彩りのよい「画」でなくて恐縮ですが。

そして、あまり公表はしていませんが、私、しらたきってプロフィールの「好きなたべもの」に入れてもいいくらい、好きです。麺のようにずずずっと食べるのがたまりません。

作り方は簡単!

しらたきは適当な長さに切ります。ずずずっとしたい方は長めに・・。フライパンを熱して一気に投入。酒を入れます。本当はここでたらこを入れるのですが、あいにく冷蔵庫になかったので、「たらこふりかけ」で代用・・・。ふりかけ自体に塩分があるので、香り付け程度にしょうゆを加えて火を止めます。

これだけです。

自宅の近くに「100円ローソン」があります。そこのしらたき(もちろん100円)が意外と美味しい。ローソンも「自信をもっておすすめ」と言っています。今度まとめ買いしよう。こんにゃくは日持ちがするので良いですね。欠点はひとつでも結構重いこと。自転車で行こう。

「生いも」などという高級のではなく、いたって普通のしらたきで作りましょう。ささっと作る一品なだけに、その方が味の馴染みも良いし、軽やかに食べられます。