中学~大学時代の友人αちゃんが夫さんの仕事の都合でイギリスに引っ越し。機が熟し、必ず遊びに行くという約束を果たすことになった。
ついでにケンブリッジ以外もまわろうと画策。イギリスの他の都市や周辺国も検討した結果、数ヶ月前の乗り継ぎの際にいいなと思ったオランダへ足を伸ばすことにした。
イギリス訪問は2回目となるため(2)とし、8日間の旅を2つに分けて前半をその1とする。前半では下の地図中の➊~➌を訪れた。また、後の下線部の数字とも一致している。
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1・2 ロンドン ⇒ケンブリッジ (2010年12月25日)
いつもの旅であれば空港到着後の移動に気を揉むところだが、今回はαちゃんの夫さんがヒースロー空港に車で迎えに来てくれることになった。かつてこれほどお気楽に出国便に搭乗したことはないだろう。
14時25分、ロンドンに到着。夫さんとはすれ違うこともなく、無事に会えた。αちゃんの結婚式で新婦側のスピーチを務めたり、日本の新居に泊まりに行ったりしたので、それなりの認識レベルにあったのが幸いした。ともあれ、ケンブリッジまで約100㎞・・・決して近くはない距離を出迎えてもらったことに感謝しかない
冬の日は短く、αちゃん家に着く頃には真っ暗になっていた。とけ残った雪が寒々しく目に映る。マイナス4℃とは・・・予想していたとはいえ、かなり寒い。
αちゃんには子供が2人いて、5才の娘ちゃんには以前会ったことがあったが、2才の息子君に会うのは初めてだった。とても仲良く遊んでいる姉弟は面差しが似ている。2人ともαちゃん似だなぁ
クリスマスということもあり2人にプレゼントを渡したら、素直にはしゃいだり、贈り物の中身を嬉しそうに私に見せてくれたり・・・子どもを持ったことがない自分には新鮮だった。
αちゃんはいい仕事してるなぁ
2 ケンブリッジ (2010年12月26日)
お昼過ぎに家を出て、αちゃんと2人 ケンブリッジ観光に出かけた。大学で研究しているαちゃんの夫さんは冬休みに入っていて、子供の面倒を見てくれることになった。
クリスマス休暇でバスがお休みのため、歩いて中心街へ向かう。大学時代、ワンダーフォーゲル部に属していたαちゃんは相変わらず健脚だった。
下の画像は、私たちの道行きに並走していた川の風景。舗装されていない土の上には雪がうっすら積もり、川岸には鴨やアヒルがひしめいていた。
岸辺にあまり手を加えず、緩々と川面に近づけるのがいいわぁ・・・
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雪に覆われた大地を冬の陽光が弱々しく照らし出す。
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αちゃん家から徒歩40分くらい。町の中心に近づいてくると、観光用のパント(小舟)が目につく。
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クリスマス休暇であれこれやっていないものと諦めていたが、中心街に来てみると多くのお店がオープンしていた。嬉しい裏切り
とはいえカレッジ群はお休みで入れないため、ケム川をパントで下りながら大学の雰囲気を味わう【この川下りはケンブリッジ観光の定番。13世紀、川の東岸に築かれたカレッジは年月を経るうちに川を越え西へとキャンパスを広げていったため、両者をつなぐ橋がケム川にいくつも架けられている。東に壮麗なカレッジ群、西にバックスと呼ばれる緑豊かなキャンパスを見ながら、パントは橋をくぐり進んで行く】。
北から乗船した私たちの前に最初に現れたのは、セント・ジョンズ・カレッジのため息橋【敢えてイタリアはヴェネツィアの橋と同名で称されている。その由来は諸説あり、①カレッジの勉強についていけない学生がため息をつく、②門限を過ぎて中に入れない学生がため息をつく、③試験の出来が悪くてため息をつく、④橋の美しさにため息をつく、等】。
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セント・ジョンズ・カレッジのチャペル。
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その次はキッチン・ブリッジ【かつて台所へつながる通路だったことから命名された。名建築家クリストファー・レン(17世紀後半、大火後のセントポール大聖堂を再建)の設計なので、レン・ブリッジとも。ケム川に架かる橋の中で2番目に古い】。
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欄干の彫刻はポセイドンか
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同じくセント・ジョンズ・カレッジ内のニューコート【学生の急増に対応して19世紀につくられた比較的新しめの建物。その外観から、ウェディング・ケーキの愛称あり】。
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次のトリニティー橋には紋章が彫られていた。
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橋の向こうにはトリニティー・カレッジの建物が見える。
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小舟は浮かんでいる薄氷を上手く避けながら漕いでいく。氷上に立つ鴨。
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クレア橋【ケンブリッジ最古の橋。清教徒革命時、付近一帯のほとんどの橋が破壊されたなか、唯一残った】。
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キングズ・カレッジのチャペルは遠目にも麗しい。あぁ・・・中に入って見たかったなぁ
