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社会のロジックが変わってきた。まっすぐにした川の蛇行をもとにもどす

朝日新聞に、「川の蛇行、復活 湿地再生、夏にも着手 釧路川、直線化5億円→曲げ戻し10億円」の記事が載っていた。
5億を欠けて、行った工事を、10億をかけて、元に戻すのだという。15億はなんなためのお金だったのか?
それはともあれ、高度経済成長時代によかれと思った事業が実は、近年の価値観から見れば、全く違っていたと言うことが良くある。
これはそうした事例のひとつだろう。つまり、「都市化・工業化」の論理から、「むら・自然」の論理への回帰である。
社会を考えるロジックが違ってきたことに注目すべきだろう。以下引用

川の蛇行、復活 湿地再生、夏にも着手 釧路川、直線化5億円→曲げ戻し10億円
2006/05/01, 朝日新聞 朝刊, 1ページ, 有, 1319文字


 北海道の釧路湿原を流れる釧路川で、洪水を防ぐためにまっすぐにした川を、元の蛇行した状態に「曲げ戻す」作業が今夏にも始まる。自然再生法に基づく河川の曲げ戻しとしては国内初の本格事業だが、計画に参加した地元の非営利組織(NPO)が「公共事業の看板の付け替えに過ぎない」と反対を表明する事態になっている。(座小田英史、井上潜)
 釧路川は屈斜路(くっしゃろ)湖に発し、ラムサール条約登録湿地・釧路湿原を下り太平洋に注ぐ。直線化のため氾濫(はんらん)が減ったうえ、上流からの土砂流入が増えたことで、湿原は乾燥が進み、この半世紀で2割の面積が消失した。このため国土交通省は、標茶(しべちゃ)町茅沼地区で25年前にいったん直線化した約1・6キロを埋め、2・7キロの蛇行した川を復活させる。
 工事では今の河川を埋め戻し、そばに残る旧河川の川幅をブルドーザーで広げて、本流とつなぐ。事業費として約10億円を見込む。洪水を防ぐため80年まで続けた、約5キロの直線化事業(5億円)の倍だ。
 この計画は、地域住民やNPO、流域の自治体、国交省、環境省などが参加する「釧路湿原自然再生協議会」に国交省が提案。昨年10月の議事録には「一同同意」と書かれている。
 しかし、協議会のメンバーで湿原の土地を購入し保護するNPO「トラストサルン釧路」は今年1月、反対を表明。国交省には「議論が不十分」とする意見書を出した。
 杉沢拓男事務局長は「多数決などの議決はなく、いつの間にか了承されていたのが実態。われわれ民間は軽視されている」と話す。
 トラストサルンは、川岸の土盛りを取り除くことなどで自然に蛇行化できるとみて「今の自然を考慮し、最低限の工事にとどめるべきだ」と訴える。これに対し、国交省は「シミュレーションでは、千年たっても蛇行しない」と結論づけた。
 関東平野を流れる荒川・旧河川の蛇行復元も、釧路川と同じく自然再生推進法に基づく全国18カ所の再生事業の一つだ。
 埼玉県の「荒川太郎右衛門地区」の約4キロは70年ほど前に直線化された。周囲に旧河川が池として残るが、湿地の乾燥が進む。
 再生協議会は04年3月、極力工事せずに今の環境を保全することを決めた。その後、国交省の治水計画の見直しもあり、方針を転換し、蛇行を復活させる方向で検討している。
 旧河川跡の三つの池を工事で一つにつなげる。さらに本流から水を引き込み、蛇行した流れを復活させる。直線部分はそのまま残し、蛇行部分と周囲の湿地は遊水地の役目を果たすという。数十億円規模になりそうだ。協議会の会長を務める浅枝隆・埼玉大大学院教授は「都市部でもあり自然と治水の両立が必要。協議会内では蛇行化を歓迎している」と話す。
 同法のモデルとされ、茨城県・霞ケ浦の湖を水質汚濁から再生させた「アサザプロジェクト」は、水草を植える市民運動から始まった。「アサザ基金」の飯島博代表は「失われた自然は簡単には戻らない。縦割り行政では箱庭的な自然になりかねない。官民がもう一度、協議会のあり方を考える時だ」と話す。
 
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