主戦場の建設・農業改革
トリクルダウン理論に限界が見えるとする論調あり。
一点突破を主張して来た私としては、本当か?と疑問を呈したくなる。
格差論は、格差の質を抜きに論じすぎるように思う。
経済的な格差は、やはり経済を成長させる中からしか解決できないのではないか?
特に農業や建設業など、ビジネス感覚が育たなかった業者は見るも無惨になっている。
いくら格差是正のために、農業の振興をといっても絵空事になっている。
しかし、経済成長のために、非正規雇用の増加とその条件の悪さについては、これはこれで対策を講じなければならないだろう。
自由には貧乏になる自由も含まれていることは周知の事実。
自由を尊重しながらセーフティネットを張るのが当然の政策。
ただ、制度として国がデザインするとどうも官の役割が強く規制的になる。
規制的になると巣窟を作る利権集団がでてくる。
やはり成功事例を積み重ねるより他ないのではないか?
それは先週長野で講演してきたこと。
中山間地は今や日本の先進地。
そこでの様々なカネの回る仕組みや合理的と思える仕組みを実践すれば、成熟社会は豊かな社会になる。
以下日経新聞
福田新総裁が誕生、“主戦場”の建設・農業改革―「六次産業」創造急げ。2007/09/24, 日本経済新聞 朝刊, 26ページ, 有, 1285文字
日本経済は「いざなぎ景気」を超す戦後最長の拡大が続くが、国民の何割が実感しているのだろうか。東京を最大のエンジンとする成長戦略の恩恵は今のところ地方では県庁所在市ぐらいまでしか及んでいない。富める者が富めば貧しい者にも自然と波及するという「トリクルダウン理論」は限界がみえる。
◇ ◇
参院選惨敗、安倍晋三首相辞任表明を受けた自民党総裁選では都市と地方の格差問題が焦点のひとつになった。新総裁に選出された福田康夫元官房長官は総裁選のなかで「地方問題への配慮」を強調したが、具体案は最後まであいまいだった。
「希望と安心のくにづくり」と題した福田氏の政権構想をみると「頑張る地方が自立できる税制・交付税を検討」などと安倍政権が打ち出した政策が並ぶ。目に付くのは自らが党の調査会長としてまとめた「二百年住宅」構想程度か。
福田氏は「公共事業のバラマキはしない」と明言したが、政権構想には「公共事業における地方負担のあり方を見直す」とある。バブル崩壊時の景気対策で多用した地方交付税と地方債を組み合わせる手法を想定しているならば、自治体は「箱物バブルで借金苦」の時代に舞い戻りかねない。
地方への企業誘致や若者定住に向けて、学校や病院の整備など「いろんな政策を組み合わせる」という。決意表明という意味では評価できるが、戦略性を欠いた総花的な政策は十分な効果を上げられないことは、これまでの歴史が証明しているだろう。
地方では、農林業の担い手が不足して耕作放棄地が急増する一方で、建設業は反対に過剰雇用を抱えている。雇用のミスマッチを解消し、官需依存型から自律型の経済構造に変えるためには地域資源に的を絞った支援が必要だ。建設業など一般企業の農業参入を促し、生産(一次)から加工(二次)、販売、観光(三次)まで足し上げた農業の「六次産業化」が成功のカギだろう。
農地を借りて農業に参入した法人数は三月時点で二百六。うち四割近くが建設業だ。土木工事のノウハウを生かして農作業代行に乗り出した建設会社も少なくない。
農業参入の障害をなくし、農地あっせんから販路開拓まで政府は自治体と協力して強力に後押ししてほしい。林業も森の所有と利用を分離して団地化を進めれば、生産性は大幅に上がる。
地域を活性化する責任は当然、自治体にもあるが、権限や税財源が極めて不十分だ。全国知事会と市長会が政府の地方分権改革推進委員会を通じて中央省庁に三百件を超す権限移譲や規制緩和を求めたところ、省庁側が前向きな回答をしたのは一割にすぎなかった。
格差問題が深刻になったのは市町村財政の極度な疲弊も一因だ。必要な地方交付税の総額をまずしっかりと見極め、自治体を通じた生活面の安全網を整えなければ住民の不安は解消できないだろう。
◇ ◇
地方経済の最大の弱点である建設・農業分野の構造改革に政策を集中し、それ以外は大胆に自治体に委ねる。そのためには分権改革の加速も不可欠である。安定感が売り物の福田新総裁は格差是正を名目に予算と権益の維持を狙う各省庁をうまくさばけるだろうか。
(編集委員 谷隆徳)
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