その1、その2とだらだら書いてきましたが、
やっと実際の計算です。
計算に使う式はこのページにまとめられています。
またこちらのぺージに実際の計算例も載っています。大変参考になりました。
ただ、アルミのプロペラシャフトでの事例というのは私が探した限りでは見つかりませんでした。計算には当然材料の性質(密度、強度など)が関わります。強度については数値を当てはめるだけで良いのですが、危険回転数の計算ではそのままの式を使うことはできませんので少し考えないといけません(これについては後述します)。
ではでは本題に。まずは強度です。
ねじり応力、と書いてありますがねじりによるせん断応力って言うのが正しいですかね?
ともかくぺラシャに発生する応力を求め、それが材料の許容応力に対して1.6の安全率を持っているか?を証明するわけです。
シャフトの強度計算の式は、材料力学の教科書に載っている式のトルクの部分を計算しやすいようにしてあるものです。
τ:シャフトに生じる最大せん断応力
d1,d2:シャフト外径及び内径
η:トランスミッションの伝達効率
Q:エンジンの最大トルク
r1:第一速の減速比
です。
では計算してみます。
カタログでも引っ張り出してクルマの諸数値を、また、先のDavidさんからのメールを頼りにアルミペラのスペックをあてはめて行きます。
最大トルク:27.8kgm
第1速減速比:3.214
シャフト外径:76.2mm
シャフト内径:69.85mm
伝達効率ηは0.9としておくのが慣例のようですのでならっておきます。
でねじりによるせん断応力は
となりました。
これが許容応力に対して1.6の安全率をもっているかを確かめなければなりません。
先ほど紹介したページでは許容応力は材料の引張り強さの60%とされています。
これは一般にせん断強さが引っ張り強さの60%程度になることからだと思います。
今回のシャフトの材料はA6061-T6ですので、引張り強さは約310MPa(31.6kg/mm^2)です。アルミ材の中では高強度な部類です。
よって許容応力と安全率は
となり、1.6以上ありますので強度的にはめでたく許容範囲内、ということになります(^o^)/
さてさて次は危険回転数の計算です。
もともと純正が2ピースなのはこの危険回転数を引き上げるためです。
それを1ピースにしてしまうという話なので、これがどんな値になるかが興味深いところです。
危険回転数の式は
Nc:危険回転数(rpm)
d1,d2:シャフト外径及び内径(mm)
L:シャフト長さ(mm)
ということになっていますが、これもシャフト計算用にアレンジされた形です。
応力の式はそのままで良かったのですが、これは鋼材のシャフトを前提として係数が算出されているので、材料が違う場合はそのままでは使えません。アルミの計算例は無いものか…と思って探してみましたが、簡単には見つかりませんでしたので自分でやってみました。
軸の危険回転数を求める式のもともとの形は、ものの本によるとこんな感じです。
(危険速度、軸の自重のみの場合)
Nc:危険回転数(rpm)
l:軸長さ(m)
E:材料の縦弾性係数(Pa)
I:断面二次モーメント(m4)
g:重力加速度(m/s2)
w:単位長さあたりの重量(N)
回転軸の危険回転数には軸の自重が大きくかかわるのでここには単位長さの重量が入っていますが、先のシャフト公式では係数の中に入ってしまっているのです。
でこの式を中空軸用に変形すると・・・
こんな感じになりました。
ここで
do,di:シャフト外径、内径(m)
ρ:材料の密度(kg/m3)
です。
因数分解とかすごくひさしぶりにやりました…
A2-B2 = (A+B)(A-B)です(笑)(^-^;)
(追記)
上の式で、√(E/ρ)という部分があります。これが材料特性は反映される部分です。
で、鋼材とアルミのE、ρはそれぞれ3:1くらいなので、(E/ρ)の値はあんまり変わりません。ということは危険回転数は材料がスチールでも、アルミでも、実はあまり変わらないということなんです。考えてみれば当たり前のことなんですけど、この記事書いているときには気づきませんでした…(^o^;)
ただ、だからと言って構造変更の際に何食わぬ顔してスチール用の式で出しても通るのか?はわかりませんが…
これに、今回のシャフトの寸法と、A6061の密度(2700kg/m^3)、弾性係数(70GPa)を入れて実際に計算してみると、
となりました。
一応ここで計算したのと近くなったので多分そんなに間違ってないと思います(笑)。
これが、プロペラシャフトの最高回転数に対して1.3の安全率を持っていればOKとなるわけですが、計算してみると
ちょwwwぎりぎりwwwwww
ま、まあぎりぎりとはいっても1.3以上あるんだから問題はない!
