



毎年8月下旬に名古屋で開催される「にっぽんど真ん中まつり」は盛大で人の波で身動きが取れないくらいだ。特に名古屋の夏は暑いので、踊りはさらに熱くなる。見物人も熱気で頭がクラクラする。
車椅子に乗って、手には鳴子を持ち踊っている人たちのグループが演技を始めた。パレードの流れの中で、彼らは、彼らなりに踊りを表現しようと、手はあわただしく動かしていた。その中で、ふと気がつくときれいなひとが私の目に飛び込んだ。決して自分好みで言っているのではなく、誰でもが認めるような美しさだ。しかし、彼女は、暑さとパレードの疲れ、あるいは大勢の観客やカメラの列に戸惑ったのか、表情が疲れているように見えた。私は、どうしてもカメラのシャッターを押せなかった。
家に帰ってからも、そのことが気になり、パンフレットでそのグループの紹介した記事を読んだ。「楽しくなければ福祉ではない!」を合言葉に活動しているサークルという。私は、そのフレーズがたいへん気に入り、ますます興味がわいた。
次の日、私は、どうしても彼女を撮りたくて、会場に再度足を運んだ。彼女は、にこやかな表情をして踊っていた。
半年後、ある福祉フェスティバルの会場で彼女に再会した。私は、初対面でしかも憧れのひとと目が合った瞬間、緊張で頭が真っ白になった。心に余裕がなかった私は、立ったままで話をし、失礼な対応したことに大いに反省した。
障害をもったひとが、普通に社会に出て、見ず知らずにひとと気軽に話し合えるような環境を作ることが福祉の第一歩かもしれない。