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最後は数学の橋【18世紀半ば築、幾何学的構造から命名された】。木製の太鼓橋は、それまでに過ぎてきた橋とはずいぶん趣が異なる。
レンガの建物はクイーンズ・カレッジ。最も橋の写りが良いためチョイス、αちゃんにモザイクをかけた。
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南下してきたパントは数学の橋で方向転換し、もと来た流れを遡上していく。最初にくぐった ため息橋まで戻ってくれば、もうすぐゴール。
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往復40分・・・ひたすら寒かった
腰に貼ったカイロが効いて上半身は暖かかったのだが、問題は下半身。パント業者さんがフリースの膝掛けを貸してくれたのだが、それだけではつま先が凍るように冷たくなり、下船した後もしばらく感覚がないほどだった
スノーブーツを履いていかなかったことがつくづく悔やまれる
川べりを後にして、中心街へ向かう。
ラウンド・チャーチも閉まっていた【12世紀前半の創建、ノルマン様式。円形の教会はイギリスに4つしかないという】。これも入れなくて残念至極
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先ほど眺めた ため息橋を擁するセント・ジョンズ・カレッジのフロントゲート【立像彫刻は聖人ジョン(ヨハネ)で、足元にはアトリビュートの鷲。16世紀初め、聖ジョン病院の敷地にカレッジが建てられたことにちなんでいる。ジョンの下には架空の動物(一見シカのようだが、羊の頭・レイヨウの胴体・ゾウの尾、自由に回転する角を持つ)に守られたカレッジの紋章。動物の両脇にはカレッジの創立者マーガレット・ボーフォート(国王ヘンリー7世の母)のシンボルである、格子戸と薔薇】。
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カレッジに面したトリニティー通り。
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トリニティー・カレッジのグレイトゲート【大きい扉と小さい扉を持つ門は、数あるケンブリッジのカレッジの門の中でこれだけ。立像彫刻はカレッジの創立者、国王ヘンリー8世。右手に椅子の脚を持つのは、修道院を解散したり離婚するために宗教を変えたりした奇人であることを表現しているらしい】。
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ケンブリッジの街中をブラつきながら土産物屋をのぞき、カフェでひと休み。ホット・チョコレートを飲み、名物のミンスパイを食べた【イギリスの伝統的なクリスマス菓子で、生地の中にドライフルーツやスパイスから成るミンスミート(フィリング)を入れて焼く。東方の三博士が誕生後のイエス・キリストに贈った没薬が起源とされ、13世紀に十字軍が引き揚げる際にアラビア半島からレシピを持ち帰ったという。当初は名のとおりミンス=ひき肉も入っており、ゆりかごを意識した楕円形であった。時代の経過とともにひき肉の量が減っていき、ついには排除された。12月25日~1月6日まで1日1個ずつ口にすると、新年に幸運が訪れるという言い伝えもある】。
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2・1 ケンブリッジ ⇔ ロンドン (2010年12月27日)
イギリスでまる1日過ごす最後の日、αちゃんと連れ立ってロンドンへ。前日同様、夫さんが子供たちの世話を引き受けてくれた。
αちゃん家からタクシーで駅へ、そして鉄道に乗った。下の画像はケンブリッジ駅構内の様子。
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1時間前後でロンドンはキングズ・クロス駅に到着。地下鉄に乗り換え、ウェストミンスター駅で下車。地上に出ると、ビッグ・ベン【国会議事堂の時計塔】が出現
1997年にも来たので、2回目の対峙になる。あの時は中学・高校時代の友人Dちゃんと一緒だった。絵本や映像でしか見たことのなかった2階建てバスを目の当たりにして、ワクワクしながら飛び乗ったことを懐かしく思い出した。
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閑話休題・・・。私たちが向かったのは、チャーチル博物館(戦時内閣執務室)【第2次世界大戦中、チャーチル首相は大蔵省の建物の地下に防空壕を兼ねた執務室をつくらせて政治をとった。1945年8月に戦争が終わると閉鎖されたが、1986年からその一部が公開されている】。この記事を書くにあたり調べたところ、ロンドンで人気の博物館のひとつのようで、行列待ちになることもあるらしい。オフシーズンのせいか並ばずに入れたが、館内にはそれなりの観光客がいた。
博物館は2つに大別され、蝋人形も交えて大戦中の様子を再現しているパートと、ウィンストン・チャーチルの生涯を紹介するパートがあった。
まずは前者から。チャーチルが閣議をおこなった場所。
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蝋人形が受話器を耳に当てている。何か機密情報がもたらされたのか
薄暗いせいもあるが、緊迫感漂う雰囲気。
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戦場を視察するチャーチルの写真。
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空襲を受けるロンドンの様子。1941年5月、この付近の国会議事堂(ウェストミンスター宮殿)にも爆弾が投下されたと説明パネルに書いてあり・・・自分が立っている場所の数十年前の様子を思わず想像し、背筋が寒くなった。
