湖南省に長沙という街がある。
その街の中の新興都市に
ショッピングモールの初期企画で携わった。
新興都市らしく、
そのエリアは新しい企画で埋め尽くされている。
その象徴が隣の敷地の美術館。故ザハの設計。
派手な建築が好きな中国らしい形態だ。
商業施設の企画の仕事の際は、
日本同様にマーケット調査から始める。
その調査を進めていく上で注目に値すべきものがあった。
私の関わったプロジェクトの敷地は湖畔にあるが、
競合となるのは隣町の中心部の商業。
そのど真ん中にとてつもなく深い穴を掘って、
50万平米にもなる大型商業施設を作っているデベがいた。
キャピタランド。
シンガポール国営の不動産投資会社である。
シンガポールは国を挙げて世界中でビジネスをしている。
シンガポール株式会社と言われる所以である。
その象徴とも言える中国の様々な都市中心での開発への投資。
上海でもそうだ。
地下鉄が3線交差する人が必ず流入する駅の駅前には
キャピタランドが投資・運営する商業施設がある。
そこで吸い上げた家賃がシンガポールという国を支えている。
僕が関わることができるプロジェクトにおいて、
その国の文化を尊重した、個性のある商業を作ろうといつも考えている。
冒頭の長沙プロジェクトにおいてもその地元での食文化を
商業施設内に取り入れようと苦心して計画した。
商業施設において、その施設が立つ立地は建物の特性を決める。
中心地なら自然に人や情報が流れる「媒体」のような施設が長生きするだろうし、
少し外れた立地なら、目的性を持った人が満足できる施設であればよく来てくれるだろう。
前者は資本主義社会において前提として勝ち組だし、
後者は金銭的価値だけにとらわれない評価が存在を強固にするとも思う。
人口が今だ増加し、経済発展速度が速い中国において、
最高の中心立地を抑えることは永続的な成功を保証する。
そういう立地を抑えることができるのは
リークワンユーが健在だったシンガポール株式会社の遺産であると思う。
中国で築いた不動産の価値はまだまだ健在だろうが
中国での商業不動産の定期借地権は40年以下。
次の世代にこれを残せるかどうかは、基本的に国の関係が影響する。
これから次の50年はどこの国が勝ち組になるのだろうか。
今後発展する国との上手な付き合いが重要であることは間違いない。
個人としては、どこでも活躍できる専門スキルと同時に、
気になる国の早めの永住権取得がキーになるように感じている。
I.Takashi