なんてちょっと焦ったりもしたのですが、よくよく考えたら5速で6750まで回すってありえなくないか?と気づきました。
試しにこのときの速度を計算してみると・・・
261km/h!
うん、大丈夫だ、こんなに出ない(笑)
そもそも純正状態なら180km/hでリミッターが作動なわけで、ぺラシャの最高回転数はそこから算出したほうが現実味があるように思います。
で速度から逆算すると、約4640rpmほどになります。
ほっ、普通に使う分にはまったく問題なさそうですね(^-^)
と、いうことでだらだらやってきたアルミぺラシャの計算ですが、多分問題なく構造変更できると思います。ただし、私自身はまだ構造変更していませんし(というかまだ取り付けてすらいないw→とりつけました)、陸運局にきちんと問い合わせしたりしたわけではないので実際のところはよくわかりませんのでご了承を。もし実際に1ピースアルミぺラで構造変更したって方がいらっしゃったらぜひ情報をお聞かせ願いたいと思います。ではでは!
最後にあらためて、参考にしたサイトと本を書いておきます。
・自動車検査独立行政法人・・・車検の元締め(?)審査規定のPDFもあります。
・播州迷頁-雅屋-・・・構造変更レポートほか面白コンテンツ多数。
・有限会社スピリア・・・構造変更についてたくさん情報ありです。
・機械設計法・・・軸の設計(強度計算、危険速度など)について記載あり。(手元にあったのでこれを参照しましたが、同様のタイトルの本ならこういった内容は書いてあると思います。)
・株式会社川村製作所・・・各種計算スクリプトあり。危険回転数の検算に(笑)
・株式会社 渡辺商事・・・アルミニウムハンドブックに材料の機械的性質などの記載があります。
・プロペラシャフトのアルミ化 その1(プロローグ)
・プロペラシャフトのアルミ化 その2(構造変更に必要な書類は?)
・プロペラシャフトのアルミ化 その3(強度検討) ←いまここ
・プロペラシャフトのアルミ化 その4(プロペラシャフトの交換)
・プロペラシャフトのアルミ化 その5(構造変更)
やっと実際の計算です。
計算に使う式はこのページにまとめられています。
またこちらのぺージに実際の計算例も載っています。大変参考になりました。
ただ、アルミのプロペラシャフトでの事例というのは私が探した限りでは見つかりませんでした。計算には当然材料の性質(密度、強度など)が関わります。強度については数値を当てはめるだけで良いのですが、危険回転数の計算ではそのままの式を使うことはできませんので少し考えないといけません(これについては後述します)。
ではでは本題に。まずは強度です。
ねじり応力、と書いてありますがねじりによるせん断応力って言うのが正しいですかね?
ともかくぺラシャに発生する応力を求め、それが材料の許容応力に対して1.6の安全率を持っているか?を証明するわけです。
シャフトの強度計算の式は、材料力学の教科書に載っている式のトルクの部分を計算しやすいようにしてあるものです。
車両諸元とシャフト緒元 |
τ:シャフトに生じる最大せん断応力
d1,d2:シャフト外径及び内径
η:トランスミッションの伝達効率
Q:エンジンの最大トルク
r1:第一速の減速比
です。
では計算してみます。
カタログでも引っ張り出してクルマの諸数値を、また、先のDavidさんからのメールを頼りにアルミペラのスペックをあてはめて行きます。
最大トルク:27.8kgm
第1速減速比:3.214
シャフト外径:76.2mm
シャフト内径:69.85mm
伝達効率ηは0.9としておくのが慣例のようですのでならっておきます。
でねじりによるせん断応力は
となりました。
これが許容応力に対して1.6の安全率をもっているかを確かめなければなりません。
先ほど紹介したページでは許容応力は材料の引張り強さの60%とされています。
これは一般にせん断強さが引っ張り強さの60%程度になることからだと思います。
今回のシャフトの材料はA6061-T6ですので、引張り強さは約310MPa(31.6kg/mm^2)です。アルミ材の中では高強度な部類です。
よって許容応力と安全率は
となり、1.6以上ありますので強度的にはめでたく許容範囲内、ということになります(^o^)/
さてさて次は危険回転数の計算です。
もともと純正が2ピースなのはこの危険回転数を引き上げるためです。
それを1ピースにしてしまうという話なので、これがどんな値になるかが興味深いところです。
危険回転数の式は
Nc:危険回転数(rpm)
d1,d2:シャフト外径及び内径(mm)
L:シャフト長さ(mm)
