白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

11路盤

2018年07月31日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
まずはお知らせです。
Facebookに仕様変更があり、gooブログとの連携ができなくなりました。
以前はブログを投稿すると、自動的にFacebookにもリンクが貼られるようにできていましたが、これからは手動になります。
私のことですから、うっかり忘れることもあるでしょう・・・。

さて、本題に移りましょう。
以前、11路盤が欲しいというお話をしましたが・・・。
読者の方から、作っているところがあるという情報を頂きました。

その中の1つに、株式会社アルプレートというところがあります。
今回、そちらで作っている11路盤をモニター使用させて頂くことになりました。
ご紹介しましょう。



こちらです!
私の写真の腕は25級レベルなので伝わりづらいかと思いますが、ピカピカ光っています。
なんと、アルミ製碁盤なのです。
普段私達は木製の碁盤で対局しますが、他にもプラスチックやガラス、紙、布などで作られたものもあります。
しかし、アルミ製の碁盤を見たのは初めてです。
https://twitter.com/alplate">こちらのブランドで、様々なアルミ製の碁盤や将棋盤を作っているとか。

厚さは約1~2mmという、極薄設計となっています。
カフェなどに置くのにちょうど良さそうですね。
おしゃれで場所も取りません。

モニター使用ということで、課題も考えてみましょうか。
金属なので、木の碁盤と同じ感覚でやってしまうと、かなり大きな音になってしまうということがあります。
初心者の子供(5歳)が試してくれていますが、元気一杯に打たれるとちょっと心配になります(笑)。

この対策としては、まずは石を打ちつけるのではなく、そっと置くことです。
志田達哉か芝野虎丸になりきってください(笑)。

もう1つは、相性の良い石を選ぶことです。
手持ちの蛤碁石で試しましたが、35号よりも32号の方が、また黒石よりも白石の方が打ちやすいです。
なるべく薄い方が良いのではないでしょうか。
材質としても、蛤はベストではない気がします。
平べったくて滑りにくいものが良いでしょう。

何はともあれ、11路盤が手に入って嬉しいです。
これで指導方法の幅が広がります。
また、指導対局では既に試していますが、普通に19路盤を打てる人が打ったらどうなるかを考えてみました。



<1図>
例えばこんな進行を想定できます。
これは、9路よりに13路の方が近い雰囲気ですね。
1局を布石、中盤、終盤に分けることができそうです。

余談ですが、この図はKiinEditorにて作成しました。
KiinEditorは2路盤から19路盤まで対応しているのです。
えっ、2路盤? と思われるかもしれませんが・・・。



<2図>
これも一応、囲碁と言えないことはありません。
相手が間違えれば、2眼作れる可能性もありますからね。
上手くいかなかった場合は、不毛な争いになりますが・・・(笑)。

悲観と楽観

2018年07月17日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は悲観楽観という2つの言葉についてお話ししたいと思います。
局後の感想などでよく目にする言葉ですね。
意味としては、世間一般で使われる時とほとんど同じです。
ただ、ニュアンスに若干の違いがあります。

「形勢を悲観して、無理手を打ってしまった」
「形勢を楽観していて、甘い手を打ってしまった」
このような使われ方をしますが、これらは単に良いと思った、悪いと思ったということではありません。
必ずと言って良いほど、「本来より」というニュアンスが入ってきます。
つまり、これらの例で言えば、
「後から考えれば無理をするほど悪い形勢ではないのに、判断を間違えてしまった」
「後から考えれば楽に勝てるほどの形勢ではないのに、判断を間違えてしまった」
ということなのです。
微妙なニュアンスの違いですが、これはプロの対局を理解する際には結構重要です。
対局者や解説者が悲観、楽観という言葉を使う際、大なり小なり判断ミスがあったことを示しています。

ちなみに、判断ミスがあるかどうかは別として、形勢判断によって着手を変えることは必ずしもおすすめしません。
一番大事なことは、自然な手を打つことです。
ですから、形勢判断よりも状況判断を大切にしたいですね。
それが上達への近道にもなるでしょう。

もっとも、実際にはプロもそこを間違えてしまいがちなのですが・・・。
プロは勝負に勝ちたいという思いがとても強い人種ですから、なかなか難しいところです。

形勢判断と状況判断

2018年07月08日 23時23分52秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
昨日はお休みしました。

さて、最近アマ有段者にこんな質問を受けました。
「正しい形勢判断ができないため、無理をしてしまいます。どうしたら良いですか?」
この答えは「形勢判断ができなくても良いので、しっかりと状況判断をしてください」ということになります。

形勢判断とは、簡単に言えば形勢の有利不利、またその程度を判断することです。
アマチュアの方の苦手分野でもありますね。
形勢判断ができるようになると、勝率を高めることにつながります。
例えば・・・。



<1図>
これは私の碁ですが、ポカで黒×が取られています。
形勢判断の結果、このまま平凡に打っていては万に一つも勝ち目は無いと分かりました。
そこで・・・。





<2図>
実戦は下辺白に襲いかかりました。
厳しく虐めるか、場合によっては取りにいくつもりです。
こんな図体の大きい白を何とかできるとも思えませんでしたが、それでも何かが起こる可能性がある以上、この進行に賭けるしかないと決断しました。
実際、この碁は相手にミスが出て逆転しています。


このように、形勢判断をすることで勝率の期待値を高めることは可能です。
別の言い方をすれば、勝負強くなることができるでしょう。

ただ、それは棋力アップには必須ではありません。
形勢判断によって着手や方針を変えることは、人によってはマイナスの影響が出ることもありますからね。
形勢の悪い時に無理をしたり、形勢の良い時に遠慮することは、目の前の対局にはプラスであっても、悪い手を打つ癖が付いてしまうことがあるのです。

