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織の記録

織り糸への準備

2023-09-06 10:11:47 | 手紡ぎ糸

紡ぎ終えた綿糸は汚れや油分を抜く為「精練」をします。

これは、この後染色や糊付けがムラなく出来るための必要作業です。

紡いだ糸は、まず綛に上げます。

(綛の作り方については、後に詳しく紹介します)

① 糸の重量の20倍の水を鍋に入れ、糸重量の5%の重曹を入れて加熱します。

② 重曹が溶けたら乾いたままの糸を入れます。

 この時糸は油を含んでいるので、鍋の中で浮いてきます。

③ 中火で沸騰させ糸が沈んでから30~60分弱火で煮る。

 但し、糸が液面から浮かび上がらないように、時々糸を液の中に沈めてやる。

④ 時間になったら糸を取り出して十分水洗いする。

 重曹が残っていると染色にムラが出来るので、

 流水の中で水洗いと絞りを繰り返す。

洗い終えた綛は撚りが強く出るので、しっかりさばいて乾す。

この時綛の下に綿棒などのような棒を渡して、重りを掛けると伸びて

後の枠上げが楽になりますが、あまり重い重りでは糸の撚りが伸び過ぎてしまうので

綛がゆったりと伸びる程度の重りを掛けるとよいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


綿から糸へ

2023-09-04 14:57:15 | 手紡ぎ糸

綿打ちを終えた綿を糸に紡ぐ道具は、世界中にその国の風土や文化に適した形で用いられてきました。

写真は日本の紡ぎ車です。

ただし、どの道具を使うにも準備される綿は、

繊維の向きを整えて、引き出しやすいようにふんわりとした形になています。

畳んだ形で送られてきた綿は広げるとシート状になっています。

その一枚を取り出して繊維に沿って手のひら巾の長い帯に裂きます。

間違っても鋏は使わないで下さい。

さらにのそ帯状を手のひらの大きさに裂きます。

裂いた綿は一枚ずつ割り箸など細い棒状のもの(篠、竹)に巻き付けていきます。

棒を使わず、ふんわりと巻くだけでも良いです。

これを綿の篠巻き作りと言い、中の篠を抜いて紡ぎ車に掛けるものは「ジンキ巻き」と呼ばれています。

 注意:一枚裂くごとに巻きます。まとめて巻いて繊維の向きが違うと紡ぎにくくなります。

写真はジンキ巻きの白綿と備中綿

日本では上記の写真の紡ぎ車が使われてきました。

これには、和綿の繊維の短さにあると考えられます。動輪一回転が伝えるツムの回転は

洋の紡毛機をはるかに超えるもので、短い繊維の綿はこの回転によって細く紡ぐことが出来るわけです。

また、日本には椅子に座る文化がなかったから、という専門家もいます。

床に座る文化と日本綿の繊維が作り上げた「紡ぎ車」と、思うと感慨深いものがあります。

同じようにインド綿も繊維の短いものが多く

ガンジーの不服従運動で有名になった「チャルカ」も日本の紡ぎ車と同じです。

これはスピンドルという道具です。

コマの回転力を利用したもっとも古くて新しい、糸紡ぎの原理をシンプルに表した糸車です。

自作でき、綿さえあればどこでも紡ぐことができます。

中南米やアジアなど世界中で使われています。

国によって形は様々、紡ぐ素材も違います。でも原理は同じ

歩きながら、おしゃべりしながら各々が好きな時に好きな場所で紡ぐことが出来るこの道具は最高なのかもしれませんね。

 

下の写真はニュージーランドの紡毛機

 

 

 


綿打ち

2023-09-03 15:13:37 | 手紡ぎ糸

綿繰りが終わった綿は、まだ紡ぐことはできません。

(*その気になれば紡ぐことはできます)

写真はカード掛けをした緑綿です。

この状態をローラグ

(日本特有の呼び名もありますがこれは後に紹介します)と呼びます。

カード掛けとは主に羊毛をほぐす技法ですが、繊維の細いメリノなどに使われている

針の細いハンドカードを使うと、綿もほぐすことができます。

最近では綿専用のハンドカードも売られています。

ハンドカードは猫用のブラシを大きくしたものを想像していただければよいです

二本のカードを使い、片方の針の上に綿を置きそれをもう一方のカードですくいます。

最近はYouTubeなどでも紹介されていますから、検索してみて下さい。

写真はカーディング途中の緑綿です。

これをカードから外して、巻いたものがローラグです。

ふんわりとして繊維もそろい紡ぎやすくなりました。

 

日本にはこのカード掛けに代わるものとして、古来から「綿打ち」技法があります。

弓の弦の部分に綿を置き、弦のはじきによって起きる振動で綿をほぐします。

ただこれがなかなか難しくて、慣れると多分良いのでしょうが

とにかく綿ぼこりがすごい 

もう、半端ない  そこいらじゅう綿 綿 綿 

納屋ならともかく、住居の屋内では無理と思い諦めました

 