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チャーチルが好んだ葉巻。
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チャーチルが愛飲したシャンパーニュ、Pol Roger【1849年、パリの北東150㎞の地エペルネに設立。木樽を使わずステンレスタンクを使用し、ブドウの繊細さを引き出す。また、今なお機械ではなく昔ながらの手作業で動瓶を行う数少ないメゾンのひとつ。2004年からはイギリス王室御用達となった】。興味のある方は是非! 自分は訪問の数年後、飲む機会に恵まれた
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チャーチルが携行した懐中時計。
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1945年2月、ヤルタ会談の写真。手前に座る3人は、左からチャーチル、フランクリン・ローズヴェルト(アメリカ大統領)、スターリン(ソ連書記長)。
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ヨーロッパの地図。地図の上にのせた透明シートに、各国が占領しているエリアが黒ペンで書き込まれていて、実に生々しい。
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こちらは日本の地図。広島の辺りが灰色に塗られている。
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チャーチルが食事をとった場所。戦時中だからか、質実剛健な感じ。
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チャーチルの寝室。
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博物館を出た後、トラファルガー広場へ向かって500mほど北上。
広場に堂々とそびえるネルソン記念柱の脇にはクリッペがあった。
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近づくとこんな感じ。中央の幼子イエスを筆頭に、かなりシンプルな作風。
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トラファルガー広場のクリスマス・ツリー【第二次大戦中(1940年4月)のドイツによる侵攻の際にイギリスが援軍を派遣したことに感謝して、1947年以降 ノルウェーからトウヒの木(Norwegian spruce/モミの木と同じ常緑針葉樹)が毎年贈られる。イルミネーションが簡素なのはノルウェーの伝統という】。
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広場に面するナショナル・ギャラリー。ん
ボトルシップがある。
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帆は和柄のような気がする・・・ひょっとして和紙かもなぁ。
今回 記事を書くにあたり調べたところ、2010年5月~2012年1月の期間限定で展示されていたネルソン船らしいと判明した。
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広場を後にした私たちはソーホーにある中華街でランチ。いつものことながら、画像がなくてごめんなさい
備忘録によると、牛肉の豆鼓炒めと焼きそばを食したようである。
最後はショッピングへ。キングリー通りのクリスマス装飾。
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デパート リバティにやって来たのは、当時日本でリバティ・プリントが流行っていて興味があったから。
足を踏み入れてみて、木材を多用した内装に圧倒される。メッチャ高級感あるわ~
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クリスマス・リースとか、ロバとか小さめトナカイとか・・・
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リバティの前後、これまた当時日本で人気だったCat〇 Kidstonの支店で買い物し、さらにデパート セルフリッジまで足を伸ばした。
実は、この時初めて年末にヨーロッパを訪れた自分。12月25日を過ぎると急速にクリスマス装飾が姿を消す日本の現象は一般的ではなく、キリスト教国では1月上旬までツリーやクリッペを飾ってクリスマスを祝うこと、またセールが行なわれ買い物シーズンになることを知ったのだった。文化の違いって面白い
最後にキングズ・クロス駅へ向かう途次、バスの2階にてパシャリ
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再び列車でケンブリッジに戻った私たちを夫さんと子供たちが迎えてくれた。皆で記念写真を撮ったのだが、もちろん載せるわけにもいかない
2・1・3 ケンブリッジ ⇒ロンドン ⇒アムステルダム (2010年12月28日)
朝5時40分出発のつもりだったのに、目覚めたら5時半で焦った! 急きょ、αちゃんの夫さんにバス停まで車で送ってもらう事態になり、αちゃんと別れを惜しむ時間もなく
そして、たたき起こされ運転してくれた夫さんには本当にご迷惑をおかけしてしまった・・・
娘ちゃんと息子君の母親を1日半独占した挙句、最後までドタバタで・・・αちゃん家にとって、自分は嵐のような存在だったに違いない
おかげさまで6時発の空港行きのバスには十分間に合い、3時間ほどでヒースロー空港に到着。11時40分の離陸まで時間に余裕アリと思ったのも束の間、カウンターは長蛇の列
チェックインまで結局1時間以上待たされた。混みあうのはクリスマス休暇だから
