忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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日本人らしい”寸止めファンタジー”「大停電の夜に」

2005年11月26日 | 作品紹介(映画・ドラマ)

■DVD:「大停電の夜に スペシャル・エディション」

本作の監督は「東京タワー」でデビューした源孝志。
嘘っぱちの綺麗事に終始した「東京タワー」に
辟易した記憶がまだ生々しく残っており、
予告編からも「東京タワー」と同じ綺麗事臭がしていたため、
私は最初、この映画を観るつもりはなかったのだが・・・

「大停電の夜に」は、
クリスマスの夜に大停電に見舞われた東京の人々を
ザッピング形式で見せるファンタジーだ。
恋愛映画に詳しい方なら「ラブアクチュアリー」系と言えば
お分かりいただけるであろうか。
日本人らしい湿っぽさをきちんと描きつつ、
この手の雰囲気を出すのはかなり難しいと思うのだが、
秀逸なキャスティングと演出の力で、
日本映画としてはちょっと珍しいほど上手くまとまっている。

私が気に入ったのは、
この映画が全ての面において「寸止め」されているからだ。
豊川悦司と原田知世、
田口トモロヲと淡島千景・宇津井健夫妻、
吉川晃司と寺島しのぶ、
井川遥と阿部力、
本郷奏多と香椎由宇、
全ての人物達が触れそうで触れない距離を保っていているのが
いかにも日本人らしい。
全ての登場人物を「ラブアクチュアリー」のような
ハッピーエンドに導くことは容易いが、
この映画では意図的に消化不良にすることで、
彼等の「その後」や「もし自分なら」を想像させる余地を
観客に与えているのだと思う。
メジャー系配給ではなく、単館の方が向いているかも知れない。

全体を壊すほどではないが、
感情的にどうしても納得のいかない箇所があるのと
暗闇の中でクッキリと浮かび上がる「Blendy」のパッケージなど
(本作は「Blendy」PRESENTSとクレジットされている)
難点もあるにはあるが、このさりげなさはちょっと貴重だ。

上映時間も130分と長めなので、
展開の早い、分かり易い恋愛映画に慣れている方も
たまにはゆったりした気分で楽しんでみて欲しい。
登場人物達が「ロウソクの灯りもたまにはいいな」と思ったように、
気持ちを切り替えればきっとこのテンポを楽しめるはずだ。

「血と骨」「隠し剣・鬼の爪」など、
ここ数年、成長著しい田畑智子は今回も素晴らしい。
キャンドルショップを営む彼女自身が、
大停電の東京を彷徨う人々の希望の光になっている。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:大停電の夜に
    配給:アスミック・エース
   公開日:2005年11月19日
    監督:源孝志
   出演者:豊川悦司、原田知世、吉川晃司、寺島しのぶ 他
 公式サイト:http://www.daiteiden-themovie.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
コメント (8)
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「おこぼれ需要」を当て込んだ作品に「アタリ」無し

2005年11月25日 | 業界四方山話
「ドラゴンクエスト」がヒットしたからこそ、
「桃太郎伝説」や「ファイナルファンタジー」などの
後続作品が生まれたわけで、ジャンルというものは
名作・駄作を含めたフォロワーが多数集まって
徐々に発展していくものだと承知はしているつもりなのだが・・・
それにしても、近頃のフォロワーの志の低さは目に余る。

「脳を鍛える大人のDSトレーニング」のヒット以降、
続々と発表されている右脳鍛錬系ソフトの中で、
どれか1本でも「『脳トレ』を超えるぞ!」という心意気で
制作されたソフトがあるのだろうか。
「脳トレ」は、ゲーム化する際のアイディアが秀逸だっただけであり、
プログラム的にはさほど高度な技術は使われていない(と思う)。
「とっかかり」さえ掴めてしまえば、同系列のソフトを作るのは容易なのだ。
そういう意味では、(今後のリリース予定も含めた)右脳系ソフトの乱発ぶりは
「弟切草」「かまいたちの夜」のヒット後に腐るほどリリースされた
サウンドノベルブームにも通じるものがある。

拝借したアイディアを活かして
元ネタ以上に面白くなっていれば問題ないのだが、
フォロワーのレベルは総じて低い。
グラフィックが粗かったり、操作性が悪かったり、
基本の部分がおざなりになっている物が多過ぎる。
「旬のジャンルに、旬を過ぎないうちに投入する」ことを
最優先しているからとしか思えない。
カプコンの「戦国BASARA」は、決して元ネタは超えていないが、
キャラクター性と演出面の強化で活路を見出した数少ない成功例であろう。
「おこぼれ」にあやかりたいなら、
「戦国BASARA」ぐらいを最低ラインにして欲しい。

ブームに便乗して詰めの甘いソフトをリリースすることは
結局はメーカーの信頼低下に繋がっていることに気付いているのだろうか。
向こう1年間の安定を得るために、
5年後を棒に振るような施策は間違っていると思う。
タイムリーな話題で例えるなら、どこぞの一級建築士と同じだ。

「ポケットモンスター」・・・に似たB級RPG
「真・三國無双」・・・かと見紛うB級アクション
「どうぶつの森」・・・を彷彿させるB級シミュレーション
「脳トレ」・・・の劣化コピーでしかないB級ミニゲーム集



制作者の愛情もプライドを感じられないソフトなど、私は要らない。
コメント (36)
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