ヒルネボウ

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モロシになりそう。 ~おとき

2025-03-21 19:36:45 | エッセイ

   モロシになりそう。

   ~おとき

数日前から、誕生会の歌が頭の中で鳴っている。「ハッピー・バ-ス・デー、ディア・おとき」というのだ。

「おとき」って、誰? 

今日、映像が浮かんだ。テレビ・ドラマの『七人の孫』の一場面らしい。幼い頃に見たので、間違っているかもしれない。「おとき」というのは、七人の孫がいる老人の家の女中だ。樹木希林が演じていたと思う。当時の芸名は違った。思い出せない。

「おときは、近頃、機嫌が悪い」ということで、一家のみんなが心配している。不機嫌な理由を彼女に尋ねても、答えない。誰かが見当をつけて調べたら、数日後が彼女の誕生日だとわかった。一家の誰もがそのことに気づかないので、彼女は拗ねているらしい。自分から言うのは照れ臭い。

人々は彼女の誕生会を開くことにする。ただし、本人には内緒だ。サプライズ! 本当のことを言わない彼女に対する仕返しの意図もあったのだろう。

当日、本人には知らせないまま、食卓に御馳走が並ぶ。並べるのは、本人だ。さあ、いただきましょう。いつもとは違って、彼女は同席させられる。訝しみながら着席すると、みんなが「ハッピー・バ-ス・デー、ディア・おとき」と歌うのだった。

だが、どうして、こんな歌を思い出したのだろう。

祖父を演じていたのは、森繁久弥だ。物語の主人公は孫たちだ。若い彼らの悩みなどを、祖父が聞いて、知恵を貸す。

あるとき、彼は少女に向かって語った。

「私の若い頃は、女は色気を見せてはいけなかったのだよ。オッパイなんかも晒を巻いて胸を平べったくしたもんさ」

この説教を聞かされて素直に頷いていたのは、いしだあゆみだった。二重瞼にする前だ。

彼女が死んだから思い出したのか。

〈いしだあゆみの誕生会ではない〉→〈いしだあゆみの葬式だ〉ということかな。

これを書き終えて3時間後、偶然、TVに樹木希林の昔の姿が映った。当時の芸名も記されていた。

(終)

 

 


漫画の思い出 花輪和一(33) 『赤ヒ夜』(青林堂)

2025-03-20 22:31:31 | 評論

   漫画の思い出

   花輪和一(33)

   『赤ヒ夜』(青林堂)

『牛耳る女』

疲れる。

これは、つまらん。ただのエログロ。掲載誌のせいか。

 

『玉の価はかりなき事』

これもつまらん。掲載誌は前と同じ。

「アホ みたいね 恋とか愛なんて…」

(『玉の価はかりなき事』)

だから何? 

 

『心の影』

「天狗の子」と呼ばれるETみたいな「あの子」に、ある少女が拘泥する。好奇心、慈愛、嫌悪、恐怖など、さまざまの感情が入り混じっている。

縄屋の縄助さんが あの子を見て笑っていた。縄助さんが立ちあがってあの子に何か話しかけているようだった。私は庭虫を釣っていた。

「あっ!釣れなかった……。あっ!また釣れなかった……。あっ!また釣れなかった…… あっ!ん?まただ…… あっ また釣れなかった!あっ また釣れなかった…… どうして? あれ? まただ…… ようし! あれ! またつれなかった…… あっ! まただよ…」

しつこい。「庭虫」が何か、不明。後で出て来る蚯蚓みたいな化け物か。

「あの子も一人ぼっちなんだわ あんなに涙が……」

同情したせいで「あの子」は彼女にまとわりつき、少女はうるさがって「あの子」を避けるようになる。

「でも どうして こんなに おっかないのかな」

母親を後追いする幼児の依存と、後追いされる母親の心労とが、入り乱れている。母親に対する作者の遺恨と愛着が分離できなくなった。しかし、そのせいで、偽の融和が保たれることになる。停戦か。

「あんなやつ絶対に 絶対に入ってこられない所へ逃げ込んでやるわよ!」

逃げ込もうとした穴は子宮の象徴だ。穴には「あの子」がいる。

作者は、母親への執着を諦めることと、母親から受けた虐待の記憶を薄めることとが、分離できない。そして、一休みしているところだ。

「入らなくてよかったわよ」

もし、穴に入ってしまえば、どうなっていたか。彼女も「天狗の子」になるのか。あるいは、彼女と「あの子」が合体して「庭虫」になるのか。どちらでもなくて、漫画家になるのかもしれない。

(33終)

 

 


野遊び ~自分の青い本

2025-03-18 22:56:14 | 

   野遊び

   ~自分の青い本

私は、いつからか、何かを探していた。

その何かは、本の中に隠れている。

だが、その本は見つからなかった。

あるいは、見つかったのに読まなかった。

そして、どこかに置き忘れた。

その本、いや、本のような箱が、野にあるとしたら……

そうだとしたら、誰が置いたのか? 

誰かが置き忘れたのか? 

置き忘れたのではなくて、捨てたのかもしれない。

なぜだろう? 

その箱のような本の中身が空っぽだったから? 

そうだといいな。

(終)


回文~閑なんだ

2025-03-18 00:25:01 | ジョーク

   回文

   ~閑なんだ

適任も 杞憂舞う雪 門に来て

(てきにんも きゆうまうゆき もんにきて)

電撃後 掌火の手 ご機嫌で

(でんげきご てのひらひのて ごきげんで)

閑なんだ 異界徘徊 旦那麻痺

(ひまなんだ いかいはいかい だんなまひ)

沈船さ 筏で打開 三センチ

(ちんせんさ いかだでだかい さんせんち)

(終)

 


『冬のソナタ』を読む 「別れの練習」(下p25~49) 4 指輪

2025-03-16 23:12:44 | 評論

『冬のソナタ』を読む

「別れの練習」(下p25~49)

4 指輪

ユジンはサンヒョクと別れたくなる。

ユジンは指輪を外した。そして、それをケースにしまい引き出しの奥に入れた。絶対に許さない、と言うサンヒョクの顔を思い浮かべながら、悲しそうに呟いた。

「サンヒョク、絶対にわたしを許しちゃだめよ……」

(下p36)

 指輪は、捨てたのではない。隠しただけだ。

この後、ユジンはミニョンからネックレスを受け取る。

ユジンは、ドアの隣にある鏡に自分の姿を映した。首には北極星(ポラリス)のネックレスが輝いていた。しばらくネックレスを見つめたユジンは、それを見えないように服の胸もとに入れて、荷造りを続けた。

(下p47)

ネックレスは隠した。捨てたのではない。しかも、「ケース」に入れたのではない。

ユジンはミニョンと、しばらく無言のまま雪の上を歩いた。ミニョンと何度か歩いた道でもあった。

「……わたし、ミニョンさんにごめんなさいって、言うのはやめます」

「……」

ミニョンは無表情のままユジンを見つめていた。

「ミニョンさんはわたしから一番大切なものを持って行ったから……わたしの心のすべてを持っていったから……わたし、謝ったりしません」

(下p48~49)

ミニョンはユジンを抱く。

サンヒョクとの婚約指輪がふたたびはめられたユジンの手が、ミニョンの背中に回される。震える手でミニョンを抱いていたユジン、振り切って駆け去っていく。

(『冬のソナタ 完全版』第10話)

虚飾の指輪だ。

(終)