その間にポストを探してハガキを投函。中身が丸見えのスケルトンなポストは昔のままね。1997年の初訪問時もそうだったなぁ。
セキュリティーチェックにも30分ほどかかり、自由の身になった時にはboarding timeまで20分ほど。空港のパブでコーニッシュ・パスティ食べたかったなぁ
結局、今回の旅で食したイギリス名物はミンスパイのみかぁ・・・
アムステルダムまではたった1時間20分だった。朝が早かったので、ウトウトしているうちに到着。しかし、寝ぼけていたことを後で悔やむことになる
入国審査の時に、緊張感なくボーッとしていた。眠いのと、イギリスではαちゃん夫妻に頼りきってのほほんとしていたツケがまわってきた。審査官の超速英語が聞き取れず、しどろもどろで的外れな受け答えをしたため、不審者とみなされて係員?警察?を呼ばれてしまった
とはいえ、入国審査の斜め後ろのカウンターへ連れて行かれ、あらためて質問を受けるだけで済んだのは不幸中の幸い。帰路の航空券やアムステルダムのホテル予約を確認されて、所持しているユーロの額も聞かれたうえ見せるように言われ・・・結局、問題なしとされてパスできた。この一件で分かったことは、英語をろくに喋れない大人はこの国ではヤバい人とみなされること。
のっけから躓きつつも、スキポール空港から国鉄でアムステルダム中央駅へ移動。降りてホテルへ向かう前、駅前の観光案内所に寄る。数日間の滞在を見越して、バス&トラム回数券(ストリッペンカールト)を買おうとするも、大混雑
ひいた番号札は85番、38番の客対応中という状況に腹をくくり、20分で順番がまわってきた。待ちながら、タクシーに乗ろうかと途中くじけそうになったりもしたが、辛抱した甲斐はあった。ライツェ広場から約400mのホテルを予約していたのだが、行き方を詳しく教えてくれてとても親切だった。
駅前からトラムに乗り、難なくホテルにたどり着いた。ホテルのフロントの人もmapをくれたりして、わりとフレンドリー。
でも・・・この部屋はヒドイよー よりにもよって4泊もするのに、この狭さは自分の旅史上初かも。広さ5㎡くらいの屋根裏のような部屋。お風呂はタブなし、もちろん冷蔵庫なし、ポットも無し
アムステルダム中心部に近いほど高値なので、トラムでの移動を前提に街外れのホテルで妥協したんだけど、それでも決して安くはなかったのに
ま、あちこち混んでたしな・・・泊まる所があるだけマシと思うことにしよう。
14時に着陸したのだが、何やかやで気づいたら16時を過ぎていた。ホテルから数百mの国立ゴッホ美術館まで歩き、閉館1時間半前に入場。
自画像をモチーフにしたパネルが出迎えてくれた。
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有名どころでいうなら、「アイリス」と「寝室」は日本の展覧会に出張中だった。
「ひまわり」を前に、その昔 新宿の東郷青児記念美術館で見た別の「ひまわり」の記憶を引っ張り出そうと試みるも、うすらぼんやりの域を出なかった。あぁ・・・目に映すだけではダメなんだ、心で感得しなければ残らないんだ
自分の中で印象的だったのは、日本の浮世絵を模写した作品。
原画は歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」。梅の木のそのものよりも、オリジナルには無い左右の漢字に感銘を受けた。たとえが適切ではないかもしれないが・・・自分にとってアラビア文字とかドラヴィダ諸語の文字とかが絵に見えるように、ゴッホは全体を構成するモチーフの一部として漢字を描き加えたのではないだろうかと勝手に想像した。
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こちらの原画も歌川広重で、「江戸名所百景 大はしあたけの夕立」。絶妙に変更された背景の色彩に、もとの絵とはまた異なる魅力を感じる。
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そして、宗教的背景を持つ作品に心打たれた。ゴッホもキリスト教徒なんだなぁ、としみじみ思った。19世紀のオランダに生を受けた人だから至極当然なのかもしれないが、宗教色を感じる彼の作品をそれまで自分は目にしたことがなく、意識にのぼっていなかった。
レンブラントの原画を模写した「ラザロの復活」。
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ドラクロワの原画を模写した「ピエタ」。
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余談になるが、この記事を書くにあたり調べたところ、牧師の家に生まれたゴッホ。伝道活動にいそしみ、聖職者を目指していた時期もあったという。
そうだったのかぁ・・・
外に出ると、すっかり暗くなっていた。初日で様子が分からないため出歩きは控えることにして、トラムの車窓から目をつけていたアルバートハイン(Albert Heijn)へ【700店舗以上を擁するオランダ最大のスーパーマーケット・チェーン。アムステルダム市内にも店舗がたくさん】。ビールや総菜の種類が多くてテンション上がる
が、会計時にレジ袋がもらえず困惑・・・エコバッグなど用意していない自分、カバンに詰め込むしかなかった
エコなお国柄を痛感。てか、この後ずっとこんなだろうなぁ
ホテルへ戻って、部屋でひとり乾杯
備忘録によると、ビール Amstel【1870年創立、オランダでシェア4位の銘柄。命名の由来は、醸造所脇をアムステル運河が流れているから、また運河上流の氷を採取して製造するから。1968年にシェア1位のHeinekenに買収されたが、ブランド名は存続】等を飲みながらサーモンタルタル、ハム、サラダ、パスタを食した。これまた画像がなくて、ごめんなさい
★ 中締め ★
旅の後半では、日帰りでライデンにユトレヒト、キンデルダイクを訪れます。シーボルトに思いを馳せ、ミッフィーを愛で、冬空に煙る風車を眺め・・・
ピンボケながらオランダ料理も紹介します。お楽しみに~