それよりも大事なのは状況判断です。
全局を見て、石の強弱などを確認し、これからすべきことを考えるということです。
その能力を大局観と呼びます。

実は、やるべきことは形勢判断とそれほど変わりません。
ただ、目的が違います。
状況判断をすることの目的は、正しい手を打ったり、適切な作戦を考えることにあります。

正しい手を自然に打てるようになることは、碁の上達において非常に重要です。
ですから、まずは形勢判断の力よりも状況判断の力を磨いて頂きたいですね。

囲碁授業

2018年06月18日 23時52分49秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は大きな地震がありましたね。
被害も出てしまい、大変な方が多いと思います。
私にできることは少ないですが、せめて日々の仕事をしっかりとこなしていこうと思います。


さて、本日は学校囲碁授業で、中央区立月島第三小学校へ行ってきました。
全5回のうちの2回目ですが、初回は私の都合が悪く、安藤和繁五段が代行してくれました。
私は子供たちと初顔合わせです。

さて、今回の感想ですが・・・。
なんといっても、子供たちの勢いが凄まじい!
今まで入門教室をやってきた中で、断トツに一番です(笑)。
3年生ということがポイントかもしれません。

これが低学年の子や未就学児だと、騒いだとしてもまだパワーが小さく、大きな声を出すと自然と注目してくれます。
また、高学年になると、かなり落ち着きが備わっています。
そう考えると、この年代が一番賑やかなのかもしれませんね。
今回他のクラスを担当している、熊丰七段と田尻悠人四段も同じ印象のようでした。

賑やかなのは、熱中してくれている証拠とも言えます。
まずは囲碁の楽しさを知ってくれて良かったです。
後は、その楽しさを持続できるかどうかか課題ですね。
責任重大なので、頑張りたいと思います。

ところで、私たちプロは勝負の世界に生きていますが、子供たちが囲碁を楽しむ際、必ずしもそこにこだわる必要はありません。
今回、こんなことがありました。
うまく打った子がいて、相手の石を全部取ってしまったのです!
・・・と言っても、これは実は入門段階では当たり前に起こることです。
今回もそこかしこでそんな光景が見られました。

面白かったのは、全部取った側の子供が嬉しそうに報告してきたのですが、取られた側の子もはしゃいでいたことです。
これはいわゆる、「おいしい」ということでしょうか(笑)。
子供は結構そういう所がありますね。
小さい子だと泣いてしまうことがありますし、大人も泣かないにしてもショックを受けてしまう方が多いのですが・・・。

こういうことは、入門指導において大きなヒントになります。
石が取られる、負けるといったこと自体はネガティブな出来事ですが、どんなことにも楽しさ、達成感は隠れています。
石を沢山取られようとも、自分だっていくつか石を取っているかもしれませんし、いくらか陣地も作れているかもしれません。
そういったことに目を向けられるように誘導できれば、目先の勝ち負けだけに一喜一憂するのではなく、囲碁というゲーム自体の楽しさを理解してくれるのではないかと思います。

私が本格的に入門指導を始めてからはまだまだ年月が浅く、学ぶことが沢山あります。
しっかり勉強して、良い指導者になりたいですね。

ビジネスに役立つ囲碁入門講座

2018年06月16日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は「ビジネスに役立つ囲碁入門講座」第2回の講師を担当しました。
社会人向けの連続講座ですね。

かつて日本の囲碁人口が現在の倍以上だった頃は、職場の関係者から囲碁を勧められる方は珍しくありませんでした。
しかし、現在は会社の囲碁部は激減し、囲碁の存在感も薄れています。
その結果、囲碁人口も大幅に減少してしまいました。

現役社会人で碁を覚えてみたいという方は、今でも少なからずいらっしゃいます。
ただ、多くの方が忙しく働かなければならない現在、余暇の使い方にシビアになっているような気がします。
そういう方はが何かを覚えたい時、「いかに効率よく学ぶか」を重視されるようです。

個人的にも、現在マンツーマンでの指導を行っているお客様がいらっしゃいます。
相応の費用は必要になりますが、その代わりその方の資質、理解度に合わせた指導ができることがメリットです。
料金よりも内容の充実というわけです。
今回の講座に参加されている方も、やはり限られた時間を有効に使うことを重視されていると感じました。
参加者目線で考えてみますと、魅力としては主に2つあると考えられます。

1つは、少人数であることですね。
最大でも1コースあたり15人の募集でしたし、実際の参加人数はもう少し少なくなります。
参加者同士の対局も数面ですから、講師は全ての対局に目が届き、随時アドバイスをを差し上げることができます。
もう1つは、1回2時間という長さですね。
入門講座は1回1時間ぐらいであることが多いですが、忙しい方にとっては時間がまとまっていた方が都合が良いのです。
何日もスケジュールを空けるのは大変ですし、会場までの移動時間などもありますからね。

新たに囲碁を覚えようとされる方は、子供、学生、現役社会人、リタイア後の方と様々です。
そして、それぞれに時間の使い方が全く違います。
囲碁普及では、そういったことも意識しておく必要がありますね。

現在、子供や学生向けの入門講座は増えていて、少しずつ効果も上がってきていると思います。
ただ、現役社会人向けとなると、まだまだ弱いですね。
平日の夜か土日ぐらいしかまとまった時間が取れないという方にも、無理なく囲碁を覚えて頂くためにはどうすれば良いのか?
囲碁界にとって大きな課題です。