因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

壽 初春大歌舞伎夜の部

2012-01-24 | 舞台

 公式サイトはこちら 新橋演舞場 26日まで
 今月のお目当ては、昨年亡くなった五代目中村富十郎一周忌追善狂言『連獅子』である。
 富十郎亡きあと、遺児の鷹之資が一人前になるまで指導する「後ろ盾」の中村吉右衛門が親獅子、鷹之資が仔獅子を舞う。『連獅子』は、昨年6月片岡仁左衛門と孫の千之助の舞台をみたことが記憶に新しい(1)。親子の情愛が芸を継承する厳しさにからめて語られることが多い演目であろう。時代物世話物問わず、吉右衛門の情愛のこもった芝居をみるのが楽しみな者にとって舞踊をみるのは珍しく、とまどいもあったが、やはり後半の獅子の毛振りには胸が熱くなる。

 幼いうちに親を失くすというのは、こちらが想像するよりもはるかに悲しく、辛いことであろう。まだ12歳の鷹之資の心情は察するに余りある。
 先日放送されたNHK土曜ドラマスペシャル『とんび』(重松清原作 羽原大介脚本)を思い出す。母親を失くした男の子に和尚(神山繁)がかけることばである。夜の海辺で父親(堤真一)が息子を抱いていて、「お父さんが抱いていてくれるからおなかは温かいが背中は寒い。お母さんのいる子どもはお母さんが背中を温めてくれる。しかしお前にはほかのたくさんの人たちがお前の背中を温めてくれる」と。
 鷹之資の背中にも温かで優しい、そして厳しくもあるたくさんの掌が添えられるだろう。
 小さな天王寺屋、負けるな。

 同時解説イヤホンガイドは大変便利だ。今回もとくに『連獅子』では役だった。しかし舞踊のことをもう少し自分で勉強したほうが楽しみが増すだろう。『坂東三津五郎踊りの愉しみ』(長谷部浩編 岩波書店)を読んでみることにしましょう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シアタートラムネクスト・ジ... | トップ | 少し早いが因幡屋の2月は »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

舞台」カテゴリの最新記事