忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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ロメロからの遺言。映画「ランド・オブ・ザ・デッド」

2005年08月26日 | 作品紹介(映画・ドラマ)


▼ロメロからの遺言。映画「ランド・オブ・ザ・デッド」


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ジョージ・A・ロメロ。
1940年生まれの65歳。
彼が「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」を手掛けたのが1968年。
「ゾンビ」の完成はそれからさらに10年後の1978年である。
1985年の「死霊のえじき」でゾンビシリーズは完結となるのだが、
20年が経過した2005年に、何故ロメロは再びゾンビ映画を手掛けようと思ったのだろう。
リメイク作である「ドーン・オブ・ザ・デッド」の出来の悪さに
業を煮やしたのだろうか、などなど、色々と考えつつ観たのだが・・・

観終わってみて、これはロメロの遺言なのではないかと思った。
「ゾンビ」の公開後、実に様々な形で発展していったホラー映画というジャンルや
「ゾンビ」に強く影響を受けたと思われる「バイオハザード」を始めとする数々のコンピューターゲーム。
そこで描かれているゾンビは、皆「ゾンビ」を手本にし、「ゾンビ」を超えるつもりで
制作されたのだろうとは思うが、「ゾンビ」の何を超えようとしていたのかに関して
大事な点を見落としていたような気がする。

乱暴に括ってしまえば、後続の「ゾンビ」関連作品は、ゾンビの残虐性を高めただけの作品ばかりなのだ。
正統な後継者であるはずの「ドーン・オブ・ザ・デッド」までもが同じ轍を踏んだ時点で
ロメロは立ち上がる決意をしたのかも知れない。

「これではイカン」と。

映画「ランド・オブ・ザ・デッド」は、ゾンビという異形の生き物で注意を引いておきながら、
実は人間の醜さを皮肉ってみせるというロメロ節が健在の、メッセージ性の強い内容になっている。
1978年の「ゾンビ」では、食欲に従って行動しているだけの野生動物に近かったゾンビ達が
本作では確実に進化を遂げている。
それは突然変異的な劇的な進化ではなく、赤子がはいはいから立ち上がり、
片言の単語を発するに至る程度のささやかな進化ではあるのだが、
ひとつ学習する度に、ゾンビはどんどん人間に近づいていくのだ。
「武器を持つこと」や「空腹を満たす以外にも命を奪うこと」を知っていくゾンビ達と、
そのゾンビ達の上をいこうとする人間達とのコントラストは「これぞロメロ!」と思わせる見事な構成になっている。

ただ残念なのは、時代設定がいつなのか今ひとつはっきりしないことだ。
「ゾンビ」で人間達が立て籠っていたデパートにあたる超高層ビルや
ミサイル搭載車などを見る限り、現代か近未来あたりかとも思えるのだが、
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の設定は公開年と同じ1968年である。
あれから40年間、このような状況がずっと続いていたとは考えにくい。
完全な続編として制作されているなら、時代設定はいつ、とはっきりさせて欲しかった。

とはいえ、「28日後」や「ドーン・オブ・ザ・デッド」などの
ゾンビ物に不満を抱いていたファンであれば充分楽しめる内容になっている。
正直「ゾンビ」のインパクトは超えていないが、それでもこれだけ強いメッセージを持った作品を
還暦を超えて送り出してきたロメロのパワフルさには脱帽だ。
ホラー映画ファンなら必見の1本であろう。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:ランド・オブ・ザ・デッド
    配給:UIP
   公開日:2005年8月27日
    監督:ジョージ・A・ロメロ
    出演:サイモン・ベイカー、デニス・ホッパー、他
 公式サイト:http://www.lotd-movie.jp/top.html
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
コメント (25)
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