ヒルネボウ

笑ってもいいかなあ? 笑うしかないとも。
本ブログは、一部の人にとって、愉快な表現が含まれています。

(書評) 『艶色お江戸謎づくし』(河出文庫) 著者 林美一

2025-02-07 21:25:15 | ジョーク

  (書評)

  『艶色お江戸謎づくし』(河出文庫)

   著者 林美一

喜怒哀楽。

近頃、喜ぶことがない。一怒一老だから、怒るのは避けたい。別に哀しみたくはない。楽しみたい。無理してでも笑うしかない。

性の悪い女とかけて 病犬ととく 心は、誰にでもくいつく

十六七の娘とかけて 大店のあきなひととく 心は、もうけがあろう

あいぼれとかけて くそつぼととく 心は、こいなかだ

桜餅とかけて 馬屋がからだととく 心は、うまいね

惚れた女の文とかけて 足のあかぎれととく 心は、ふみ見るたびにあいたい

豆腐屋の物惜しみとかけて もみじ川ととく 心は、からくれない

好きよふた仲とかけて 上町の井戸ととく こころは、ほれてふかうなる

注釈は省略とかけて 未来の連れ合いととく 心は、後でよめ。

(終)


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SONG ぱっとね

2025-02-06 22:56:34 | 

   SONG

   ぱっとね

おれのことが好きなら

好きとそう言えよ

いつでも抱いてやるぜ

ぱっとね

ぱっ ぱっ ぱっ ぱっ

ああ ああ ぱっとね

ぱっ ぱっ ぱっ ぱっ

 

おれのことが嫌なら

嫌とそう言えよ

いつでも消えてやるぜ

ぱっとね

ぱっ ぱっ ぱっ ぱっ

ああ ああ ぱっとね

ぱっ ぱっ ぱっ ぱっ

 

おれの歌が邪魔なら

邪魔とそう言えよ

いつでもやめてやるぜ

ぱっ

(終)

 


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野遊び ~逸脱

2025-02-05 23:52:10 | 

   野遊び

   ~逸脱

そこは私の遊び場ではない。

悴む指が自分の一部とは思えないように、

そこが私の遊び場とは思えない。

でも、冬は招いている。

(終)

 


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『冬のソナタ』を読む 「別れの練習」(下p25~49)

2025-02-03 23:33:48 | 評論

   『冬のソナタ』を読む

    「別れの練習」(下p25~49)

1 プチトマト

ユジンはチュンサンを思い出す。思い出すことを自分に許す。

ジュンサンを思い出したユジンの眼がおぼろげになった。

ユジンが、ジュンサンの名前を出さずにこの北極星(ポラリス)の話をすると、悲しい眼で見つめていたミニョンが訊ねた。

「ユジンさん、道に迷ったような気がしてるんですか?」

ミニョンがユジンの顔を振りむかせた。ユジンはなんとか笑みを浮かべて見せながら、平然を装った。自分が背負った傷より、大切な人たちに自分が与えた傷の方がもっと痛いに違いないと思った。その上、二度と彼らに許されないと思うと、堪えきれなかった。

ミニョンは苦しい涙をこぼしたユジンの顔を両手で覆った。

「ほかの星は場所を変えても、北極星(ポラリス)はいつもその場所にいるって言いましたよね? もし、ほかの人たちがユジンさんを許さなくても……わかってくれなくて去って行っても……僕がいつもその場所にいてあげたら……道に迷わない自信ありますか?」

ユジンを見つめるミニョンの眼にもいつの間にか涙が浮んでいた。

「……僕のこと、信じてくれますか?」

ユジンはゆっくり頷(うなず)いた。

(p30~31)

一夜が明ける。

朝、ユジンが目覚めると、一階で寝ていたはずのミニョンはいなかった。リビングに出たユジンがカーテンを開けた。明るい冬の陽射しが射(さ)しこみ、ユジンの心まで明るくした。

(p31)

さあ、これから二人はどうなる? ユジンとチュンサン、じゃなくて、ミニョン。

ソファに腰掛けようとしたユジンの顔が、もっと明るくなった。食卓の上に置いてあるみずみずしい果物が陽射しに照らされていたのだ。ユジンは、その中からプチトマトをひとつ口に入れた。

(p31~32)

「果物」はミニョンが置いていった。ユジンは彼を待たず、一人で「ひとつ」食べる。幼子のようだ。「プチトマト」は、彼女の自立とそれに反する幼さの象徴。

(終)


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『七つの子』を読む

2025-02-02 23:35:04 | 評論

       『七つの子』を読む

〈詩を理解する必要はない〉と主張する人がいる。さらには、〈理解は鑑賞の妨げになる〉とまで嘯く人がいる。とんでもない。詩は、理解力が足りない人のための逃げ場ではないよ。

   七つの子

       野口雨情

烏(からす) なせ啼(な)くの

烏は山に

可愛(かわい)七つの

子があるからよ

「七つ」を〈七羽〉と誤解する人がいる。正しくは〈七歳〉だ。勿論、七歳の雛なんて、おかしい。

「可愛」は烏の鳴き声から。カアカア。

この詩は問答になっている。

  (夕暮れ。何事かを訴えるような烏の鳴き声がする)

子 (不安げに)烏、なぜ啼くの?

母 烏は山に可愛い七つの子があるからよ。

子 ? 

母 「可愛い、可愛い」と烏は啼くの。

(そう言いながら、母は子を抱き寄せる)

子 (擽ったそうに笑う)

母 山の古巣にいって見て御覧。(母が子の目を覗き込む)丸い目をしたいい子だよ。

七歳の子は甘やかされたくない。でも、甘えたい。この葛藤を母が作り話で和らがせる。「古巣」とは、母子分離以前の幼児期の記憶の代りだ。

こうした情景を想像できない人は、詩とは縁がない。

志村けんが歌っていた。

「烏、なぜ泣くの。烏の勝手でしょ」

七歳を過ぎた子が泣いていると、親がうるさがって「なぜ泣くの?」と詰問する。子は「勝手でしょ」と不機嫌そうに答える。

子供たちが狂ったように唱和していた。これは自立のための闘いの歌だったのだ。もう「古巣」には戻れない。いや、戻るものか。

ところが、エゴイズムの歌と勘違いした未熟な大人が、これを歌うのを禁じた。昭和は嫌な時代だった。

(終)

 

 

 


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