白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

幽玄の間

2016年08月25日 22時24分38秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は棋士の手合日です。
いつものように幽玄の間で中継された対局をご紹介しましょう。
王銘エン九段(黒)と溝上知親九段の対局です。



白が下辺の黒模様を制限しようとしたのに対して、黒△から迫って行きました。
「ゾーンプレス」で知られる王九段らしい着想です。





白が逃げている間に右辺を大きくまとめようという作戦です。
白としてはこんな事になってはたまりません。
黒が圧倒的に強い場所ですから、サバキを目指さなければいけません。
そのためには柔軟な発想が求められます。





実戦はまず白1と入りました。
いわゆる様子見で、軽いジャブという所です。
黒2の後すぐ動こうという訳ではありませんが、後に現れる白Aなどから生きる余地を残しました。





白の侵入に対して、黒1から根拠を奪って取りに行くのは無理です。
白4まで脱出する事が出来ます。
しかし周辺に黒石が増えると、こういう手も成立する可能性があります。
今のうちに確実に手を残しておこうという用心深い発想でした。





そして本線である下辺白のサバキですが、実戦は白1!
黒の勢力圏で両断されてしまいますが、大丈夫でしょうか?





白1と動くと下辺の2子が危険です。
白困った?





もちろんそんな事はなく、実戦白1、3が予定の行動でした。
軽やかな動きですが、黒Aと切られてしまうようだと困ります。
それを防ぐための白△で、サバキのための囮でした。





それでも黒1と切って来れば白6までとなります。
黒は見事に嵌ってしまいました。





黒1には白2を利かしてから白4です。
しっかりした形になり、もう攻められる心配はありません。





実戦は黒1と禍根を断ちましたが、白2、4で左辺白と繋がる事が出来ました。
安心したので今度は白6と踏み込んで行きましたが、これも好手です。
次に白Aと中央を止められてはいけないので・・・





黒1と裂いて出る一手ですが、白12までが一連の構想です。
白△との間は離れていますが、ダメ詰まりの黒は手を出しにくくなっています。
白△を助けつつ上辺白も広げるという目一杯の構想でした。

白は石数で圧倒的に不利な状況でしたが、苦しまずに立ち回る事に成功しています。
サバキのお手本ですね。