この先、カーディングで綿打ちを続けるには、時間と手間労力が必要になります。

それは分かっていたことでしたが……

織りに進めないもどかしさでいっぱいでした 

 

そこで友人からのアドバイスで布団屋さんに頼むことになりました。

白綿1kgは引き受けて下さいましたが、色綿は断られました。

布団屋さんにとって1kgの綿打ちでは効率が悪いのでしょう。

それに色綿を綿打ちドラムに入れると

作業後、いくら掃除してもドラムに付いた色綿を

取り除くのは大変で、後のお客さんの綿に混じると信用問題になるからと

この先の依頼は断られました。

御商売ですからもっともなことです。

 

県内は諦め、鳥取、山口、愛媛‥などの布団屋さんに問い合わせても

廃業したお店も多く、もうカード掛けしかないかと諦めかけていた時

友人がネットで見つけた栃木県の布団屋さん

全国から自家製綿の綿打ち依頼があるらしく、色綿も打ってもらえるということでした。

さっそく電話したところ

洋綿、和綿 もちろん茶綿 OK

でも緑綿はあまりに繊維が細くて弱いので断られました。

ただし… すべて4㎏以上でなければ引き受けられないとのことでした。

洋綿4㎏、和綿4㎏、茶綿4㎏  合計13㎏の綿

友人が半分を引き受けてくれることになって

この量の綿を用意できたのは、この時から一年半後

綺麗に綿打ちされ折りたたまれた綿が届きました。

参考資料

発行元 スピンハウスポンタ

2004年5月発行 はじめての糸紡ぎ スピナッツの本棚・2

 

 


棉から綿へ

2023-09-02 12:52:05 | 手紡ぎ糸

時計回りに 白綿(洋)、赤綿、緑綿、茶綿です。

アオイ科に属する棉は、花はアオイに似ていて早朝咲いて夕方にはしおれています。

種は外気温が25℃を過ぎないと発芽しないので、

ゴールデンウィークを過ぎたころにまきます。

(移植を嫌うので、直接畑にまきます)

梅雨開けごろから、少しづつコットンボールが弾けて

猛暑の中で畑は収穫時を迎えます。

写真は 備中茶綿と言われている和綿です。

収穫は晩秋まで続きますが、

冷え込みが強くなってくるにつれてコットンボールの弾けが弱くなってきます。

 

外で少し乾燥させたのち、繊維と種を分ける「綿繰り」の作業を始めます。

余談ですが

ワタという文字は「棉」、「綿」の二つが使われます。

私はまだ大地に根を張って種を有している植物であるときを「棉」

茎からも種も外され繊維だけになったときから「綿」になると考えています。

木へんの「棉」と糸へんの「綿」

これから糸になって布等に生まれ変わる「棉」へ

敬意をこめてのこだわりです。

晩秋のころの棉

 

 

 

 

 


棉のはなし

2023-09-01 11:48:27 | 手紡ぎ糸

写真は和棉(アジア綿)の茶です。

日本に棉が入ってきたのは、今から1230年あまり前西暦799年ごろ

現在の愛知県三河湾に漂着したインドの人からだったと文献には記されています。

乗っていた小舟には棉の種が積み込まれていたようで

この種が近畿、四国、九州の各地へ分配し試植されましたが、ほどなくして耐えたようです。

ただ1479年には高野山の住職へ木綿一反が贈られたという記録があるので、

インドからもたらされた棉の種はどこかで細々と繋がっていたのかも知れませんね。

 

これは一説では棉の原種ではないかと言われている赤棉です。

繊維は和棉よりも短く3ミリほど、

コットンボール(はじけた実)は直径2~3センチ程しかありません。

種を手に入れた当初は、もっと濃い茜色で弾けた実はさらに小さいものでした。

休耕田に数種類の棉を植えていたので、

他の棉と混ざってしまい

最初の原種に近い状態からはほど遠くなってしまいました。

和棉(アジア棉)と比べて繊維が長い棉を一括して洋棉と呼んでします。

ふっくらとしたコットンボールからはたくさんの繊維が採れます。

世界各国で栽培されているアプランド棉(中長綿)がいちばん有名ですが、

超長綿になると繊維の長さが3~3.5センチにもなる棉もあります。

しなやかで柔らかい布が生まれます。

 

洋棉の茶

これは最近、ドライフラワーとして花屋さんで見かけるようになりました。

 

一見、カビ?かと思われる この棉

緑棉と呼ばれています。

繊維は中長綿ですが、他の棉より柔らかくて取り扱いが難しいです。

でも

とてもきれいな緑の糸が生まれます。

 

 

 

参考文献

染織と生活社 続木綿伝承 佐貫 尹(さぬき ただす)著

平凡社別冊太陽 日本の自然布