ついでにケンブリッジ以外もまわろうと画策。イギリスの他の都市や周辺国も検討した結果、数ヶ月前の乗り継ぎの際にいいなと思ったオランダへ足を伸ばすことにした。
イギリス訪問は2回目となるため(2)とし、8日間の旅を2つに分けて前半をその1とする。前半では下の地図中の➊~➌を訪れた。また、後の下線部の数字とも一致している。
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1・2 ロンドン ⇒ケンブリッジ (2010年12月25日)
いつもの旅であれば空港到着後の移動に気を揉むところだが、今回はαちゃんの夫さんがヒースロー空港に車で迎えに来てくれることになった。かつてこれほどお気楽に出国便に搭乗したことはないだろう。
14時25分、ロンドンに到着。夫さんとはすれ違うこともなく、無事に会えた。αちゃんの結婚式で新婦側のスピーチを務めたり、日本の新居に泊まりに行ったりしたので、それなりの認識レベルにあったのが幸いした。ともあれ、ケンブリッジまで約100㎞・・・決して近くはない距離を出迎えてもらったことに感謝しかない
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冬の日は短く、αちゃん家に着く頃には真っ暗になっていた。とけ残った雪が寒々しく目に映る。マイナス4℃とは・・・予想していたとはいえ、かなり寒い。
αちゃんには子供が2人いて、5才の娘ちゃんには以前会ったことがあったが、2才の息子君に会うのは初めてだった。とても仲良く遊んでいる姉弟は面差しが似ている。2人ともαちゃん似だなぁ
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クリスマスということもあり2人にプレゼントを渡したら、素直にはしゃいだり、贈り物の中身を嬉しそうに私に見せてくれたり・・・子どもを持ったことがない自分には新鮮だった。
αちゃんはいい仕事してるなぁ
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2 ケンブリッジ (2010年12月26日)
お昼過ぎに家を出て、αちゃんと2人 ケンブリッジ観光に出かけた。大学で研究しているαちゃんの夫さんは冬休みに入っていて、子供の面倒を見てくれることになった。
クリスマス休暇でバスがお休みのため、歩いて中心街へ向かう。大学時代、ワンダーフォーゲル部に属していたαちゃんは相変わらず健脚だった。
下の画像は、私たちの道行きに並走していた川の風景。舗装されていない土の上には雪がうっすら積もり、川岸には鴨やアヒルがひしめいていた。
岸辺にあまり手を加えず、緩々と川面に近づけるのがいいわぁ・・・
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雪に覆われた大地を冬の陽光が弱々しく照らし出す。
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αちゃん家から徒歩40分くらい。町の中心に近づいてくると、観光用のパント(小舟)が目につく。
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クリスマス休暇であれこれやっていないものと諦めていたが、中心街に来てみると多くのお店がオープンしていた。嬉しい裏切り
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とはいえカレッジ群はお休みで入れないため、ケム川をパントで下りながら大学の雰囲気を味わう【この川下りはケンブリッジ観光の定番。13世紀、川の東岸に築かれたカレッジは年月を経るうちに川を越え西へとキャンパスを広げていったため、両者をつなぐ橋がケム川にいくつも架けられている。東に壮麗なカレッジ群、西にバックスと呼ばれる緑豊かなキャンパスを見ながら、パントは橋をくぐり進んで行く】。
北から乗船した私たちの前に最初に現れたのは、セント・ジョンズ・カレッジのため息橋【敢えてイタリアはヴェネツィアの橋と同名で称されている。その由来は諸説あり、①カレッジの勉強についていけない学生がため息をつく、②門限を過ぎて中に入れない学生がため息をつく、③試験の出来が悪くてため息をつく、④橋の美しさにため息をつく、等】。
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セント・ジョンズ・カレッジのチャペル。
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その次はキッチン・ブリッジ【かつて台所へつながる通路だったことから命名された。名建築家クリストファー・レン(17世紀後半、大火後のセントポール大聖堂を再建)の設計なので、レン・ブリッジとも。ケム川に架かる橋の中で2番目に古い】。
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欄干の彫刻はポセイドンか
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同じくセント・ジョンズ・カレッジ内のニューコート【学生の急増に対応して19世紀につくられた比較的新しめの建物。その外観から、ウェディング・ケーキの愛称あり】。
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次のトリニティー橋には紋章が彫られていた。
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橋の向こうにはトリニティー・カレッジの建物が見える。
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小舟は浮かんでいる薄氷を上手く避けながら漕いでいく。氷上に立つ鴨。
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クレア橋【ケンブリッジ最古の橋。清教徒革命時、付近一帯のほとんどの橋が破壊されたなか、唯一残った】。
