■DVD:「大停電の夜に スペシャル・エディション」
本作の監督は「東京タワー」でデビューした源孝志。
嘘っぱちの綺麗事に終始した「東京タワー」に
辟易した記憶がまだ生々しく残っており、
予告編からも「東京タワー」と同じ綺麗事臭がしていたため、
私は最初、この映画を観るつもりはなかったのだが・・・
「大停電の夜に」は、
クリスマスの夜に大停電に見舞われた東京の人々を
ザッピング形式で見せるファンタジーだ。
恋愛映画に詳しい方なら「ラブアクチュアリー」系と言えば
お分かりいただけるであろうか。
日本人らしい湿っぽさをきちんと描きつつ、
この手の雰囲気を出すのはかなり難しいと思うのだが、
秀逸なキャスティングと演出の力で、
日本映画としてはちょっと珍しいほど上手くまとまっている。
私が気に入ったのは、
この映画が全ての面において「寸止め」されているからだ。
豊川悦司と原田知世、
田口トモロヲと淡島千景・宇津井健夫妻、
吉川晃司と寺島しのぶ、
井川遥と阿部力、
本郷奏多と香椎由宇、
全ての人物達が触れそうで触れない距離を保っていているのが
いかにも日本人らしい。
全ての登場人物を「ラブアクチュアリー」のような
ハッピーエンドに導くことは容易いが、
この映画では意図的に消化不良にすることで、
彼等の「その後」や「もし自分なら」を想像させる余地を
観客に与えているのだと思う。
メジャー系配給ではなく、単館の方が向いているかも知れない。
全体を壊すほどではないが、
感情的にどうしても納得のいかない箇所があるのと
暗闇の中でクッキリと浮かび上がる「Blendy」のパッケージなど
(本作は「Blendy」PRESENTSとクレジットされている)
難点もあるにはあるが、このさりげなさはちょっと貴重だ。
上映時間も130分と長めなので、
展開の早い、分かり易い恋愛映画に慣れている方も
たまにはゆったりした気分で楽しんでみて欲しい。
登場人物達が「ロウソクの灯りもたまにはいいな」と思ったように、
気持ちを切り替えればきっとこのテンポを楽しめるはずだ。
「血と骨」「隠し剣・鬼の爪」など、
ここ数年、成長著しい田畑智子は今回も素晴らしい。
キャンドルショップを営む彼女自身が、
大停電の東京を彷徨う人々の希望の光になっている。
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タイトル:大停電の夜に
配給:アスミック・エース
公開日:2005年11月19日
監督:源孝志
出演者:豊川悦司、原田知世、吉川晃司、寺島しのぶ 他
公式サイト:http://www.daiteiden-themovie.com/
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