諸葛菜草叢記

 "窓前の草を除かず“ 草深き(草叢)中で過ごす日々の記

続・春光 燦々と

2012-03-29 21:59:38 | 日記・エッセイ・コラム

 諸葛菜がようやく咲き始めました。このブログを始める動機でもありました。待っておりました次第です。

 草叢(くさむら)を 紫染むる 諸葛菜 ー夢蔡ー

   よき風に乗り 蝶の舞い来る   -春芳ー

20120329_008 ▲ 標準和名(植物図鑑)は、オオアラセイトウ(大紫羅欄花)と言う。“アラセイトウ”はストックのことで、それより大きいからこの名前にした。(牧野富太郎命名)

 春光に誘われて、本日は、粕川に流れ込む小川に沿って、歩いてみました。釣り人がおりました。立ち止まって見ておりました。しばらくして、10cm位の“オイカワ”が釣れました。

 釣り自慢 メダカがついに 尺鮒に ー夢蔡ー

   * 注; 尺鮒  尺=30センチ、∴大きい鮒ーー

20120329_005オ イ カ ワ 【追河】 河川の中流から下流域、湖、沼、小川などに棲息する。雑食性で、藻、水草、水生昆虫を餌とする。簡単な釣りの仕掛けで釣れる。ヤマベ、セバヤ、ハヤ、ハイ、チンマ、etc 地域によって、呼び名が違う。▲ 属名 Zacco→ザコ=雑魚。かのシーボルトによる命名。

 釣りあがったオイカワの体側が、オレンジ、グリーン、スカイブルーにほどよく配色されて、美しい。これは、春に見られる“雄の婚姻色”である。本格的なシーズンに入ると、この模様が、さらに濃くなり、背びれ、はらびれが骨ばって迫力ある“雄”になる。

 ーー樹下の春ー七草の花ー都合により休み。

  読み止(さ)しの ページ這いゐる 夜蜘蛛かな ー夢蔡ー

  

         ーー 了 ---

 

  

  

 

 


春光は燦々と

2012-03-27 22:01:47 | 日記・エッセイ・コラム

 「草木がいやが上に生茂ることを「いやおい」と言ったことにより、“弥生”」と言われております。(「歳時記」による) 今年は、 寒気団が行ったり来たりで、天気が安定いたしませんでしたが、本日は、誠に、好い日和であります。春の光りが燦々とする中で、草木は生茂り初め、諸々の鳥が、はしゃいでいるように見えます。ーー

 菜の花や 朝日仰いで 茎立てり 花は顔(かん)ばせ 競うが如し ー夢蔡ー

20120327_014 土堤の菜の花に勢いがでてまいりました。もうすぐ、200メートル近い花の回廊が出来上がります。菜の花に近寄りますと、甘い芳香に包まれます。花アブ、モンシロ蝶が、集まり始めました。

ー 岸の菜の花の向うを、“カルガモ”のカップルが、流れに乗って通り過ぎて行きます。

 かるがもは 連れ添い泳ぎ 春来(きた)る 川面穏(おだ)しく 菜花は岸に ー夢蔡ー

20120327_012 ▲かるーがも【 軽鴨】 マガモ(前掲)と同じくらいの大きさ。雌雄はともに褐色冬場は、沼で集団生活していたが、春になり、水辺の草地を求めて移動して来た。日本に留まり繁殖すので、夏鴨とも呼ばれる。   

 ーー樹下の春ーー七草の花ー②ーー

  よく見れば薺花さく垣ねかな (芭 蕉) ▲ 路傍、畑地、空地の至る所に自生します。 妹が垣根“三味線草”の花咲ぬ (蕪村)  石段に“ぺんぺん草”や安養寺 (華女) ▲ 種の形からくる別名で、どことなく軽妙な感じの句ができる。 狭庭辺に“貧乏草”の小叢(こむら)かな (夢蔡) *これは、チョッと淋しいか。--

20120325_001_2 ▲ ナ ズ ナ 【薺】 アブラナ科の越年草。冬越しの時、葉は、ロゼット状になり、地に伏す。また、“根生葉”と言う。いかにも、“根性”ありそうである。*学名の一部が、「bursa pastoris」で、“羊飼いの財布”を意味する。種の形からである。

 ー地に伏して、春を待ちいち早く開花する。写真白い花の中央部に蕾が次の開花を待っている。下部は既に種である。開花→結実の時間をずらして、子孫を段階的に生えさせる戦略である。