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キングズ・カレッジのチャペルは遠目にも麗しい。あぁ・・・中に入って見たかったなぁ
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最後は数学の橋【18世紀半ば築、幾何学的構造から命名された】。木製の太鼓橋は、それまでに過ぎてきた橋とはずいぶん趣が異なる。
レンガの建物はクイーンズ・カレッジ。最も橋の写りが良いためチョイス、αちゃんにモザイクをかけた。
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南下してきたパントは数学の橋で方向転換し、もと来た流れを遡上していく。最初にくぐった ため息橋まで戻ってくれば、もうすぐゴール。
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往復40分・・・ひたすら寒かった
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川べりを後にして、中心街へ向かう。
ラウンド・チャーチも閉まっていた【12世紀前半の創建、ノルマン様式。円形の教会はイギリスに4つしかないという】。これも入れなくて残念至極
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先ほど眺めた ため息橋を擁するセント・ジョンズ・カレッジのフロントゲート【立像彫刻は聖人ジョン(ヨハネ)で、足元にはアトリビュートの鷲。16世紀初め、聖ジョン病院の敷地にカレッジが建てられたことにちなんでいる。ジョンの下には架空の動物(一見シカのようだが、羊の頭・レイヨウの胴体・ゾウの尾、自由に回転する角を持つ)に守られたカレッジの紋章。動物の両脇にはカレッジの創立者マーガレット・ボーフォート(国王ヘンリー7世の母)のシンボルである、格子戸と薔薇】。
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カレッジに面したトリニティー通り。
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トリニティー・カレッジのグレイトゲート【大きい扉と小さい扉を持つ門は、数あるケンブリッジのカレッジの門の中でこれだけ。立像彫刻はカレッジの創立者、国王ヘンリー8世。右手に椅子の脚を持つのは、修道院を解散したり離婚するために宗教を変えたりした奇人であることを表現しているらしい】。
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ケンブリッジの街中をブラつきながら土産物屋をのぞき、カフェでひと休み。ホット・チョコレートを飲み、名物のミンスパイを食べた【イギリスの伝統的なクリスマス菓子で、生地の中にドライフルーツやスパイスから成るミンスミート(フィリング)を入れて焼く。東方の三博士が誕生後のイエス・キリストに贈った没薬が起源とされ、13世紀に十字軍が引き揚げる際にアラビア半島からレシピを持ち帰ったという。当初は名のとおりミンス=ひき肉も入っており、ゆりかごを意識した楕円形であった。時代の経過とともにひき肉の量が減っていき、ついには排除された。12月25日~1月6日まで1日1個ずつ口にすると、新年に幸運が訪れるという言い伝えもある】。
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2・1 ケンブリッジ ⇔ ロンドン (2010年12月27日)
イギリスでまる1日過ごす最後の日、αちゃんと連れ立ってロンドンへ。前日同様、夫さんが子供たちの世話を引き受けてくれた。
αちゃん家からタクシーで駅へ、そして鉄道に乗った。下の画像はケンブリッジ駅構内の様子。
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1時間前後でロンドンはキングズ・クロス駅に到着。地下鉄に乗り換え、ウェストミンスター駅で下車。地上に出ると、ビッグ・ベン【国会議事堂の時計塔】が出現
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1997年にも来たので、2回目の対峙になる。あの時は中学・高校時代の友人Dちゃんと一緒だった。絵本や映像でしか見たことのなかった2階建てバスを目の当たりにして、ワクワクしながら飛び乗ったことを懐かしく思い出した。
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閑話休題・・・。私たちが向かったのは、チャーチル博物館(戦時内閣執務室)【第2次世界大戦中、チャーチル首相は大蔵省の建物の地下に防空壕を兼ねた執務室をつくらせて政治をとった。1945年8月に戦争が終わると閉鎖されたが、1986年からその一部が公開されている】。この記事を書くにあたり調べたところ、ロンドンで人気の博物館のひとつのようで、行列待ちになることもあるらしい。オフシーズンのせいか並ばずに入れたが、館内にはそれなりの観光客がいた。
博物館は2つに大別され、蝋人形も交えて大戦中の様子を再現しているパートと、ウィンストン・チャーチルの生涯を紹介するパートがあった。
まずは前者から。チャーチルが閣議をおこなった場所。
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蝋人形が受話器を耳に当てている。何か機密情報がもたらされたのか
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戦場を視察するチャーチルの写真。
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空襲を受けるロンドンの様子。1941年5月、この付近の国会議事堂(ウェストミンスター宮殿)にも爆弾が投下されたと説明パネルに書いてあり・・・自分が立っている場所の数十年前の様子を思わず想像し、背筋が寒くなった。
