1月に5回、今回は再開三回目らしい。
一人一人の事例中心主義。
新聞は、この事例中心があって少々まどろっこしい。
しかしそれだけに説得力がある。
1月7日産経の、「町おこしは自立から」、も私のコンセプトにぴったり。
しばらくは、こうしたコンゼプト集めをしようかとも思っている。
【群れないニッポン 二極化のなかの多様性】(5)町おこしは自立から2006/01/07, , 産経新聞 東京朝刊, 1ページ, , 2131文字
■人材育成へ広がる地元の輪
木の香りがただよう工房で、中藪健一(24)が電動ろくろから出た木屑(くず)を手に取り首をかしげていると、木工職人の時松辰夫(67)が身を乗り出してきた。
「刃がうまく研げていないんだろう、貸してごらん」
静岡県伊豆市にあるNPO法人「伊豆森林夢巧房研究所」では、若者たちが、スギ、ヒノキをはじめ地元の木を材料にして、椀(わん)や皿など木の器づくりに取り組んでいる。この日は月に一度、時松が指導に訪れる日だった。
炒(いた)めものやすしめしを混ぜるのに使うへらを作っていた渦輪倫子(28)は「微妙なカーブを先生にほめられたときは涙が出るほどうれしかった」と笑顔で話す。
「夢巧房」を主宰する山田正興(64)は、保険会社を退職後、田舎暮らしにあこがれて九年前にこの地に移ってきた。
ところが、天城山麓(さんろく)のヒノキ林は予想以上に荒廃していた。山並みの一角は山肌を無残にさらし、鹿やイノシシに備えるさくも目につく。清らかな水が欠かせない特産のわさびの生育にも影響が出ているという。
これは伊豆だけの問題ではない。日本の国土の三分の二を占める森林の四割に当たる人工林の大部分が、第二次大戦後に植林されたものだ。その後外材の輸入が増えたことで国産材の価格が下落、伐採しても赤字になるのが現状だ。このため、税金で整備される国有林は別にして、手入れのされないまま放置される森が全国的に増えている。
間伐などが適正に行われないと、森の中に日光が入らなくなり、地表近くで植物が育ちにくくなる。傾斜地にある場合は土砂崩れを起こしやすくなる。野生動物が頻繁に人里に出没するのも、森の中で十分な餌が得られなくなったからだ。
山田は、県内外の人に呼びかけて「森林ボランティア」を組織し、週末、森に入って下草を刈り、間伐を行う活動を続けてきた。確かに森はきれいになったが、大量の間伐材が残される。これを利用して地域の活性化につなげられないか、模索しているときに、時松の存在を知った。
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一本の木のうち、ふつう柱や家具などに利用されるのは三割程度で、あとは山に捨てられるか、パルプ用のチップになる。これに対して、時松は、あらゆる種類の木を生乾きのまま加工する独特の方法で、幹だけでなく、皮、枝まで使い尽くす。コストがゼロ、あるいは処理費用までかかっていた不要材に、丹精こめた仕事をほどこせば、三千円にも五千円にも値がつく製品が生みだされる。
本拠地の大分県由布市で工房を構えるほか、全国各地の地方自治体から講師として引っ張りだこだ。
初対面の山田に、時松は語った。
「森を守る運動だけで終わっていいのか。私が器づくりを教えているのは、その土地に住む人が自然との関係を取り戻してほしいからだ。まず人づくりから始めてほしい」
山田の決断は早かった。NPOを立ち上げると、大工の作業場を借り受けて、工房と居住スペースを造った。
現在は二十-三十代の若者六人が、近くの畑で野菜を育てたり、近所の温泉に入れてもらったりしながら共同生活を行っている。一人前になるまでは、原則二年間は、月三万円の月謝を払い、一人前と認められたら、出来高で賃金が支払われることになっている。
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山田を支援する地元の輪も広がりを見せている。森林ボランティアの参加者には、地元の主婦らからおにぎりが振る舞われる。昨秋からは、水深一・二メートルのプールのような温泉風呂で独特の湯治法を売り物にしている温泉旅館「船原館」の協力を得て、ボランティアの募集に「森林浴」と「温泉セラピー」の癒やしの効用を打ち出すようになった。
「夢巧房」でも新しいプロジェクトが進んでいる。スギ林の間伐材を使って「伊豆の踊り子」をイメージした弁当箱を作り、地元の食材をつかったちらしずしをつめ「踊り子弁当」として売り出そうというのだ。
「役所の予算や雇用の機会を待っていてもだめ。自分たち一人一人が自活できる力をもつことが、地域の活性化につながるんです」と山田は言い切る。=敬称略
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次回は二月に掲載します。日本人の生き方が多様化するなかで、働くことの意味を考えます。
(「群れないニッポン」取材班)
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