 春来れど 耕人は無き 畑は荒れ なずな群れ咲き 三月去りゆく ー夢蔡ー

   

        ーーー了ーーー

 


春雨に草萌える

2012-03-23 18:38:41 | 日記・エッセイ・コラム

  ひともとの紅梅ゆえに来てもみる (いはほ) 粕川公園の紅梅が、盛りになりました。

 午前中は、雲がたれこめて、何時降りだしてもおかしくない空模様。愛犬の朝散歩の用意をしている時、まだ裸木の栗の梢で、鳴きました。「♪~ででっ~ぽうぽう~#」 きじ鳩です。二度ほど鳴きました。雌鳩に“春”の合図を送る声ですーそれから、しばらくして雨になると、飛び去って行きました。

 きじ鳩の 春の時計は 動き初そ)む 試すが如く 低くひと声 ー夢蔡ー    

20120216_008 ▲ き じーば と 【雉 鳩】 ハトの一種。翼の色が、雌の雉に似ている。山鳩、つちくればと。

  ー主に、田園地帯に棲む。また。市街地の公園など人間の生活圏の近くを棲息域にしている身近な野鳥である。ーー

 ー 江戸時代中期の民謡集 「山家鳥虫歌」(岩波文庫)に、次のような歌が収録されておりました。参考までに引用します。

 後世ごせ)を願やれ爺様や婆様 年寄り来いとの鳥が鳴く 

  「年寄り来い」は、山鳩の鳴き声。「 班鳩。つちくればと 古俗の称なり。東国にて、きじばとと称す。--関西にて 『としよりこい』と鳴くといへり。東国にて、ててっぽうゝ~。かかァほうほう~と鳴くという。」 

 いくら民間伝承の民謡だからと言って、今日、このような事を囃していたら、たちまちに、DV,非人道主義者の烙印が押されます。注意しましょう。

 ーー樹下の春ー春の七草ー①ー

  籠(こ)もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち この丘に “菜”摘ます児 家聞かな 名告(の)らさね・・・ ー雄略天皇ー(万葉・巻1-1)

 *意訳 籠と堀り串を持って、若菜を摘んでおいでの娘さん、名前を教えてください。私は霊威に満ちあふれる大和の国の天皇です・・。

 “若菜摘む”は、神事です。七種粥で邪気をはらう行事が、古代中国にあり伝承。転じて、七草の祝、若菜の節。*ちなみまして、七草の花を撮り、順次記録します。

 ー庭の陽だまりに咲く、“はこべ”の白小花をマクロ撮影しました。▼ 花弁が10枚位に見えますが、実際は、五弁花です。咲くとき二枚に割れ、花としての効率をあげる、工夫とか~

20120321_004 ▲ は こ べ 【 繁 縷 】 Stellaria   media  山野、路傍に自生する。葉は卵形で柔らかい、春に白色の小花を開く。鳥の餌または食用に供す。利尿剤にもなる。あさしらげ、はこべら。*Stell (ステラ)は、ラテン語の星

はこべ食む うさぎの赤い 目の光り ー夢蔡

  子供のころ、兎を飼っていた。飼うのは、雌兎で、子供を産ませた。近所の子供たちも、同じことをやっていた。子兎が乳離れををする頃をみはからって、初老の男が、大きい竹篭をつけた自転車で定期的に回ってきた。そして、一匹十円で買い取っていった。雄は、子供を産まないからと、タダ同然だった。(昭和30年頃)

     ーーおわりーー


春色はいまだし

2012-03-19 21:43:07 | 日記・エッセイ・コラム

  春分 3月20日(14時14分) 「暑さ寒さも彼岸まで」 と言っても、いまだ寒さの勝ちです。春色に染まりません!。景色が整いません。

 水仙は、年明け直ぐくらいのタイミングで、話題にするのが良いのですが、健気に良く咲着続けておりますので、まずは、写真にいたしました。ー

  水仙の花のみだれや藪屋敷 ー惟 然 (芭蕉門下十哲の一人)。まるで、我が狭庭を見られている様な俳句であります。最初に咲いたには、2月の初めの厳冬期でした。4時過ぎに日が落ちておりましたが、短い日の中で良く咲きました。今は、日照時間が、一時間以上延びました。まだ、咲き続けております。