ということになっていますが、これもシャフト計算用にアレンジされた形です。
応力の式はそのままで良かったのですが、これは鋼材のシャフトを前提として係数が算出されているので、材料が違う場合はそのままでは使えません。アルミの計算例は無いものか…と思って探してみましたが、簡単には見つかりませんでしたので自分でやってみました。
軸の危険回転数を求める式のもともとの形は、ものの本によるとこんな感じです。
(危険速度、軸の自重のみの場合)
Nc:危険回転数(rpm)
l:軸長さ(m)
E:材料の縦弾性係数(Pa)
I:断面二次モーメント(m4)
g:重力加速度(m/s2)
w:単位長さあたりの重量(N)
回転軸の危険回転数には軸の自重が大きくかかわるのでここには単位長さの重量が入っていますが、先のシャフト公式では係数の中に入ってしまっているのです。
でこの式を中空軸用に変形すると・・・
こんな感じになりました。
ここで
do,di:シャフト外径、内径(m)
ρ:材料の密度(kg/m3)
です。
因数分解とかすごくひさしぶりにやりました…
A2-B2 = (A+B)(A-B)です(笑)(^-^;)
(追記)
上の式で、√(E/ρ)という部分があります。これが材料特性は反映される部分です。
で、鋼材とアルミのE、ρはそれぞれ3:1くらいなので、(E/ρ)の値はあんまり変わりません。ということは危険回転数は材料がスチールでも、アルミでも、実はあまり変わらないということなんです。考えてみれば当たり前のことなんですけど、この記事書いているときには気づきませんでした…(^o^;)
ただ、だからと言って構造変更の際に何食わぬ顔してスチール用の式で出しても通るのか?はわかりませんが…
これに、今回のシャフトの寸法と、A6061の密度(2700kg/m^3)、弾性係数(70GPa)を入れて実際に計算してみると、
となりました。
一応ここで計算したのと近くなったので多分そんなに間違ってないと思います(笑)。
これが、プロペラシャフトの最高回転数に対して1.3の安全率を持っていればOKとなるわけですが、計算してみると
ちょwwwぎりぎりwwwwww
ま、まあぎりぎりとはいっても1.3以上あるんだから問題はない!
なんてちょっと焦ったりもしたのですが、よくよく考えたら5速で6750まで回すってありえなくないか?と気づきました。
試しにこのときの速度を計算してみると・・・
261km/h!
うん、大丈夫だ、こんなに出ない(笑)
そもそも純正状態なら180km/hでリミッターが作動なわけで、ぺラシャの最高回転数はそこから算出したほうが現実味があるように思います。
で速度から逆算すると、約4640rpmほどになります。
ほっ、普通に使う分にはまったく問題なさそうですね(^-^)
と、いうことでだらだらやってきたアルミぺラシャの計算ですが、多分問題なく構造変更できると思います。ただし、私自身はまだ構造変更していませんし(
最後にあらためて、参考にしたサイトと本を書いておきます。
・自動車検査独立行政法人・・・車検の元締め(?)審査規定のPDFもあります。
・播州迷頁-雅屋-・・・構造変更レポートほか面白コンテンツ多数。
・有限会社スピリア・・・構造変更についてたくさん情報ありです。
・機械設計法・・・軸の設計(強度計算、危険速度など)について記載あり。(手元にあったのでこれを参照しましたが、同様のタイトルの本ならこういった内容は書いてあると思います。)
・株式会社川村製作所・・・各種計算スクリプトあり。危険回転数の検算に(笑)
・株式会社 渡辺商事・・・アルミニウムハンドブックに材料の機械的性質などの記載があります。
・プロペラシャフトのアルミ化 その1(プロローグ)
・プロペラシャフトのアルミ化 その2(構造変更に必要な書類は?)
・プロペラシャフトのアルミ化 その3(強度検討) ←いまここ
・プロペラシャフトのアルミ化 その4(プロペラシャフトの交換)
・プロペラシャフトのアルミ化 その5(構造変更)
羨ましい!
それに計算までして。
NAでギリだとTTでは・・・・
それに来年春に550PSのエンジンに
積み替え予定なんです。
やっぱネジ切れちゃうかな??
ちょっと探した限りではアルミペラの計算例がなかったのでやってみました。
ギリギリになったのは危険回転数の方で、トルクとは無関係ですからTTでも同じです。それに速度もTTはファイナルが違いますので5速7000回転で約300km/h(!)です。
強度の方はずいぶん余裕がありますので大丈夫だと思いますよ。あくまで計算上の話ですので壊れても責任もてませんがw