血液がさらさらになるなどの期待から平成12年前後にブームとなった海洋深層水が再び脚光を浴びている。「食」に対する安全志向の高まりから、食品や飲料などの分野で注目され、海洋深層水からつくられるミネラルの需要が拡大しているためだ。無機ミネラルの総合メーカー、赤穂化成(兵庫県赤穂市)が販売する業務用の海洋深層水の売上高は、この5年間で約2.2倍に拡大。家庭向けも通信販売を中心に底堅い需要を保っている。
■水深200メートル以上の海水
海洋深層水は一般的に、光合成に必要な太陽の光が届かない水深200メートル以上の深さで水温が急に冷たくなる層にある海水を指す。陸上の水に比べて大気に含まれる化学物質にさらされる機会が少なく、成分は極めて清浄で安全だ。その上、体内でつくることのできないミネラルを多数含んでおり、現代人に不足しがちなミネラルを補う「海の水」として注目されてきた。
赤穂化成は、旧科学技術庁が昭和60年に海洋深層水の研究と開発のモデル地区に指定した高知県室戸市の沖合2200メートルの水深344メートルからくみ上げた海水を100%使用した海洋深層水を商品化し、平成10年に販売を始めた。
食品・飲料メーカーに出荷する業務用「海洋深層水ミネラル」は、出荷先ごとの用途に応じてマグネシウムやカルシウム、カリウム、ナトリウムのミネラルの比率を調整し、提供する。食塩や苦汁を中心とした無機ミネラルの総合メーカーとして培ってきた技術を生かしており、この点が高い成長を支えている。27年3月期の業務用の売上高は前期実績を23%上回った。5年前と比べると2.24倍の売上高だ。
■天然原料100%の“強み”
好調な販売を支えているのは、消費者の「食」に対する安全志向の高まりだ。 業務用は食品・飲料メーカーに食品原料として出荷され、主に食品添加物の代替材としてミネラル強化や炊飯助材として使われる。通常、ミネラル強化には食品添加物が用いられ、添加物表示が義務付けられる。だが、海洋深層水のミネラルを使用した場合は天然原料100%のため、その必要がない。
「食」の安全志向から消費者は「無添加」の表示も重視している。食品・飲料メーカーもこうしたニーズに応える必要があり、天然原料の海洋深層水ミネラルには「追い風が吹いている」(赤穂化成)。中でも、乳幼児や高齢者向けの食品は、特に安全・安心が重視されており、出荷先と売り上げの拡大につながっている。
また、海洋深層水を用いると、コメがふっくら、つやつや、もちもちに炊き上がる。これはコメの細胞壁にマグネシウムが付着し、炊飯時に細胞が壊れるのを防ぐメカニズムがあるためだ。最近はスーパー、コンビニエンスストアの弁当などやパックご飯などにも用途が広がっている。
一方、家庭向けの主力商品としては、「海の深層水 天海(あまみ)の水」をこれまでに7種類以上発売してきた。室戸沖の海洋深層水を100%使用し、独自の製法で塩分だけを取り除いた海洋深層水飲料だ。
10年の販売開始以来、累計販売本数は今年3月末時点で1億2000万本(500ミリリットル換算)を超えた。消費者の健康志向を背景に一大ブームにわいた12年前後の販売動向とは比較にならないものの、現在も通信販売を中心に安定した販売実績を挙げている。2リットル入りボトルで600~800円と、一般的なミネラルウオーターに比べて価格が高いにもかかわらず、指名買いが多い。赤穂化成では「長く『天海の水』を飲まれてきた方が効果を認めて飲み続けているのではないか」とみている。(鈴木伸男)
◆水のミネラル 水に含まれるミネラル量は通常「硬度」で示される。含有するマグネシウムとカルシウムで算出し、数値が高いほどマグネシウムとカルシウムを多く含む。日本では一般的に硬度100未満が「軟水」、硬度300以上を「硬水」、その中間は「中硬水」と分類される。陸上の水を使う国産ミネラルウオーターの多くは軟水に当たる。赤穂化成は顧客ニーズに応じ、さまざまな硬度の海洋深層水を提供している。
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