  水仙や 日照延びて 咲き疲れ ー夢蔡ー

  いまだ笑わぬ 山路歩きて ー途穂ー

20111206_019 ▲【ス イ セ ン 】 ひがんばな科 学名 Narcissus Tazetta L.  大昔、遠く南欧の地中海地方の原産地から、シルク・ロード経由で中国に運ばれた。そして、日本へはるばるとやって来た。

 「スイセンは、中国名「水仙」の音読みです。この草が、海辺を好んで良く育つことから、“水仙”と名づけられた。仙は仙人の仙で、この草が、俗を脱している海辺に住む仙人に擬えているのだろう。」(牧野富太郎 「植物知識」)

20120317_013 ▲【Narcissus】は、麻痺の意。この草には、ナルキッシネと言う毒成分がある。【Tazetta】は、イタリア名の「小皿」の意。花中の副花冠が「小皿」に見える。ナルキッシネ=ナルシス。

  水仙の花言葉ーーうぬぼれ・自己愛・エゴイズム=“ナルシスト”ー

 かんばしくない花言葉は、自分の姿に惚れ惚れとして他を省みなかった神話のナルシスのせいである。有名な話だから詳細は略。

20120317_007 ▲ 6枚の花弁が見えるが、外列3片は萼。内列3が花弁。花中央に副花冠があり、雄しべ・雌しべが収納されているが、実を結べない。すべて球根による“クローン増殖”である。

 スイセンの花を中国では、金盞銀台(きんさんぎんだい)と呼ぶ。すなわち、銀白色の花の中に、黄金の盞(さかずき)が載っている形容である。(牧野富太郎)

20120317_008 ▲ 写真①、撮影した後、上下反転加工した。

20120317_011写真を更に拡大。すると、黄金の盞(さかずき)が浮かび上がった。花より放つ佳香と相まって、自然の造化の妙に感動する。美味し酒に乾杯ーー

      本日はこれにてーー了ーー


巨雲流れて春寒し

2012-03-12 22:02:07 | 日記・エッセイ・コラム

  雨が降り続いた後、強い北風が吹いて、西北の国境を越え雲が流れてきます。マア~それなりに陽射しが強いのがすくいですが、陽かげると冷たくて寒い!ーー

 巨いなる雲のかたまり陽をとざし 昏(くら)き梅林風立つを待つ ー夢蔡ー

20120312_027 ▲ 枝が混み合っていたのを、昨年の秋に、かなり落としました。残った枝がガンッバテおりますが、例年よりも寒さが厳しいせいもあって、蕾が動きません。少々、切りすぎましたかナ!?

 ーー 樹下ひそやかな春 犬ふぐり----

 春まだ浅き日から、沼沿いの道端、田の畦、空き地 etcに、淡青色の小花が叢ら咲いておりましたが、この寒さのせいで、どことなく勢いがありませんでした。しかし、このところの良い陽射しで、小花が数を増して開き、元気いっぱいになって来ました。

  陽に向けし青き花弁のけなげさよ 言うをはばかる 犬陰嚢(いぬふぐり)とは ー夢蔡ー

20120312_013【おおーいぬのふぐり】 大犬の陰嚢 (Veronica persica) 欧州原産。明治の頃に渡来した帰化植物。自生種の【イヌフグリ】よりやや大きいので、この名前になった。『イヌフグリ』は、結実した「さく果」が、“∞” こんな形をしているので、名ずけられたという。(牧野植物図鑑) 

 犬ふぐ里 蒼き四弁 の 宇宙かな ー夢蔡ー

20120312_037可憐で美しい花は、その学名は、「 Veronica 」(ヴェロニカ)ではじまっておりますが・・。

  ヴェロニカ 【Veronica】とはーー

 十字架を背負わされて、ゴルゴタの丘に向かうイエス・キリストの血と汗にまみれた顔を布でふいたという 伝説的聖女 の名前です。(広辞苑より)

 瑠璃色の小さい花は、聖ヴェロニカの化身だったのです。

 また、イエスがした血の後が、花の小叢になったとも言われているそうです。

20120313_006

 カルチャー・ギャップとは、こう言うことかも知れません。こなた、形から即物的・アミニズム的に、かたや、文化の先に“創造主”の存在を・・・

 犬ふぐり星のまたたく如くなり ー虚子ー のように、俳諧の大御所のお陰で、季語として定着しており、今では、「いぬふぐり」と言っても、この花を、誰もが思い浮かべるようになって来ているようです。

           めでたしゝゝ・・終わりーー