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チャーチルが好んだ葉巻。
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チャーチルが愛飲したシャンパーニュ、Pol Roger【1849年、パリの北東150㎞の地エペルネに設立。木樽を使わずステンレスタンクを使用し、ブドウの繊細さを引き出す。また、今なお機械ではなく昔ながらの手作業で動瓶を行う数少ないメゾンのひとつ。2004年からはイギリス王室御用達となった】。興味のある方は是非! 自分は訪問の数年後、飲む機会に恵まれた
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チャーチルが携行した懐中時計。
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1945年2月、ヤルタ会談の写真。手前に座る3人は、左からチャーチル、フランクリン・ローズヴェルト(アメリカ大統領)、スターリン(ソ連書記長)。
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ヨーロッパの地図。地図の上にのせた透明シートに、各国が占領しているエリアが黒ペンで書き込まれていて、実に生々しい。
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こちらは日本の地図。広島の辺りが灰色に塗られている。
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チャーチルが食事をとった場所。戦時中だからか、質実剛健な感じ。
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チャーチルの寝室。
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博物館を出た後、トラファルガー広場へ向かって500mほど北上。
広場に堂々とそびえるネルソン記念柱の脇にはクリッペがあった。
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近づくとこんな感じ。中央の幼子イエスを筆頭に、かなりシンプルな作風。
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トラファルガー広場のクリスマス・ツリー【第二次大戦中(1940年4月)のドイツによる侵攻の際にイギリスが援軍を派遣したことに感謝して、1947年以降 ノルウェーからトウヒの木(Norwegian spruce/モミの木と同じ常緑針葉樹)が毎年贈られる。イルミネーションが簡素なのはノルウェーの伝統という】。
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広場に面するナショナル・ギャラリー。ん
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帆は和柄のような気がする・・・ひょっとして和紙かもなぁ。
今回 記事を書くにあたり調べたところ、2010年5月~2012年1月の期間限定で展示されていたネルソン船らしいと判明した。
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広場を後にした私たちはソーホーにある中華街でランチ。いつものことながら、画像がなくてごめんなさい
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最後はショッピングへ。キングリー通りのクリスマス装飾。
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デパート リバティにやって来たのは、当時日本でリバティ・プリントが流行っていて興味があったから。
足を踏み入れてみて、木材を多用した内装に圧倒される。メッチャ高級感あるわ~
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クリスマス・リースとか、ロバとか小さめトナカイとか・・・
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リバティの前後、これまた当時日本で人気だったCat〇 Kidstonの支店で買い物し、さらにデパート セルフリッジまで足を伸ばした。
実は、この時初めて年末にヨーロッパを訪れた自分。12月25日を過ぎると急速にクリスマス装飾が姿を消す日本の現象は一般的ではなく、キリスト教国では1月上旬までツリーやクリッペを飾ってクリスマスを祝うこと、またセールが行なわれ買い物シーズンになることを知ったのだった。文化の違いって面白い
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最後にキングズ・クロス駅へ向かう途次、バスの2階にてパシャリ
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再び列車でケンブリッジに戻った私たちを夫さんと子供たちが迎えてくれた。皆で記念写真を撮ったのだが、もちろん載せるわけにもいかない
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2・1・3 ケンブリッジ ⇒ロンドン ⇒アムステルダム (2010年12月28日)
朝5時40分出発のつもりだったのに、目覚めたら5時半で焦った! 急きょ、αちゃんの夫さんにバス停まで車で送ってもらう事態になり、αちゃんと別れを惜しむ時間もなく
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娘ちゃんと息子君の母親を1日半独占した挙句、最後までドタバタで・・・αちゃん家にとって、自分は嵐のような存在だったに違いない
