聖女小さきテレジアの略伝
千八百四十三年初秋の涼気、四方山のまさに紅葉せんとする九月の事であった、両眼は聖き熱誠に燃え、如何にも満々たあう希望を懐き、心剛に信仰強き、容貌端正なる、齡二十歳の青年がアランソン市を出発して、スイスの修院に一生涯を天主に委ねるため来たのであった。修院長は青年の目的を知り、彼にラテン語の素養のことを尋ねた、青年はラテン語を修めていなかった、修院長は志望嘉み(よみ)すべきも、ラテン語を知らざれば、ひとまず帰国なさい、しかし決して失望落胆には及ばず、充分勉強の後なれば貴下を迎えるに躊躇せずと、修院長の言辞懇篤(心がこもっていた)を極む、青年はやむなく家路に就き、失望を感じ寂寞を思わずにはいられなかった。しかし彼(か)の青年は天主の摂理が別に存する事を悟った。以後アルバインの修院は彼(か)の青年にとりては、ただ美しき一の思い出であった、此の青年は誰でしょう、ウリ・マルテンその人である、マルテンが空しく修院を去った数年後、またそれと同様な事があった、一人の信仰深き処女は、修道女を志願し、ある日母親に伴われ聖ヴィンセンシオ・ア・パウロ愛徳の童貞会に入り、慈善に一身を委ねたいと熱望した彼(か)の処女は根気強く淑婉賢貞(善良温和)の相貌を備えて、端然温乎(整って穏やか)たる容である、会長は聖霊のお示しを受けたように猶予なく、あなたの此の童貞会に入るのは、主の聖旨でないと申しました。
それで彼女は再び、両親の膝下に帰ることとなり、彼女は思いを改めて結婚することに決心した、そして次のように祈りを絶えず繰り返した。
天主よ、婢(わたくし)はあなたの浄配となるに適わねば、主の聖旨のままに結婚致します、主よ、願わくは、婢を多くの子等の母となし、彼等をことごとく主に捧げ奉るを得させ給え。(つづく)
読んでくださってありがとうございます。yui
千八百四十三年初秋の涼気、四方山のまさに紅葉せんとする九月の事であった、両眼は聖き熱誠に燃え、如何にも満々たあう希望を懐き、心剛に信仰強き、容貌端正なる、齡二十歳の青年がアランソン市を出発して、スイスの修院に一生涯を天主に委ねるため来たのであった。修院長は青年の目的を知り、彼にラテン語の素養のことを尋ねた、青年はラテン語を修めていなかった、修院長は志望嘉み(よみ)すべきも、ラテン語を知らざれば、ひとまず帰国なさい、しかし決して失望落胆には及ばず、充分勉強の後なれば貴下を迎えるに躊躇せずと、修院長の言辞懇篤(心がこもっていた)を極む、青年はやむなく家路に就き、失望を感じ寂寞を思わずにはいられなかった。しかし彼(か)の青年は天主の摂理が別に存する事を悟った。以後アルバインの修院は彼(か)の青年にとりては、ただ美しき一の思い出であった、此の青年は誰でしょう、ウリ・マルテンその人である、マルテンが空しく修院を去った数年後、またそれと同様な事があった、一人の信仰深き処女は、修道女を志願し、ある日母親に伴われ聖ヴィンセンシオ・ア・パウロ愛徳の童貞会に入り、慈善に一身を委ねたいと熱望した彼(か)の処女は根気強く淑婉賢貞(善良温和)の相貌を備えて、端然温乎(整って穏やか)たる容である、会長は聖霊のお示しを受けたように猶予なく、あなたの此の童貞会に入るのは、主の聖旨でないと申しました。
それで彼女は再び、両親の膝下に帰ることとなり、彼女は思いを改めて結婚することに決心した、そして次のように祈りを絶えず繰り返した。
天主よ、婢(わたくし)はあなたの浄配となるに適わねば、主の聖旨のままに結婚致します、主よ、願わくは、婢を多くの子等の母となし、彼等をことごとく主に捧げ奉るを得させ給え。(つづく)
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