川島テキスタイルスクールの先生の勧めで、奈良県立民俗博物館で催されていた「奈良さらし」のワークショップに出かけたのは今から7年前でした。
そこで見たのは文献でしか知らなかった「苧うみ(糸績み)」でした。
奈良晒は奈良上布ともよばれ、室町から江戸時代にかけて麻織物の一級品としての評価を得ていたものの
明治からは衰退の一途をたどりました。
昭和54年に奈良県無形文化財に指定され技術の保存の機運が起こったのを機に
昭和58年に月ヶ瀬奈良晒保存会が発足し現在(2016年)27名の会員によって伝統を継承するための活動が続けられていると
説明文に書かれていました。
月ヶ瀬の皆さんからご指導していただきながら初めて績んだ「糸」です。頼りないほどに細い麻糸
これに撚りをかけて、綛掛け、枠掛けを経て整経に至ります。
機織りも少しですが体験させていただきました。
この数か月後、名勝依水園でも「まぼろしの布をもとめて」と題し、奈良晒の紹介があったので出かけてきました。
ここでは、ワークショップは催されず展示が主でした。
ただ、終了間際の「砧打ち」の職人さんのお話しは、この奈良上布の技術継承の危機的なものを感じました。
暮らしに必要とされて発展した「織物」
時代が流れて、織物は一部をのぞいて大半が機械化されて
糸績み、糸染、絣の括り、絞りの括り、機掛け、仕上げ‥などそれぞれの専門職人が消えていきました。
これは仕方のないことかもしれないけれど、これでいいのだろうかと一抹の不安と疑念の残った奈良の旅でした。
参考文献
日本図書センター 日本伝統織物集成