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おかげさまで6時発の空港行きのバスには十分間に合い、3時間ほどでヒースロー空港に到着。11時40分の離陸まで時間に余裕アリと思ったのも束の間、カウンターは長蛇の列
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その間にポストを探してハガキを投函。中身が丸見えのスケルトンなポストは昔のままね。1997年の初訪問時もそうだったなぁ。
セキュリティーチェックにも30分ほどかかり、自由の身になった時にはboarding timeまで20分ほど。空港のパブでコーニッシュ・パスティ食べたかったなぁ
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アムステルダムまではたった1時間20分だった。朝が早かったので、ウトウトしているうちに到着。しかし、寝ぼけていたことを後で悔やむことになる
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入国審査の時に、緊張感なくボーッとしていた。眠いのと、イギリスではαちゃん夫妻に頼りきってのほほんとしていたツケがまわってきた。審査官の超速英語が聞き取れず、しどろもどろで的外れな受け答えをしたため、不審者とみなされて係員?警察?を呼ばれてしまった
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のっけから躓きつつも、スキポール空港から国鉄でアムステルダム中央駅へ移動。降りてホテルへ向かう前、駅前の観光案内所に寄る。数日間の滞在を見越して、バス&トラム回数券(ストリッペンカールト)を買おうとするも、大混雑
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駅前からトラムに乗り、難なくホテルにたどり着いた。ホテルのフロントの人もmapをくれたりして、わりとフレンドリー。
でも・・・この部屋はヒドイよー よりにもよって4泊もするのに、この狭さは自分の旅史上初かも。広さ5㎡くらいの屋根裏のような部屋。お風呂はタブなし、もちろん冷蔵庫なし、ポットも無し
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ま、あちこち混んでたしな・・・泊まる所があるだけマシと思うことにしよう。
14時に着陸したのだが、何やかやで気づいたら16時を過ぎていた。ホテルから数百mの国立ゴッホ美術館まで歩き、閉館1時間半前に入場。
自画像をモチーフにしたパネルが出迎えてくれた。
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有名どころでいうなら、「アイリス」と「寝室」は日本の展覧会に出張中だった。
「ひまわり」を前に、その昔 新宿の東郷青児記念美術館で見た別の「ひまわり」の記憶を引っ張り出そうと試みるも、うすらぼんやりの域を出なかった。あぁ・・・目に映すだけではダメなんだ、心で感得しなければ残らないんだ
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自分の中で印象的だったのは、日本の浮世絵を模写した作品。
原画は歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」。梅の木のそのものよりも、オリジナルには無い左右の漢字に感銘を受けた。たとえが適切ではないかもしれないが・・・自分にとってアラビア文字とかドラヴィダ諸語の文字とかが絵に見えるように、ゴッホは全体を構成するモチーフの一部として漢字を描き加えたのではないだろうかと勝手に想像した。
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こちらの原画も歌川広重で、「江戸名所百景 大はしあたけの夕立」。絶妙に変更された背景の色彩に、もとの絵とはまた異なる魅力を感じる。
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そして、宗教的背景を持つ作品に心打たれた。ゴッホもキリスト教徒なんだなぁ、としみじみ思った。19世紀のオランダに生を受けた人だから至極当然なのかもしれないが、宗教色を感じる彼の作品をそれまで自分は目にしたことがなく、意識にのぼっていなかった。
レンブラントの原画を模写した「ラザロの復活」。
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ドラクロワの原画を模写した「ピエタ」。
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余談になるが、この記事を書くにあたり調べたところ、牧師の家に生まれたゴッホ。伝道活動にいそしみ、聖職者を目指していた時期もあったという。
そうだったのかぁ・・・
外に出ると、すっかり暗くなっていた。初日で様子が分からないため出歩きは控えることにして、トラムの車窓から目をつけていたアルバートハイン(Albert Heijn)へ【700店舗以上を擁するオランダ最大のスーパーマーケット・チェーン。アムステルダム市内にも店舗がたくさん】。ビールや総菜の種類が多くてテンション上がる
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ホテルへ戻って、部屋でひとり乾杯
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★ 中締め ★
旅の後半では、日帰りでライデンにユトレヒト、キンデルダイクを訪れます。シーボルトに思いを馳せ、ミッフィーを愛で、冬空に煙る風車を眺め・・・
ピンボケながらオランダ料理も紹介します。お楽しみに~