作り主なき荒畑は 草紅葉 羽音はげしく 群れすずめたつ ー夢 蔡ー
何の変哲もない草原の風景である。広さは、ざっと三反歩≒1000坪≒3300㎡と言った所だろうか。作り主を失ってから数年経った。写真の中央部の緑は、桑の木である。養蚕の名残である。(時々、農家の人が、邪魔になるから切っているので、大木にならない。) 畑は、ホウレン草、ニラ、ゴボウ、西瓜、サツマイモetc,と活躍した。今は哀しい【 耕作放棄地 】である。
「 耕作放棄地は、全国で、埼玉県の面積に等しい」 と、 TV で報じていたが、どの時点での調査・統計に基ずたものか、発表はなかった。はたして、その程度の面積ですむのだろうか。どうも、見積もりが低いような気がする。
減反や 田の蓼赤し 秋は過ぐ -夢 蔡ー
この田のように、減反の届けをしたまま放置されいる。田の奥の方にセタカカアワダチ草や、背の高いブタ草の群落が目立ち始めた。こうなるともう手が付けられなくなる。時間が経てば経つほどに、田んぼを元に戻すためには、たいへんなコストがかかる。
秋深し 稲穂は重く 地をはらう 豊穣の香に あたたかき色 -夢 蔡ー
この田の豊穣は、やがて失われる。減反手当て ¥30,000と引き換えにである。作り主は、充分に年老いている。
耕作放棄の田畑は、雑草群落と化して、群れたスズメの基地となる。隣田んぼの取り入れ前の稲穂が、狙われる。雀は、実り具合をよく知っている。
この国のグランド・デザインはおかしい。地方で有数の田圃地帯に、まづ広い片側2車線の道路が走る。やがて、住宅団地・工場団地・ショッピングセンターが、誘致される。
確かに、圃場は、大規模に整備されている。稲作用コンバインは、大型化する一方である。しかし、そこから取り残されてしまう小面積の田圃が幾つもある。大型耕作機が入って行けないのだ。こうした田畑が、いずれ耕作放棄地となってしまうのである。
白鷺は餓え来たりしか 荒れた田にしばし留まり 果敢なきて去る -夢 蔡ー
白鷺が、荒れ地化しつつある田んぼの畦に立ち続けている。カエルやザリガニは、とっくに土の中にもぐり込んでしっまただろう。足元のすぐ下は、水路があるのだが、コンクリートで固められていて、ドジョウは、棲めない。しばらくして、シラサギは、重そうに羽ばたき、立ち去った。獲物は、無しである。
その土地特有のバランスが崩れて、生物相は、すっかり貧相となってしまった。生きものたちにとっても、豊かさが失われて、棲みにくい世界となってしまったようである。